1.押した印鑑が実印とは違う場合は
日常生活で実印を使う場面はそれほどありませんが、こと相続手続きにおいては実印を押す必要のある書類がいくつか出てきます。
たとえば、
・遺産分割協議書
・相続分の譲渡証明書
・金融機関への相続届出書
・死亡保険金請求書
などが挙げられます。
これらの書面に実印を押したつもりが印鑑証明書を見てみると印影が違う、つまり実印ではなかったということがまれにあります。
たとえば、「実印だと思っていた印鑑が実は銀行印だった」というケースが比較的よくあります。
印鑑証明書の印影と実際に押した印鑑が一致しなければ当然、「その押してある印鑑は実印ではない」と提出先に判断されてしまいます。
実印を探してすぐに見つかればいいですが、いくら探しても出てこない、ということもあります。
そのような場合、改印手続きをとることによって事なきを得ることがあります。
改印とは届出ている印鑑を変更することです。
実印ではなかった印鑑を正真正銘の実印とするのです。
改印の方法は各自治体によって若干異なることがあるので、詳細はお住まいの自治体に要確認ですが、大枠では次の方法によります(なお、改印手続きは「印鑑登録の廃止手続き」と「印鑑の再登録手続き」を含んでいます)。
2.顔写真付き公的身分証明書がある場合
運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど顔写真付きの公的身分証明書を役所の窓口に持参すれば、即日に登録完了することができます。
その日に印鑑証明書も取得可能なので、時間のロスを最小限にできます。
3.顔写真付き公的身分証明書がない場合
運転免許証など顔写真付き公的身分証明書がないとなると、以下の2つの方法によります。
保証人を立てることができる
同一市区町村に在住の人を保証人に立てる方法です(同一市区町村在住でなくてもよい自治体もあり)。
保証人とはいいますが、いわゆる借金などの保証人とは当然ながらまったく違うものです。あくまで印鑑登録についての保証人、ということに過ぎません。
なお、保証人も印鑑登録している者である必要があります。
保証人になってくれる人がいるのであれば、印鑑登録申請書(もしくは保証書)に保証人の実印を押してもらうことになります。
そうすれば、登録者に顔写真付き公的身分証明書がなくても即日に登録完了することができ、その日に印鑑証明書も取得できます。
この場合であっても登録者について健康保険証、介護保険証などの何かしらの本人確認書類が必要となります(顔写真付きの本人確認書類がなくても、保険証などは持っているはず)。
保証人を立てることができない
一方で、保証人を立てることができないとなると、照会書による方法となります。
この方法となると即日登録はできません。当然、その日に印鑑証明書も取れません。
照会書による方法とは、まず、役所の窓口に登録申請に行きます。その日に印鑑登録はできませんが、後日、役所から住民登録地に照会書が郵送されてきます。
そこには回答書が同封されているので、その回答書に必要事項を記入し、窓口に持参します。
回答書を持参したということで、そこではじめて印鑑登録が受け付けられ、その日に印鑑証明書も発行してくれます。
都合2回は窓口に行く必要があります。
4.代理人による場合
改印したいが病気や高齢であったりといった理由で窓口に行くことができず、手続きが困難な場合がありますが、そのような場合は代理人によることもできます。
代理人は印鑑登録廃止、印鑑の再登録、印鑑カード喪失の手続きについて登録者本人を代理して行います。
代理人により改印手続きを行う場合は、まず代理人が委任状を持参のうえ窓口に赴き、登録申請をします。
その後、登録者の住民登録地に照会書が郵送されるので、登録者自身が回答書に記入後、代理人に渡します。
代理人は委任状と回答書、代理人自身の本人確認書類を窓口に持参のうえ、改印手続きを行います。そのときに印鑑登録され、印鑑証明書も取得できます。
こちらも2回は窓口に行く必要があります。
5.登録印は忘れずに
役所の窓口に行くときには、登録したい印鑑を忘れずに持参しましょう。
なお、印鑑にはサイズや材質・素材に決まりがあり、各自治体によってルールが異なる場合もあるので、その確認も怠らないようにしておくことです(普通の印鑑であれば何も問題はないかと思います)。
6.まとめ
自分では実印と思って押したはいいが、実印ではなかった。
こうなると、手続きの遅れにつながってしまうことも。
普段、実印を押す機会がなければ、どれが実印であったか分からなくなることもあります。
実印が必要な書類に押印したはいいが、提出先に「実印ではない」と指摘されるとその分、時間をロスしますので、書類に実印を押す際には、コピーでいいので印鑑証明書も手元に置いておき、印影と見比べるひと手間をかけることをオススメします。