1.任意後見契約を変更したい
任意後見契約は本人が認知症などで判断能力が低下した状況になり、任意後見監督人が選任されることでスタートします。
しかし、人がいつ認知症などで判断能力が低下するかは、事前にわかるものではないため任意後見契約を締結してから実際に契約が発効するまで数年、場合によっては十年以上先といったこともあります。
その間に任意後見契約を見直したい、変更したい、といったこともあるかもしれません。
以下では、変更したい部分に分けて、変更が可能か、可能の場合はどのようにすればよいか、を解説します。
なお、契約形態が「即効型」といわれるものであれば、契約から契約発効までの時間的間隔がないので契約内容を変更したい、といった事態にはあまりならないでしょう。
契約形態について詳しくは<任意後見契約の3つの契約形態(移行型、即効型、将来型)>
任意後見人(任意後見受任者)を変更したい
契約の当事者である任意後見人(任意後見受任者)を変更したい、といった場合。
契約の発効前、任意後見受任者を変更したいといった場合は、契約内容の変更ではなくいったん契約そのものを解除します。
任意後見契約の解約について詳しくは<任意後見契約の解除・解約はできるか?>
そして、あらたな任意後見受任者と契約を締結し直す必要があります。
従前の契約内容を変更して当事者を変えることはできません。
契約発効後であっても、同様にいったん解約し、再度締結、となりますが、契約が発効しているということは本人の判断能力が低下している状況であるため、再度契約を締結することが困難でしょう(法定後見を利用することも選択肢に入ります)。
なお、発効後の解約は、正当な理由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得ることにより可能です。
代理権の範囲を変更したい
どのような行為について本人を代理できるのかは任意後見契約の締結時に決めますが、その後、事情が変わって代理権の範囲を変更したい、といったこともあるかもしれません。
上述のとおり契約発効まで何年も先、といったことも珍しいことではありません。
時間の経過とともに契約当時では想定できない事柄も出てくるでしょう。代理権の範囲が今のままでは不十分など。
その代理権の範囲を変更したいとなった場合は任意後見人(任意後見受任者)の変更と同じようにいったん解約して、再度、契約を締結することになります。
代理権の範囲の変更だけをすることはできません。
なお、代理事項をあらたに追加したい場合は、契約自体をやり直すのではなく、追加したい代理事項を代理権の範囲とした新契約を締結する方法もあります。
契約発効後は判断能力を欠いている、低下している状況なので、契約行為ができないと考えられるため、法定後見に移行することも検討する必要があります。
当事者や代理権の範囲以外を変更したい
たとえば、任意後見人の報酬金額を変更したい、など当事者や代理権の範囲以外の変更をしたい場合は契約内容の変更(当然、公正証書で)で対応可能とされています。
ただし、契約発効後は判断能力の問題で変更行為が難しいのは同様です。
2.まとめ
「契約内容を変更したいけど、どうすればよいか」
任意後見契約の効力が生じるまで、(即効型を除き)通常は一定期間を要します。
その間に契約内容を変更したい、といったこともあるかもしれません。
任意後見契約のうち当事者の変更や代理権の範囲の変更はいったん解約、再度締結、ということになりますが、場合によっては変更契約で対応可能な事項もあるため、専門家に相談することをオススメします。
契約発効後は本人の判断能力の問題で再契約は困難なので、法定後見も視野に入れる必要があるでしょう。
なお、任意後見から法定後見への移行は、家庭裁判所の審判によりされますが、本人の利益のために特に必要と認めるとき、に限られます。