遺言で寄付するには?

1.遺言寄付

自らが築き上げてきた財産を身近な親族ではなく第三者に寄付したい、と考える方が増えてきました。

社会貢献のために使ってほしいと思われている方もたくさんいます。

その場合、遺言書を書いておくことによって自分の考えを実現することができます。

自分の財産を社会のために役立てたい。

遺言で寄付する、いわゆる「遺言寄付」と呼ばれるものです。

2.寄付先との事前打ち合わせは必須

遺言は遺言者の一方的意思で行うことができます。この点、当事者の契約である死因贈与(贈与者の死亡により贈与の効力が生じる)とは異なります。

この一方的意思で行うことができるということが、場合によっては想定外の結果が生じることになるかもしれません。

つまり、遺贈を受ける側としては、その遺贈対象の財産について無条件に受け入れているかというと、実はそうとは限りません。

なぜかというと、寄付先にとって遺贈の対象財産が真に必要なもの、利用価値のあるものとは限らないからです。

極端な話ですが、遺贈財産が全く価値のない土地(山林やがけ地など)の場合を考えてみると分かります。

遺贈を受ける側としては、「気持ちはありがたいが、そのような土地はもらっても使い道がない」「もらっても固定資産税の負担や管理責任を負うだけ」というのが正直なところではないでしょうか。

そこで、たとえば、ある社会的な活動をしている団体に遺言寄付をするのであえれば、遺言書作成前にまずはその団体と事前の相談、打ち合わせをしておくことです。

預貯金、現金を遺贈するのであれば特に問題になることはありませんが(寄付先としても金銭などは特に拒む理由はないのが通常)、不動産など金銭以外を遺贈寄付する場合は、事前の打ち合わせは必須であると思います。

3.遺贈の放棄をされないように

遺贈を受ける側としては、利用価値のない不動産を寄付されたとしても、使い道がなければまさに「無用の長物」と化します。

さらに、毎年の固定資産税を負担しなければなりませんし、管理義務も負います。

そのような負担と利益を比較検討した結果、遺贈を放棄される可能性もあります。

 

詳しくは<遺贈を放棄することはできるか?特定遺贈と包括遺贈の場合>

 

自分の死後、遺贈が放棄されたことにより遺言意思が実現できないことは、遺言者にとっては不本意であり、当然ながら望むことではないでしょう。

また、問題なのは遺贈の放棄により、その遺贈されるはずであった財産は(遺言書で「遺贈放棄された場合は、別の者へ遺贈する」としていなければ)法定相続人に相続されます。

「相続人間のトラブル、争続を憂い、遺産分割を避けるために遺言寄付をしたい」

「相続人がだれもいないために公益団体に寄付を考えた」

といったことであれば、寄付先との事前打ち合わせの必要性、重要性は一層増します。

4.寄付財産に相続税はかかる?

遺言寄付をする場合

たとえば、遺言で団体など個人以外の者に寄付する場合は相続税はかかりません。寄付先が公益的な活動をする団体以外(株式会社など)であってもです。

相続税は個人に対してかかる税金だからです。

ただし、相続税はかかりませんが、別途、法人税の課税問題はあります。

一方で、個人への寄付の場合は原則、相続税がかかりますが、公益事業などを行っている者に対する寄付で一定の要件を満たせば相続税はかかりません。

相続人が相続した財産を寄付する場合

被相続人が寄付をした場合ではなく、相続人が相続した財産を寄付する場合は、寄付先が特定の公益団体などへの寄付の場合その他一定の要件を満たしていなければ寄付財産が相続税の対象になってしまいます。

 

詳しくは<墓地は?寄付は?相続税がかからない財産>

 

相続した財産を寄付したのに、それが相続税の対象となってしまうこともあります。

5.まとめ

年々、遺贈寄付を考えている方が増えてきました。

しかし、寄付先の意向、考え、方針も重要です。

中には「不動産の寄付は(原則)お断りしている」というケースもあります。

せっかく遺言を書いたのに結果的に遺贈放棄がされるといったことのないよう、遺言者の生前に相手方と事前に打ち合わせをしておき、遺贈寄付を受け入れるかどうかを確認しておくことが大切です。

自治体や団体との打ち合わせをはじめとして遺言の書き方、遺言執行者の指定、税の問題等、専門性を有する論点が多くあるため、まずは専門家に相談することをオススメします。

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