ペットに遺産を相続させることはできる?ペットのための信託ってなに?

1.ペットに遺産を相続させることはできない

ペットに遺産を相続させたいと考える方が増えてきている、という記事を見たことがあります。

海外からは実際にペットに遺産を相続させたというような話も入ってきています。

◆大事なペットに遺産を相続させたい

◆自分が死んだあとの世話を信頼できる人にやってもらいたい

と思うこともあるのではないでしょうか。

しかし、日本の民法上、ペットは「物」として扱われます。

そして相続は「人」に対するものなので、残念ながら法律上、物として扱われるペットに直接財産を相続させる方法はありません。

したがって、ペットに財産を相続させる内容の遺言書を残していても(その部分は)無効です。

2.間接的に相続させる方法

直接ペットに相続さることはできませんが、次のように間接的にでも相続させる方法があります。

(1)負担付遺贈

負担付遺贈により、間接的にでも相続させることができます。

負担付遺贈とは、ある人に遺産をゆずる代わりに、同時に負担も負ってもらうというものです。

たとえば、

「遺言者は、Aに〇〇を遺贈するが、ペットの面倒をみなければならない」

と遺言書に書いておくのです。

この文言により、ペットの面倒をみることが受遺者の負担となります。

文字どおり負担付き遺贈です(あわせて飼育の方法も指定しておくとよいでしょう)。

このような遺言を残しておけば、自分の遺産がペットのためにも使われることにもなるので、直接ではなくとも間接的に、人を介してですがペットに遺産を相続させたのと同じ効果が期待できます。

受遺者は身近な信頼できる人を選ぶべきですが、本当に、受遺者がちゃんと面倒を見てくれるかどうかは不安だと思いますので、遺言執行者を指定しておき、きちんと飼育されているか監督してもらうのも一案です。

なお、遺贈は放棄できますので、世話をしたくない、負担を負いたくない、として遺贈が放棄される可能性もあるので、注意を要します。

(2)負担付死因贈与

(1)に似たようなものとして負担付死因贈与があります。

死因贈与とは死亡によって効力が生じる贈与契約をいいます(遺贈は契約ではありません)。

この方法は、飼い主の生前に、ある人(または団体)と、「財産を贈与する代わりにペットの世話を見なければならない」とする契約を結んでおくのです。

死亡により効力が発生することは負担付遺贈と同じですが、契約であるため当事者の合意を必要とし、飼い主の一方的な判断ではされません。

負担付遺贈と異なり、現飼い主と将来の飼い主との契約行為のため、お互いが納得の上で行われることが普通なので、死因贈与の効力発生後に飼育や財産の譲受を拒否されるようなことは考えられません。

(3)ペットのための信託

負担付遺贈(負担付死因贈与)は自分の死亡により効力が発生しますが、やはり死後のこと、本当に大丈夫なのか不安が残ります。

そこで、信託を利用する方法もあります。

信託とは、文字どおり「信頼できる人を信じて、自分の財産を託す」ことです。

これを一般に家族信託(民事信託)といいます。

 

詳しくは<将来の認知症に備えるには?家族信託の解説>

 

信託というと信託銀行が関与するようなイメージがありますが、それは「商事信託」といわれるもので、営利を目的としているため報酬が発生しますが、この家族信託は家族による信託であり、当然に報酬が発生するわけではありません(契約で報酬を決めることができます)。

その家族信託をペットにも活用する方法です。

これは、飼い主を委託者、家族など信頼できる人や団体を受託者とし、飼い主の生存中は飼い主自らを受益者、その受益者死亡後は信頼して飼育、世話をしてくれる人を第2受益者として、財産を受託者に管理してもらい、その信託財産から定期的に受益者に飼育代などの諸費用を支払っていく仕組みです。

なお、

・委託者とは信託を頼む人

・受託者とは信託を頼まれる人

・受益者とは信託により利益を受ける人

をいいます。

この仕組み、スキームを使えば飼い主の元気なうちから、信託した財産(金銭)はペットのために使われます。

飼い主である自分が死亡しても、信託契約で第2受益者を定めておき、その者が飼育、世話をすることになるのでペットが路頭に迷うことにはなりません。

さらに、自分が高齢だからといって飼うことをちゅうちょしている場合でも、次の飼い主(第2受益者)を決めているので安心して飼うことができます。

信託を活用すれば「もしも」の場合に備えることができるのです。

受託者は善管注意義務、忠実義務など様々な義務を負います。

また、弁護士や司法書士などを信託監督人とすることで信託契約をちゃんと守っているか、適切に信託財産がペットのために使われているか、を監督することもできます(専門職は受託者にはなれませんが、信託監督人にはなれます)。

専門職を信託監督人に選任しておけば「財産だけ取られて飼育、世話がされない」という事態を防止できます。

負担付遺贈(贈与)と違い生前に利活用することができるので、自分が認知症などになり、施設に入所するようなことになった場合に備え、元気なうちに信託契約をしておくのもよいかもしれません。

3.ペット自体を受益者とすることは?

ペットの利益を図ることを目的とするのであれば、ペットそのものを受益者とすればよいのではないか。

このような疑問が出てきますが、ペットは自然人でも法人でもないため、ペット自身を受益者とすることはできません。

また、仮に、受益者を定めない信託となると、いわゆる「目的信託」とされ、信託法上、信託できる期間が20年までとなってしまいます。

さらに、目的信託の受託者は、一定の法人などに限定されてしまうので、「人」を受益者とするスキームを取る必要があります。

4.まとめ

以上の3つの方法によれば、間接的にですがペットに財産を遺すことができます。

自分の死後のことだからこそ、ペットの行く先が気になるでしょう。

それぞれパターンごとに検討し、最も合った方法で家族であるペットのために対策を講じておくことです(いずれも認知症などで判断能力を失うとできません)。

その中でもペットのための信託は、信託契約において柔軟な設計をすることができます。

ペットの幸せを願うのであれば、早いうちに検討しておくことをオススメします。

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