「遺言書」は遺言者の最終意思を実現するためのものですが、似たような言葉で「遺書」というものがあります。
一般的に同じような意味あいとして扱われることがありますが、両者は言葉こそ似ていますが、法的な側面でみるとまったく別物、意味も役割も異なります。
勘違い、思い違いによって、自分の想いを遺された家族に託すことができなくなる可能性もありますので注意を要します。
1.遺書とは
遺書とは、一般的には自分が近いうちに(場合によっては直前)死亡することを前提に、自分の想いを紙に(紙でなくてもかまいません)書き記して、家族などに伝えるものとされています。
そもそも法律上、遺書に関する規定は何もないため、紙以外、録音や映像として伝える方法もあります。
その内容も自分で自由に決めることができます。
2.遺言書とは
一方、遺言書とは、遺言事項などを記載し、民法に規定されている方式にしたがって作成される書面です。
紙媒体である必要があるので、録音テープや映像として残すことはできません。
詳しくは<遺言書には何が書ける?作成方法やメリット、デメリット>
3.遺書の効力
遺書も遺言書も、自分の死後のことを書き記していることは共通していますが、この遺書、法的な効力はまったくありません。
したがって、遺言書のように遺書に書いた内容に基づいて何らかの相続手続きを行うことはできません。
だれかが権利を取得したり、義務を負ったりすることもありません。
4.自筆証書遺言書として扱うことは?
なお、その遺書が、結果的に自筆証書遺言書の方式を満たしているのであれば、自筆証書遺言として扱うことは可能です。
なぜなら、自筆遺言書のタイトルはなんでも良いからです。
「遺書」でも「遺言書」でも、また、タイトルそのものが無くてもまったく問題ありません。
民法に「タイトルは定めておくことを要する」といった規定はないからです。
単にタイトルが遺書となっているだけで、遺言者自身は遺言書のつもりで書いた場合もあります。
ただし、明らかに遺書と思われるような内容のものを無理やり遺言書として法的に有効なものに転換することは難しいのではないでしょうか。
5.まとめ
遺書は遺言書とは似て非なるものです。
ただ、その遺書の記載内容を参考に、相続人間で遺産分割協議を行うことは有用な面もあるでしょう。
遺書の存在によって、争続を回避できる場合もあるかも知れません。
また、前述のとおり自筆証書遺言として扱うことができるかどうか、判断の余地もあります。
遺書が自筆証書遺言として有効となる場合も可能性としてはありますので、実際のところどうなのか、その判断に迷った際は専門家に相談することオススメします。