家族信託Q&A(よくある質問)

メディアの影響か、近年、家族信託のご質問を受けることが多くなってきました。

ただ、信託法が改正されて使い勝手がよくなり、広く一般化してきたのはここ数年のことです。

まだまだこれからの制度であるため、分からない点や疑問点もあることでしょう。

そこで、以下では家族信託で比較的よく受けるご質問をまとめてみました。

Q1.お金持ちしか利用できない?

A1.当然、お金持ち、資産家以外でもご利用できます。

家族信託を利用すれば、将来の認知症などに備えて財産を託したり、遺産の承継先を何世代にもわたって柔軟に設計することができます。

そして、信託する財産は何も不動産に限られるわけではなく、現金・預貯金や動産なども含まれます。

また、いくら以上の金額でなければ利用できないといったことはないため、不動産や預貯金を多く保有している資産家や富裕層に利用が限られるものでもありません

ただし、金融機関によっては、「金〇〇万円以上預け入れなければ信託口口座の開設ができない」といった条件が設定されていることがあります(交渉次第で例外を認めてくれることもあります)。

Q2.節税につながる?

A2.家族信託を利用しても何らかの節税に直接つながることはありません。

信託財産は受託者に移転しますが、税務上は受益者をベースとして所得税などが課税されます。

信託の設計内容によっては、贈与税がかかる場合もあります。

Q3.信託契約書は公正証書で作る必要がある?

A3.信託契約は、委託者と受託者の契約によりますが、法律上、必ずしも公正証書での作成が要求されているものではありません。

しかし、契約内容を法律のプロである公証人にチェックしてもらうことは非常に有用ですし、厳格な本人確認、意思確認のもと作成されるため、将来のトラブル予防にもなります。

当事者、特に委託者が高齢の場合や信託財産が高額、多岐にわたる場合は、公正証書化しておくべきでしょう。

公正証書にしておくことで、お互いが契約内容を遵守すべき意識が芽生えることにもつながります。

万が一、契約書を紛失しても原本は公証役場に保管されているため、謄本を発行してもらえます(再発行に対応可)。

また、金融機関に信託口口座を開設するにあたっては、契約書は公正証書で作成されていることが条件になります。

したがって、公証役場の費用や行く手間がかかりますが、信託契約書は公正証書化すべきでしょう。

Q4.自宅は信託できない?

A4.不動産を信託する場合、賃貸アパートや駐車場などの収益物件に限らず、自宅を信託することもできます。

たとえば、認知症になって、施設に入所することになった場合、多額の保証金が必要になることがあります。毎月の施設利用料も安くはないでしょう。

それらの費用捻出のため、住まなくなった自宅を売却しようとしても、判断能力がなければ売ることも貸すこともできません。

そのような不測の事態に対応できるよう、受託者に自宅の売却権限も与えている内容の信託契約を元気なうちに結んでおけば安心です。

いざ、まとまったお金が必要となった時に受託者が自宅を売却し、売却代金から施設の保証金や施設利用料をまかなうことができます。

 

詳しくは<自宅を信託?売りたくても売れないときに備えて>

Q5.信託銀行(信託会社)に頼まないとダメ?

A5.信託というくらいなので、信託銀行(信託会社)に頼まないとダメなようにも感じますが、家族信託は文字どおり「家族による信託」です。

託す相手も家族が基本となりますので、信託銀行(信託会社)に頼まないとダメなわけではありません。

なお、信託銀行(信託会社)に信託することを一般に「商事信託」と呼び、家族信託とは異なり営利目的で信託事務が行われるため、手数料(報酬)が発生します。

Q6.費用はかかる?

A6.家族信託の設計や信託契約書作成、不動産があれば信託登記費用、信託口口座開設するのであれば金融機関の手数料など、初期費用は任意後見、成年後見などに比べてかかることが一般的です。

しかし、家族信託は身近な家族が受託者になるため、受託者の報酬は基本的に無報酬です。

そのため、一度信託すれば、定期的にかかる費用、ランニングコストのようなものはありません(ただし、専門職を信託監督人などに置いた場合は、一定の報酬が発生します)。

任意後見、成年後見は、はじめにかかる費用はそれほどでもありませんが、専門職が成年後見人に選任された場合(専門職が選任されることが多い)、当然ながら報酬が発生します。

後見人の報酬額は家庭裁判所が決定し、その金額は被後見人の財産の規模、事案の難易度にもよりますが、だいたい、年30万円ほどかかります。

Q7.信託しても遺言書は残せる?

A7.信託したとしても、遺言をすることが制限されるわけではありません。むしろ、家族信託と遺言を併用することが効果的な場合もあります。

ただ、信託した財産は、委託者(遺言者)の固有財産ではなくなるため、遺言の対象財産にすることはできません。

 

詳しくは<家族信託と遺言書、併用できる?どちらが優先される?>

Q8.認知症になっても家族信託は利用できる?

A8.認知症などで判断能力がなくなってしまうと、自ら有効な法律行為をすることができなくなるため、そもそも信託契約を締結することができません。

認知症などになる前に、元気なうちに検討、利用することをオススメします。

 

詳しくは<家族信託は認知症発症後でもできるか?>

Q9.家族信託すると、成年後見制度を利用できない?

A9.家族信託をしたあと、認知症などになった場合でも、成年後見制度を利用できます(むしろ、認知症などになったあとは成年後見制度しか利用できません)。

認知症になる前であれば、任意後見制度の利用も検討してもよいのではないでしょうか。

家族信託と任意後見制度を併用することによって、保護を厚くすることも可能です。

 

任意後見制度について詳しくは<将来の不安に備える任意後見契約とは?手続きの流れやポイント>

Q10.信託契約したあとでも信託財産の追加はできる?

A10.信託契約を締結したあと、あらたに信託財産に加えたいといった場合には、信託契約の内容にしたがって、信託財産の追加をすることができます。

追加信託で代表的なものが金銭で、実務上も必要に応じてよく行われています(追加の度に、信託契約をはじめからやり直す必要はありません)。

なお、不動産を追加信託する場合は、その都度、あらたに信託契約書を作成するできでしょう。

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