
1.司法書士から手紙が届く?
相続手続きを進めるには、まずは相続人を確定させることが必要ですが、相続人調査の過程で依頼者さまが把握していない相続人が判明するケースがあります。
◆親が離婚していたことを知らず、前妻との間に子がいる
◆相続人が多数にのぼり、一度も会ったことがない人が共同相続人である
など、依頼に訪れた時点ではすべての相続人を把握していない、分からないといったケースも珍しくはありません。
依頼した相続人としては「自分は知らない」「初めて聞いた」となるでしょうが、当然ながら判明した相続人を無視して手続きを進めることはできません。
そのような場合、相続手続きの依頼を受けた司法書士事務所は、まずはその判明した相続人にあてて相続が発生した事実など、事情を記した手紙を送ります。
たとえ被相続人とは何十年も会っていない(もっと言えば会ったことがない)人物であっても戸籍上、相続人である限り相続手続きに際してその者の関与、協力が必須になってくるからです。
ただ、突然、司法書士が家に訪ねてきたり、電話をかけるやり方はビックリするでしょうし、失礼にもあたるため、一般的にはまず手紙で事情、詳細をお伝えすることになります。
2.参考資料が同封されていることが一般的
司法書士としては、「ある人が亡くなり相続が発生したため、戸籍謄本を調査した結果、あなたも相続人の1人ですよ」と伝えることから始まります。
なかには相続が発生していることを知らない相続人もいるので、司法書士事務所からの手紙には経緯、事情が詳細に書かれていることでしょう。
手紙だけでは分からない部分もあるため、参考資料、判断材料として被相続人の「財産目録」や「相続関係図」などの書類が同封されていることが一般的です。
それらをみて手紙を受け取った相続人としては、
・全面的に協力する
・今一度話しを聞いてみたい
・無条件では協力できない、もしくは協力したくない
のいずれかを判断することになるでしょう。
「回答書」といったものが同封されていることが一般的なので、自分の選択した判断を送り主である司法書士事務所に回答することになります。
「協力する」と回答した場合、追って手続きに必要な書類(遺産分割協議書など)が送られてきます。
ただ、司法書士事務所によっては、最初から遺産分割協議書などの手続き書類が前述の経緯、事情を記した手紙といっしょに送られてくることもあります。
3.異議があるかどうかの回答をする
相続人としては送られてきた遺産分割協議書をみてどうするか、ですが、異議の有無によって変わってきます。
送られてきた遺産分割協議書に異議がない場合
回答後に(もしくは手紙と同封されて)送られてきた遺産分割協議書に異議がないのであれば、実印を押して印鑑証明書を同封して終わりです。
手紙を受け取った相続人からすることはそれだけです。
あとは向こうが勝手に手続きを終えていることでしょう。
送られてきた遺産分割協議書に異議がある場合
一方、内容に異議がある、納得できない部分があるのであれば、その旨を回答して、納得のいくまで話し合う必要があるでしょう。
なお、回答書には納得のいかない理由、素直にハンコを押せない理由を必ず記載しておくことです。
4.無視はやめておくべき
送られてきた手紙を単に無視することは避けた方がよいです。
無視することによって、相続手続きは一切進むことはなく、無視によるメリットは何もないからです。
無視をしても、司法書士事務所からは手紙が何度か送られてくるでしょう。
その手紙を何度も無視し続けた結果、家庭裁判所から「遺産分割調停の申立書」が送られてくるかもしれません。
そうなってしまうと、家庭裁判所で話し合うことになり、解決がますます遠のきます(無視するくらいなら、場合によってはハンコ代でももらって判を押した方がよいこともあります)。
5.遺産分割協議を行うと原則、相続放棄ができなくなる
注意点としては遺産分割協議を行ってしまうと、原則、相続放棄ができなくなります。
遺産分割協議はまさに相続財産の処分行為にあたり、単純承認となってしまうからです。
詳しくは<遺産分割協議は相続財産の処分にあたる?相続放棄できなくなるか?>
場合によっては、相続人の方で債務の調査を経てからの対応にしてもよいかも知れません。
特に、被相続人とは長年会っていない、もしく会ったことがないといった関係性であれば、知らない借金があるかもしれないからです。
6.まとめ
司法書士から突然手紙がきて、「同封の書類に実印を押して印鑑証明書を同封のうえ返送して欲しい」などと書かれていれば、事情をあまり知らない人からすると何事かと不安になるのではないでしょうか。
そのような手紙がきて、
◆自分一人では判断できない
◆本当に実印を押して印鑑証明書まで送っても問題ない?
◆不安である、怖い
◆何をどうすればよいかわからない
と少しでも思ったのであれば、一人で悩まず、送られてきた書類一式を持って専門家に相談に行くことをオススメします。
いずれにしても、手紙を無視することだけは避けた方がよいでしょう。