夫の口座から勝手にお金を引き出す長男から遺産を守る方法は?

相談事例

先月亡くなった夫は、晩年、長男にお金の管理を任せていたため、自分の口座通帳とキャッシュカードを預けていたのですが、長男はそれをいいことに勝手にお金を引き出しているようです。

私がやめるように言っても、聞く耳を持ちません。

だれが、いくら預金を相続するかまだ決めていないのに勝手に引き出す行為は問題があると思うのですが、なにか防ぐ手立てはありますか。

1.預金口座を凍結させる

相談事例のケースは少なくありませんが、防ぐ方法は簡単です。

それは預金口座を凍結させてしまえばよいのです。

金融機関に口座名義人が亡くなったことを伝えるだけで、口座は凍結されます。

死亡の事実を把握した金融機関は口座を凍結してしまうため、以降勝手に引き出されるおそれはなくなります。

なお、役所に死亡届を出したからといって金融機関が死亡の事実を把握することはありません(役所から通知されることはない)。

2.死亡の事実は窓口または電話で

死亡したことを、直接銀行の窓口に行って伝えると直ちに凍結してくれます。今は電話(郵送)でも対応してくれる金融機関が普通なので、電話で伝えて凍結してもらうのもよいでしょう。

当然、いずれの場合であっても凍結して欲しい口座の情報(名義人、口座番号など)を伝える必要があります。

3.使途不明金として問題になる

死亡後に引き出されたお金はどうなるか。

長男が勝手に引き出したお金は、いわゆる「使途不明金」として問題になる可能性が高いです。

 

使途不明金について詳しくは<遺産の不正使用の疑いや遺産を隠している場合は?>

 

もっとも、長男の言い分として、「葬儀費用などに使った」「自分のために使ったのではない」と言ってくることが予想されますので、領収書などの裏付け資料を提供してもらうことです。

なお、遺産分割が整わず、家庭裁判所での調停に進むこともあります。

遺産分割調停の場で使途不明金の問題を持ち出した場合、使途不明金の扱いについて相続人の間で合意が整えばその旨が調停調書(もしくは中間合意調書)に記載されます。

一方、裏付け資料の提供を拒んだり、そもそも否認したりなどで折り合えないようであれば、家庭裁判所での遺産分割調停の枠を超えて、使途不明金の返還訴訟(不当利得返還請求)として民事訴訟の問題となります。

この場合、家庭裁判所からは別途、民事訴訟の場で解決して欲しいと要請されます。

なぜなら、使途不明金は相続開始後の問題であるため、厳密にいえば遺産分割の対象外になるからです(あくまで家庭裁判所は「遺産分割」を決める場です)。

4.まとめ

亡くなった方の口座から勝手にお金が引き出されていることはそれほど珍しいことではありません。生前に被相続人からキャッシュカードを預かっていた場合(当然暗証番号も知っている)、引き出すことは容易です。

勝手に引き出している相続人がいるのであれば、金融機関に口座を凍結してもらうことです。

たとえ身近な家族といえども、勝手に引き出す行為は相続人間のトラブルのもとになるためやめておきましょう。

家庭裁判所としては使途不明金の問題は原則、遺産分割の場で話し合うものではないとしていますが、相続人が使途不明金の扱いについて合意することまでは排除しないというスタンスです。

ただ、合意できないのであれば、「それは家庭裁判所の管轄外なので民事訴訟で決着をつけてください」となります。

やむを得ない事情で引き出す場合には事前に他の相続人の了承を得ておくか、改正相続法であらたに規定された預貯金の払戻し制度を利用することをオススメします。

 

詳しくは<遺産分割が終わるまで預金を引き出せない?遺産分割前の預貯金の払戻制度>

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