相続手続きできる?相続人が刑務所に服役している場合

相談事例

私の兄が亡くなったのですが、兄は生涯独身で子がおらず、両親もすでに他界しています。

きょうだいが姉の私と、末っ子の弟の2人で、この場合、私たちが相続人になると思いますが、その弟が現在、刑務所に服役しており、刑期満了までにまだ数年はあります。

この度、兄所有の自宅を私が相続して、弟には相応のお金を渡すことを考えているのですが、私の名義にするには相続人の間で遺産分割協議が必要と聞きました。

弟が刑務所に入ったままですが手続きはできるのでしょうか?それとも、やはり出所するまで待つほかないのでしょうか?

1.相続人が刑務所に服役中の場合の問題点

「相続人の1人が現在、刑務所に服役中である」

相続案件を中心に手掛けていると、このようなご相談もまれにあります。

相続人が刑務所から出所するまで相続手続きができないとなると大変です。

場合によっては何年も財産が塩漬けとなってしまうかもしれません。

特に不動産の場合は、損失が大きくなるリスクがあります。

不動産の名義変更、相続手続きは本来であれば、

①相続人全員で遺産分割協議を行う

②協議結果を遺産分割協議書として書面化

③そこに実印を押して印鑑証明書を添付して登記申請

という流れになります。

ここで問題なのが、相続人が服役中であるため印鑑証明書を取得できないことです。

2.相続人が刑務所に服役中の場合の相続登記手続き

そこで、登記手続きにおいては法務省の通達が救済的判断をしています。

この場合、次のような対応方法があります。

事前に面会、手紙などで服役中の弟と連絡を取り合って、遺産分割について意見のすり合わせ、合意をしておきます。

合意できたら、刑務所の担当者と打ち合わせのうえ、遺産分割協議書を刑務所に郵送します。

その遺産分割協議書に、本人の拇印を押してもらい、刑務所長に本人の拇印に相違ない旨の奥書証明をしてもらいます。

このような方法によれば、弟の印鑑証明書がなくても登記手続きをすることができます(なお、念のため法務局への事前相談をオススメします)。

3.預貯金など不動産以外の相続手続きは?

上述の方法はあくまで不動産登記手続きを法務局に申請する場合です。

登記先例として実務上運用されている方法だからです。

したがって、預貯金などの相続手続きについてはどのような対応方法になるかは、個別に各金融機関などの手続き先に問い合わせる必要があります(もっとも、不動産登記と同様の手続きにはなろうかと思います)。

4.まとめ

相続人が刑務所に入っている場合であっても、何も出所まで待つ必要はありません。

本人の拇印と刑務所長の奥書証明があれば、印鑑証明書がなくても相続登記手続きは可能です。

おそらく、この方法であればどの法務局も対応してくれると思います。

ただし、登記手続き以外については、異なる対応になる可能性もありますので、事前確認は必須です。

いずれにしても特殊な事案になるので、まずは専門家に相談することをオススメします。

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