遺言書と似たようなものにエンディングノート、というものがあります。
ここ数年、エンディングノートは広く普及し、書店や文房具店などでも販売されているため、目にしたことがある方もいるのではないでしょうか。
エンディングノートの書き方などを解説した関連書籍も多くみられます。
一種のブームと言えるかもしれません。
1.エンディングノートとは
このエンディングノート、簡単に言うと、自分にいつ訪れるか分からない死に備えて、自分の考え方、死後の希望や財産の詳細など、自身にまつわる様々なことについて書き記しておくノートです。
最近では比較的若い方も残しておくケースが増えているようです。
近年、終活が注目されていますが、このエンディングノートも一般化してきました。
2.何を書くか
では、いったい何を書くのか、ですが、書く内容に制限はありません。
何を書こうが自由ですが、以下は書く内容の一例です。
◆自身の財産の内容(財産目録)
◆自身が認知症になった際に希望すること
◆臓器提供や延命治療について
◆自身の葬儀に対する希望、考え方、死生観
◆相続人の一覧(家系図)
◆自分史(学歴、職歴、特技、趣味など)
◆家族のこと
◆仲間のこと
◆人生のイベント、節目のこと
◆仕事について
◆死を伝えてほしい人の一覧表、連絡先
なお、相続財産漏れを防ぐためにも、エンディングノートを書くのであれば、デジタル遺品(パスワード、ID、アカウント情報など)についても書いておくことをオススメします。
詳しくは<デジタル遺品について>
3.何に書くか?書き方は?
エンディングノートは遺言と違い、決まった方式、方法はありません。
ノートに書いても良いですし、市販のエンディングノートを活用しても良いでしょう。書き方も自由です。手書きでも、ワープロ、パソコンでもスマホアプリに残しておく方法でも構いません。
押印も不要です。
4.遺言との違い
遺言は基本的に相続分の指定や財産の帰属先を主な目的として書かれることが多いです。
そして、法的に効力があるものは法定遺言事項と呼ばれ、この法定遺言事項以外のことを遺言書に書いても法的には効力がありません。
作成方法も法律で厳しく定められています。
作成方法や法定遺言事項について詳しくは<遺言書には何が書ける?作成方法やメリット、デメリット>
作成費用も公正証書遺言であれば通常、数万円かかります。
詳しくは<公正証書遺言の作成費用は?>
自筆証書遺言はほぼタダで作成できますが、無効リスクや保管リスク、改ざんリスクに留意する必要があります。
一方、エンディングノートは上述のとおり想いを含めた自身のことを書いておくものに過ぎず、法律で規定されているものではなく、法的な効力はありません。
当然、家庭裁判所の検認を必要としませんし、たとえ相続人が改ざん、破棄したとしても、相続欠格となることもありません。
相続欠格について詳しくは<相続権がなくなる?相続欠格とは?>
5.エンディングノートの作成はオススメ
法的効力はなにもありませんが、相続手続きを進めていくうえで、エンディングノートが有るのと無いの、では遺された家族の負担がまったく違ってきます。
市販されているエンディングノートの書式として、基本的に財産を記入する部分があります。
本人の死後、相続財産の調査に手こずることが多いですが、エンディングノートに一覧として記載されていれば、調査にあたっての負担が大幅に軽減されることが期待されます。
また、エンディングノートに想いをしたためることにより、相続人間の争族・争続を防ぐことができるかもしれません。
作成費用も市販のエンディングノートであれば1000円ほどなので、抵抗なく作成できるのではないでしょうか。
6.まとめ
以上のとおり、エンディングノートの用途、効果をみてきましたが、法的な効力があるわけではありません。
主に自分の想いなどを家族に伝え、また、死後必要となる手続きの負担を軽減するにとどまるものなので、遺言書との使い分けが必要になるでしょう。
しかし、エンディングノートを書くことは、基本的に自分が死んだ後の財産の帰属のことを記す遺言書とは違い、自身の最期が近づいていく中で、まさに自分史として遺しておき、いままでの自身の人生を振り返る良い機会になるのではないでしょうか。