転籍できない?筆頭者が亡くなっていても、本籍地は変更できるか?

相談事例

私の夫が亡くなったので、本籍を私の実家の方に変更しようと考えていました。

その話を親戚にしたところ「筆頭者である夫が亡くなるともうほかの本籍地に転籍ができない」と聞かされましたが本当なのでしょうか。

1.筆頭者が死亡しても転籍はできる?

転籍とは、戸籍に記載されている者全員が異動して、新本籍地にあらたに戸籍が編製されることです。

全員が異動することになるため、夫婦別々の戸籍となることはできません。

この転籍ですが、筆頭者が亡くなった後でもできるのか。

相談事例のように戸籍の筆頭者が亡くなったあと、その配偶者が本籍地を生まれ育った実家の方に変更したい、といったこともあるかもしれませんが、筆頭者が死亡したあとであっても残された配偶者が転籍することは可能です。

この場合、新本籍地に戸籍が作られますが、筆頭者は夫のままです。

筆頭者が亡くなってもその配偶者が筆頭者になるわけではなく、筆頭者が変更されることはないからです。

 

詳しくは<死亡により筆頭者は変わる?世帯主は?>

 

転籍により作られた新戸籍の記載事項には夫の身分事項も記載されますし(当然、死亡の旨も記載されています)、その次の欄には妻の身分事項が記載されます。

2.転籍届出書の提出

転籍をするのであれば、転籍届出を提出します。

提出先は、

①本籍地

②転籍先

③住所地

いずれかの役所・役場になります。

ただし、本籍地が別の自治体になる場合は、戸籍謄本の提出も必要になります。

転籍届出書には転籍届出人である筆頭者とその配偶者の署名押印が必要とされていますが、筆頭者が死亡している場合は、筆頭者の記載欄は空欄にするかもしくは筆頭者の名前を書いておけば問題はありません。

当然、押印も不要です。

届出人配偶者の欄には配偶者の署名押印をして、配偶者が届出ることになります。

3.配偶者も死亡している場合の転籍は?

筆頭者が死亡していても、配偶者が生存していれば転籍可能です。

では、配偶者も死亡している場合は。

転籍届出人は筆頭者とその配偶者に限られるので、両者は転籍届出をすることができますが、それ以外の在籍者(子)は転籍届出人となることができません。

つまり、子が、亡くなった筆頭者と配偶者(両親)を含めて他の地に転籍することはできません。

この場合、子が成年者であれば「分籍」をすることになります。

ちなみに、分籍とは筆頭者および配偶者以外で成年に達している在籍者がその戸籍から出て、新たに戸籍を作ることで、分籍したからといって、親子関係に変更があるわけではありません。

分籍先の本籍地は任意に決めることができますが、一度分籍するともう元の戸籍に戻ることはできないので、注意を要します。

4.まとめ

「夫が亡くなったから本籍地を出身地に戻したい」

「居住地と本籍地を一致させたい」

転籍したくても筆頭者が亡くなっているからできない、という意見を聞くことがありますが、そんなことはありません。

配偶者も転籍届出人になれますので、転籍することができます。

ただ、筆頭者とその配偶者以外の在籍者は転籍届出人にはなれませんので、本籍地を変更したい、自分が筆頭者となった戸籍を作りたい、となった場合は分籍といった手続きで対応することになります。

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