やっぱりやめたい!相続放棄の撤回、取消しはできる?

1.相続放棄受理後の撤回は原則、認められない

相続放棄の受理後、予想外のプラスの財産が判明したために、「一度した相続放棄を撤回したいのだけれど」「やっぱり相続放棄をするのはやめたいけどできる?」とのご質問をたまにいただくことがありますが、結論から言ってすでに受理された相続放棄を撤回、取消すことは原則、認められません。

民法の条文上にも規定されています。

なぜなら、放棄によって他の相続人の相続分が変わりますし、次順位者に相続権が移っている場合は、次順位者において遺産分割協議や相続財産の換価換金など処分、相続税の申告など、諸々の手続きを終えていることも想定されるからです。

そのような場合に放棄の撤回を無条件に認めてしまうと、放棄者の相続権が復活し、他の相続人の相続分がまた変わったり、次順位者は相続人でなかったことになります。

そのような事態は無用の混乱を招き、法律関係を複雑にします。

周りに及ぼす影響が非常に大きく、債権者などの利益を害してしまう可能性だってあります。

したがって、相続放棄の撤回は原則、認められません。

2.例外的に取消しが認められる場合

ただ、絶対に撤回や取消しができないのか、というとそうではありません。

相続放棄が次のようにされた場合は例外的に取消しが認められます。

未成年者、成年被後見人が自ら相続放棄して受理された

未成年者や成年被後見人が相続放棄をする場合、法定代理人である親権者、成年後見人が代理して申立てをします。

それなのに、本人自らが申し立てた、といった場合です。

ただし、申立に際いて提出した戸籍から申立人が未成年者かどうかは分かるため(家庭裁判所の書類審査で引っかかる)、未成年者が親権者の同意を得ずに相続放棄がされるケースは普通は想定できません。

一方で、成年被後見人の場合。

普通は、成年後見人が代理して申立てます。が、成年被後見人なのに自ら相続放棄をして、審判がおりる可能性はゼロではありません。

添付書面からは、申述人は成年被後見人である、ということがうかがい知ることができないからです。

詐欺・強迫によって相続放棄がされ受理された

たとえば、被相続人には実際には借金はないのに、多額の借金があると言われ、だまされて放棄をした場合(詐欺)や、強要され無理やり放棄させられた場合(強迫)です。

自らの自由意思に基づいて相続放棄をしていません。

これらの事実があって相続放棄してしまったことを家庭裁判所に証明し、審理を経たうえで取消しが認められます。

しかし、取消しが認められる場合は非常に限定的で、家庭裁判所も慎重に判断します。

3.相続放棄の受理「前」の撤回は可能

以上のとおり、相続放棄受理後の撤回は認められないのが原則ですが、相続放棄の申述が受理されるまでは申立てを取下げるという形で放棄を撤回し、やめることはできます。

申述が受理される前であれば、

◆あらたな財産が判明した

◆やっぱりどうしても相続したい財産がある

◆詳細に調査したところプラスの財産の方が多かった、判明した

◆他の相続人や次順位の相続人に迷惑をかけたくない

などの理由で取下げを認めても、他の相続人や債権者など第三者に影響はなく、利益を害するようなことはないからです。

通常であれば、申立てから受理されるまでは遅くとも1か月、早ければ1~2週間ほどで受理されますので、申述を取下げる場合はまず家庭裁判所にその旨を電話で伝えて、すみやかに「取下書」を提出することです。

4.まとめ

以上のとおり、相続放棄の撤回、取消しは原則できません。

「あらたに財産が見つかったからやっぱり無しにしたい」

「相続放棄したけど、実は借金は無かったからやっぱりやめたい」

といった理由での撤回は認められません。

申立て後、やっぱり撤回したい、といったことにならないよう、3か月内に相続人調査や財産調査を確実に終えること、そのためには素早く行動することです。

3か月というと短いと感じるため焦る気持ちもあるでしょうが、家庭裁判所への申立てによって申述期間は伸長できますので、間に合いそうになければ「熟慮期間伸長の申立て」も検討すると良いでしょう。

詳しくは<相続放棄の熟慮期間を3か月以上に延長する方法>

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