受託者は信託報酬をとれる?その金額は?

1.受託者の報酬は?

受託者は、委託者から託された財産を管理、運用し、場合によっては処分も行うことになります。

その事務は多岐にわたってきます。

また、信託法上、様々な義務を負っています。

当然、受託者の信託報酬は発生するのではないか、というところですが受託者は原則、無報酬です。

ただ、そうはいっても多岐にわたる事務作業に見合った報酬をあげたい(もらいたい)、といった声も当然あります。

2.信託行為で報酬を定めておく

受託者は原則、無報酬のところ、信託報酬をあげたい(もらいたい)となった。

その場合は信託行為(信託契約書など)で信託報酬の旨を条項として定めておけば、その内容にしたがって受託者は報酬を受け取ることができます。

信託契約書に報酬の規定がなければ、報酬を受け取ることはできません(受託者は原則、無報酬だからです)。

3.報酬を規定するケース

以下のケースであれば信託報酬を規定してもよいかもしれません。

・信託事務が多岐にわたり、かなりの労力を使う

信託財産の規模が大きかったり、信託財産がアパートなどの収益物件で、管理を受託者自ら行うことになる場合や、地理的状況の面から事務が大変であるなどで、その労に報いる形で報酬を設定することがあります。

・第三者が受託者となっている

受託者には身近な家族が就任することが一般的ですが、当然、第三者がなることも可能です(ただし、信託業法との関係で、特定の第三者が就任するには困難な場合もあり)。

その場合は、信託報酬が発生することになります。

・受託者の家族の理解を得るため

たとえば、受託者の妻が、夫が仕事の傍らで信託事務をすることにあまりこころよく思っていないこともあります。

そのようなときに、わずかでも信託報酬がある、ということで妻が納得感を得ることがあります。

・受託者の地位にいることの責任を感じさせたい

受託者が信託事務の対価として金銭を得ることにより、受託者としての自覚が芽生えることが期待できることもあります。

・贈与と同様の効果を与えたい

受託者が信託財産から贈与を受けることはできませんが、報酬を与えることにより贈与と同様の効果を導くことが可能となります。

 

以上はあくまで一例なので、個々の事情を勘案して報酬条項を入れるかどうか、判断するとよいでしょう。

4.報酬額はいくらにするか?

報酬額は特に法律で決まっているわけではないため、当事者の合意によることになります。

お互いが納得する金額を信託契約書などに盛り込みます。

では、相場のようなものはあるのか、というところですが成年後見人の報酬を参考として設定することがあります。

他人の財産を管理する、という点では受託者と成年後見人の職務内容が類似しているからです(そうはいっても、財産管理の内容や目的が異なりますし、成年後見人は身上監護も職務となるので単純に共通とはいえませんが)。

成年後見人の報酬は、被後見人の財産規模や後見事務の内容を基準として家庭裁判所の審判により決まりますが、月額3万前後になることが多いです。

したがって、月額3万円といった「定額報酬」で条項に記載する場合や、収益物件を信託しているのであれば、信託収益(賃料など)の〇%を月額分の報酬として受け取る「定率報酬」とすることもあります。

ただし、あまりに高額にすると場合によっては受託者のための信託と認定され、信託自体が無効となってしまうリスクがありますし、親族から何かしらのクレームがくるかもしれませんので、その辺りは気を付ける必要があります。

なお、信託報酬は雑所得となり、20万円以上の所得となれば確定申告をする必要があります。

5.まとめ

信託契約書などに規定すれば、受託者に信託報酬を与えることができます。

規定がなければ無報酬となるので、報酬を受け取るといったことであれば、規定しておくことが必要です。

その額は当事者の合意によりますが、信託事務の内容や難易度、どれだけ時間や労力を使うか、など総合的に考慮して設定することになるでしょう。

ひとつの目安として、成年後見人の報酬を参考にしてもよいかもしれません。

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