家族信託の受託者はだれでもなれる?

1.家族信託、だれが受託者になる?

信頼できる人に、自分の財産を託して管理、運用などをしてもらう。

そのためにはさまざまな手続きが必要となりますが、このような手続きは家族信託、民事信託といわれることがあります。

この家族信託、一にも二にも、託す相手がいなければ始まりません。

信頼されて財産を託される人のことを、「受託者」といい、家族信託においては中心人物、「主役」といっても過言ではありません。

そのため、受託者をだれにするかが家族信託では最も重要になってきます。

「信託」というくらいなので、信託銀行(信託会社)を受託者としなければならないのかというと、そういうわけではありません。

家族信託では通常は家族が受託者となります。

文字どおり「信じて託す」というように、身近な家族に受託者になってもらうことが最善であり、基本の形になるのではないか、というところです。

2.受託者に適任な人は?

家族だから受託者に適任、ということではありません。

それはまた別の問題です。

信託法上、受託者にはいくつかの義務、責任が定められています。

受託者は、それら義務を負いながら、信託財産の管理などを行っていくので、家族ならだれでもよい、というものではありません。

受託者には、以下のような人が求められるのではないでしょうか。

 

◆財産管理を継続してできる人

◆委託者の想いや望みを理解してくれる人

◆お金にだらしなくない人

 

3.受託者になれない者は?

受託者は身近な家族になってもらうとしても、信託法上、以下の者は受託者になれません。

①未成年者

②成年被後見人

③被保佐人

※②、③は、信託法改正により法律上は受託者としてすることができるようになりました(もっとも、事実上、受託者の任務をこなせるかどうかは別問題です)。

4.司法書士などの専門職はなれる?

「信頼できる身近な家族がいないため、家族信託を利用できない」といった声もあります。

その場合、司法書士などの専門職に受託者に就任してくれないかと打診、要望を受けることがありますが、基本的に司法書士や弁護士などの専門職が受託者になることは難しいです。

信託業法の縛りがあるためです。

信託業法には、「信託の引受けを業として行う者は、免許を受けた信託会社でなければならない」との規定があります。

「業として」とは、平たく言うと、次の3つのことです。

 

①営利目的をもって

②反復継続的に

③不特定多数を相手とすること

 

家族が受託者となることは、営利目的でもありませんし、不特定多数を相手にするわけでもありませんので、まったく問題はありません。

一方で、司法書士などの専門職は、当然、業務として不特定多数を相手に報酬を受け取ることが前提となってきます。

したがって、免許を受けた信託会社ではない、司法書士などが受託者となることは信託業法に引っかかるおそれがあるのです。

「無報酬で業として行わなければ専門職も受託者になれる」といった考え方もありますが、ハッキリしない部分でもあるため、現状では専門職が受託者になることは難しいでしょう。

なお、専門職が信託監督人や受益者代理人などの信託関係人に就任し、報酬を受け取ることはできます。

5.まとめ

受託者は家族信託において中心人物、「肝心要」の部分になります。

しかし、身近な家族がいない、適任者がいないなどで、家族信託を利用したくてもできないといったケースがあります。

専門職が受託者に就任することは現行法上は難しいですが、この家族信託がより一層、普及していき、今後、法改正などで就任できる日がくるかもしれません。

そうなってくると、この家族信託という制度が今以上に利用されるケースが増えてくるのではないでしょうか。

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