相談事例
母が先月亡くなったのですが、母が他人の借金の保証人になっていることが分かりました。
私が母を相続すると保証人の地位、義務も他の財産といっしょに相続されると聞きました。
借りた本人がちゃんと返済すれば問題はないのでしょうが、返済が滞った場合のことを考えると精神的に負担を感じます。
そこで、相続放棄の申立てを考えています。
一方で、先祖の仏壇やお墓は私が管理していきたいと思っているのですが、相続放棄をしてもお墓などは相続できるのでしょうか。
それとも、やはりお墓なども放棄することになってしまうのでしょうか。
1.保証人の地位は相続される
相談事例のように、保証人の地位、義務は相続の対象になります。
相続人が保証人としての責任を負うことになります。
主債務者(お金を借りた本人)からの返済が滞ったりした場合は、当然のように債権者から保証人に対して請求がきます。
したがって、保証人の地位、これを保証債務といいますが、この保証債務を相続したくないのであれば、相続放棄をする必要があります。
2.お墓は相続財産ではない
お墓(墳墓、墓地)や仏壇、仏具などは祭祀財産といって、相続財産とは別の制度であり、法律上は区別されています。
ということは、相続財産を放棄する「相続放棄」をしたとしても、祭祀財産は承継(※相続ではなく承継)できるのです。
相談事例のように、相続放棄をして財産を相続しない場合であっても、お墓をはじめとした祭祀財産までを放棄することにはなりません。
では、だれが祭祀財産を承継するのか。
被相続人が祭祀承継者を指定していればその者が、指定されていなければ慣習などで承継者が決定します(相続放棄をしたとしても何ら影響はありません)。
3.まとめ
相続の制度と祭祀制度、両者の考え方は異なります。
相続放棄をしたとしても、お墓、墓地、仏具などの祭祀財産を承継することはできます。
また、逆に祭祀財産を処分したとしても法定単純承認にはあたりません。
相続財産ではないからです。
したがって、たとえば仏壇を処分したとしても(他の要件を満たしている限り)相続放棄をすることができます。
相続放棄により「お墓が相続できなくなる」とはならないので、ご安心ください。