介護施設に入るには必ず成年後見人が必要?

1.成年後見人選任申立ての動機

成年後見人は本人の法定代理人として、各種契約や財産管理などを行っていきます。

たとえば、

・不動産を売却したいが、認知症だから売れない

・判断能力がないことをいいことに悪徳業者にだまされた!お金を取り戻したい

・亡父親の遺産分割協議をしたいけど母親に判断能力がないためできない

これらのケースでは、本人の法定代理人として成年後見人を選任し、その成年後見人が対応していくことになります。

どうしても選任しなければならないような、明確な申立ての動機がないのであれば、事実上、家族が財産管理などをしているのが実際のところです。

2.施設入所のために成年後見人は必要?

「介護施設に入るには成年後見人を選ぶ必要がありますか?」

以前、このようなご質問を受けたことがあります。

いわゆる「身上監護」の場面です。

成年後見人は職務上の権限として財産管理権のほか身上監護権も有していますので、施設入所契約も代理できます。

が、基本的にこの入所契約、家族(特に配偶者や子など近しい者)が事実上行っていることがあるのではないでしょうか。

施設側としては、身元保証人を立てることを求めることがありますが、その身元保証人には通常、家族がなります。

そして、施設によってはその家族・身元保証人に本人の入所契約を行ってもらう、ということを認めているケースがあります(成年後見人をちゃんと選任して、その成年後見人が契約を行うことが原則なのは言うまでもありません)。

施設側としては、ちゃんと施設利用料を支払ってくれ、さらに身元保証人がいるのであれば(亡くなった後のご遺体の引き取りも含めて)それで問題や不都合はない、ということです。

施設に入るために、成年後見人が絶対に必要というわけではないのです(もっとも、これが成年後見人の利用が進んでいない理由の1つになるのかもしれません)。

ただ、「入所契約は成年後見人でなければならない」とする施設も当然ながらあります。

むしろ、近年はそのような施設が一般的になってきました。

いずれにしても、施設によって対応や扱いはまちまちな印象がありますが、「入所契約には成年後見人の選任が必要」という場合には、まず成年後見人を選任してそのあとに入所契約の締結、という流れになります。

 

なお、成年後見人はその職務権限として身元保証人になることはできません。詳しくは<成年後見制度の誤解、勘違いなど>

3.まとめ

成年後見人は広い代理権を持っており、様々な動機、目的で選任されます。

その1つが介護施設などへの入所契約。

ただ、施設によっては身元保証人となる家族がそのまま入所契約締結も行っている現実があります。

管理する財産もそれほど多くなく、その他必ず成年後見人を選任しなければならない理由、事情がない場合は特に動機づけが起こらないでしょう。

毎年、成年後見人の報酬(成年後見人は家庭裁判所の職権で選任され、必ずしも親族など希望の候補者が選任されるわけではありません)が生じることを考えると、難しいところです。

したがって、家族だけで事実上対応できるのであれば、そのためだけに成年後見人を選任しなくてもよいのではないか、という考え方もあります。

しかし、成年後見人の利用を促進するのであれば、原則どおり成年後見人を選任して、その者が法律にのっとって代理することが理想的、本来の形であるのは言うまでもありません。

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