相続不動産の調査、確認方法

相談事例

先月、父が亡くなりました。

父の相続手続きにあたり、相続財産を調査しているところですが、どうやら自宅以外にも不動産を所有しているようです。

しかし、私を含め相続人全員が詳細を把握していない状況です。

詳細が分からないままでは遺産分割も進めることができないため、相続手続きを行うことができません。

1.相続人が把握していない相続不動産

当然のことながら遺産分割協議の前提として、相続財産を把握していなければなりません。

したがって、相続人は相続財産の調査を行うことになりますが、その相続財産の調査において、特に重要なものとして不動産の調査があります。

自宅の把握は当然できますが、自宅以外にも不動産がある場合や、調査の過程で、たまたま自宅以外の不動産が判明する場合もあります。

被相続人がいつ、どこの不動産を購入して登記名義人となっているか分からないといったことはよくあります。

以下では、相続財産のうち、不動産の調査方法を具体的に解説します。

2.被相続人の不動産の確認方法

権利書(登記識別情報通知書)で確認

まずは権利書(登記識別情報通知書)を確認することです。そこには不動産の所在地などの情報が必ず記載されています。

権利書とは、不動産を取得し、登記した際に法務局から発行される書面です。

権利書を持っているということは、その不動産の所有権名義人である強い推定が働きます。つまり、権利書を持っている者が所有者本人であるといえるのです。

権利書は通常、「不動産登記済権利証」「不動産登記権利情報」などのタイトルがつけられている冊子に綴じこんであります。

一般のご家庭であれば、自宅に保管していることが多いです。

資産家、地主さんなどの場合は、大量の権利書を持っていることもありますので、銀行の貸金庫などにまとめて預けている場合もあります。

ただ、権利書を紛失しているなどで手元に権利書がすべて揃っている保証はないため、漏れる可能性もあります。

固定資産税納税通知書・課税明細書で確認

毎年4月から5月ごろに固定資産税納税通知書・課税明細書が届きます。

そこには課税対象の不動産が記載されています。

そこで相続不動産を確認できます。

ただし、道路持分や墓地などの非課税物件については記載されていませんので、要注意です。

未登記の建物(登記簿が取れない)であっても、通常は固定資産税が課税されていますので、それも納税通知書で確認できます。

なお、被相続人の死後、相当期間が経過した後に相続人が把握していない不動産の固定資産税納税通知書が届くことがあります。

場合によっては相続放棄を考える必要があるかも知れません。

 

詳しくは<突然きた固定資産税の請求!3か月経過後の相続放棄はできる?>

名寄帳で確認

前述のとおり、固定資産税納税通知書・課税明細書には基本的に課税物件しか記載されていないため、非課税物件である道路持分や墓地などが把握できないおそれもあります。

そこで、所有者の名義で所有物件を寄せる(集める)「名寄帳」を取得してみることです。

名寄帳とは、納税義務を負う「その名義人」が「その市区町村内」において所有している不動産の一覧で、市区町村が管理しています。

これを取得すれば、非課税物件も含めてすべての所有不動産を把握することができます(自治体によっては非課税物件も載っていないケースがあります)。

しかし、その市区町村以外の場所に不動産を所有している場合は要注意です。

なぜなら、名寄帳はその市区町村以外の場所にある不動産については、一覧には記載されないからです。

管轄外の不動産については役所も把握していないのです。

たとえば、流山市と港区に不動産を所有している場合、流山市で取得した名寄帳には、流山市において所有している不動産はすべて記載されますが、港区の不動産は一切記載されません。

3.法務局で登記簿の調査

前述の方法で被相続人の所有不動産が把握できたら、法務局で登記簿謄本(登記事項証明書のこと)を取得し、物件や権利関係の詳細を確認しましょう。

登記簿謄本はどこの法務局でも取得できます。また、窓口だけではなく、郵送やインターネットでも取得できます。

インターネットで取得する場合は初期設定が必要になりますが、難しくはありませんので、試してみてもよいかもしれません。

窓口で交付を受ける場合は、備え付けの申請書がありますので、そこに不動産の所在や地番(家屋番号)を記載します。登記簿を取得すること自体は簡単な作業になります。

手数料は、1物件につき600円で、収入印紙を貼って納めます。

なお、土地と建物は法律上、別個独立した不動産なので、それぞれ1物件としてカウントします。

たとえば、土地が2筆、建物が1棟であれば、1800円の手数料がかかります。

窓口で申請後、その場で発行してくれます。

4.取得できた登記簿を確認

登記簿を取得できたら、まず登記簿の権利部(甲区)を見ます。

甲区には、所有権の情報が記載されます。

甲区の最後の欄に被相続人が所有者として記載されていれば、その不動産は被相続人名義であるため、相続対象財産となります。

注意点としては被相続人の単独所有か、だれかとの共有かを確認しておくことです。氏名の前に持分が記載されていれば、共有で所有しているということです。

また、権利部(乙区)も忘れずに見ておきましょう。

乙区には所有権以外の権利の情報が記載されています。

そこに抵当権の記載があれば、その不動産を担保に銀行などからお金を借り入れていることになります。

抵当権の記載を見つけたら、まずは銀行などに問い合わせることです。

その借り入れが住宅ローンであれば団体信用生命保険などの生命保険で完済されるケースもあります。

 

詳しくは<自宅を相続したら残った住宅ローンはどうなる?団体信用生命保険とは?>

 

場合によっては、抵当権の抹消登記が必要になってきます。

 

詳しくは<相続した不動産に抵当権の登記が設定されているときは>

 

なお、未登記建物がある場合は、当然ながら登記簿謄本を取得することはできませんので、別途、手続きが必要になってくる場合があります。

 

詳しくは<相続した建物が実は未登記だったら?何かデメリットはある?>

 

5.まとめ

以上が、相続不動産の確認、調査方法です。

相続不動産の一部に調査漏れ、登記漏れが出てしまうと、後々、相続不動産を売却する際に非常に面倒なことになる可能性があります(場合によっては売れなくなる)。

やり過ぎといったことはありませんので、時間の許す限り調査をし尽くすことが重要です。

調査に行き詰ったりその方法がいまいち分からない、面倒である、ということであれば、専門家に相談することをオススメします。

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