自筆証書遺言は作成の手間がかからないため、手軽に遺言書を作成することができます。
近年の法意識の高まりや、家族との関係性の変化など、時代とともに遺言書の作成件数は自筆証書(実際には統計はないが、遺言書検認申立件数から推察)、公正証書ともに増加傾向にあります。
ただ、法律でその作成方法が厳しく規定されています。
詳しくは<遺言書には何が書ける?作成方法やメリット、デメリット>
ここで疑問になりやすい点として、遺言書を作成した後、
「その遺言書を封筒に入れておくべきなのか」
「封をしていないと無効となってしまうのか」
といったところを解説していきます。
1.封筒に入れていなくても有効
結論から言って、封筒に入れていなくても遺言書は有効です。
自筆証書遺言の要件は①全文、日付、氏名が自書で②押印がされていることです。
ここに、「書いた遺言書は封筒に入れておくこと」とは定められていません。
したがって、書いた遺言書は必ずしも封筒に入れておかなくてもよいのです。
封筒に入れていないことを理由として遺言が無効となることはありません。
2.できるだけ封筒に入れて保管するべき
封筒に入れていなくても遺言は有効ですが、では入れておかない、というのもあまりオススメしません。
なぜなら、封筒に入れることにより遺言書が改ざんされるリスクが減りますし、遺言書自体の劣化を防ぐこともできます。
また、封筒に入れていない状態だと何らかの拍子で破棄する(される)可能性もあります。
できるだけ、封筒に入れておくことです。
封筒に入れるのであれば、単に遺言書を封筒に入れるだけではなく、ちゃんと糊付けをし、封印までをやっておくべきです。
そして、封筒の表に「遺言書」と書いておけば、誤って破棄することも防げますし、自分の死後、相続人が発見しやくすなる可能性もあります。
3.封がされた遺言書は家庭裁判所の検認まで開封しない
遺言者が死亡して遺言の効力が発生した後、その自筆証書遺言書は家庭裁判所の検認手続きが必要になります。
その検認手続きが終わるまで、封がされた遺言書は開封しないことです。
開封してしまうと、5万円以下の過料に処せられます。
なお、うっかり封を開けてしまったとしても、それによって遺言書が無効になることはないです。
4.法務局に遺言書を保管してもらう場合は
法務局で遺言書を保管する制度が2020年7月10日よりスタートしましたが、その場合は遺言書を法務局に提出する必要があります。
その際、遺言書の原本を封筒に入れないで提出します。
詳しくは<法務局で遺言書を保管してくれる?遺言書保管制度とは>
5.まとめ
自筆証書遺言書は封筒に入れておくことまでは法律上必要とされていませんが、もし封筒に入れられて、封もされている場合は、検認手続きが終わるまでは勝手に封を開けてはいけません。
故意に、もしくはまちがって封を開けてしまったとしても、遺言書が無効になるわけではありませんし、5万円の過料とはいいますが、実務上、処せられることはまずありません。
しかし、開けてしまうこと自体、他の相続人に不信感を与えるおそれがあり、場合によってはトラブルに発展する可能性もありますので、要注意です。