遺産分割協議をしたけど印鑑証明書は渡したくない・・・

相談事例

父の遺産分割協議をすることになったのですが、兄から、相続手続きには印鑑証明書も必要と言われました。

私としては、書類に実印を押すのはいいのですが、印鑑証明書を渡すことに抵抗があります。

というのは、兄はだらしない性格で昔から借金を度々しているため、私の印鑑証明書を相続手続き以外の他のことに使われるのではないかと心配しています。

要は、私の印鑑証明書を悪用して、私の名前でお金を借りてしまうのではないか不安なのです。

以上の理由から、できれば印鑑証明書を渡したくはないのですが、印鑑証明書がなければ相続手続きはできないのでしょうか。

また、絶対に必要だとしても兄に印鑑証明書を渡さない方法はありますか。

1.相続手続きには印鑑証明書は必須

法定相続分で遺産を相続することもありますが、実務上多いのは相続人全員で遺産分割協議を行って、その内容どおりに遺産を相続することではないでしょうか。

そのため、遺産分割協議書を作成します。

遺産分割協議書には相続人全員が実印を押しますが、あわせて印鑑証明書も必要になります。

遺産分割協議書に押された印鑑が本当に実印かどうかを照合する必要があるからです。

印鑑証明書が一部でも不足している場合は、相続登記や預金の名義変更などの相続手続きを受け付けてくれません。

2.直接、相続人に印鑑証明書を渡さない方法は?

その印鑑証明書、司法書士などの専門家においても職務上、職権で取得できない大事な書面です(司法書士や行政書士など一定の専門職においては戸籍や住民票は職務上、職権で取得できます)。

相談事例のように「信頼できない相続人に大事な印鑑証明書を渡したくない」といった声はまれにあります。

勝手に悪用されて借金を作られると困るというのが主な理由でしょうか。

感情的なケースもあります(こうなってくると、一筋縄ではいかない印象です)。

相続手続きはしなければならないのは分かっているが、〇〇には印鑑証明書を渡したくない。

そのような場合は、司法書士などの専門家に手続きを依頼して、直接、司法書士に渡せばよいと思います。

手続きが完了したあとは印鑑証明書の原本は返却してくれますが、それも司法書士などと直接やり取りすれば問題はありません。

3.自分でやる場合は?

では、司法書士などの専門家に依頼せず自らで相続手続きをやるといった場合。

印鑑証明書を渡したくないのであれば、自らが先頭に立って、代表相続人として相続手続きをする旨、信頼できない相続人に伝えるのも手です。

相談事例のような信頼できない相続人に対して、「自分がすべて手続きを行うため、そちらが印鑑証明書を渡して欲しい」と提案してみるのも一案です。

何もやましいことがなければ、素直に応じてくれるかもしれません。

相続手続きは非常に煩雑で手間のかかるものですが、「勝手に使われて借金などされたらどうしよう」と日々不安に思うよりは気が楽になることでしょう。

4.まとめ

昨今、ハンコを廃止する流れで色々と話が進んでいますが、こと相続手続きにおいては、遺産分割協議書が必要になる関係上、相続人の意思をあらわす実印、印鑑証明書のセットは必須になります。

しかし、信頼できない相続人に印鑑証明書を渡すことに不安を覚えることもあるのではないでしょうか。

そのような場合は、いっそのこと専門家に依頼することをオススメします。

専門家が依頼者から預かった印鑑証明書を悪用するようなことは考えられませんので、安心して任せることができると思います。

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