相続権はどうなる?離婚したが、その連れ子と離縁していないと・・・

事例

AはBと再婚し、Bの連れ子Cと養子縁組を結んだ。

しかし、AとBはほどなく離婚した。

AとCは離縁をしていないなか、Aが死亡した。

Aの両親である甲、乙は存命である。

1.離婚しても自動的に離縁はされない

再婚相手の子(いわゆる連れ子)を養子とすることは広く一般的に行われていますが、離婚によってその連れ子との養親子関係、もっというと相続に影響はあるのでしょうか。

結論から言うと、AはBと離婚しましたが、その際、Cとは離縁をしていませんので、事例でいうとAの相続人はCのみになります。

Aの両親甲、乙は相続人とはなりません。

夫婦の関係と親子の関係は別の身分問題、法律問題です。

AがBと離婚したことによって、当然にCとの縁組関係も解消されるわけではなく、役所の方が勝手に離縁の手続きを取るわけではありません。

離婚後も養親子関係、法定血族関係は存続し、Cは相続権を有することになります。

したがって、Cは依然、Aの「子」として第1順位の相続権がありますので、第2順位の相続権者であるAの両親甲、乙はAを相続することはできません。

2.Aに実子がいた場合

また、Aに実子がいた場合、その実子とCが第1順位の相続人となり、遺産分割協議はその実子とCが行うことになります。

そして、Cが未成年者であれば、その親権者であるBがCを代理して遺産分割協議を行います。

この場合、もめる可能性が高いです。

もめるまではいかなくとも円滑、円満に遺産分割協議が成立することはあまり期待できません。

BとしてはCに(実質は親であるBに)有利に事を進めたい、財産を少しでも多くもらいたい、と思うのが普通だからです。

協議では合意できずに家庭裁判所の調停・審判に進む可能性があります。

3.離縁の方法は?

事例のように、離縁の手続きを取っていなかったことにより思わぬ者が相続人として登場し、相続権や相続持分に影響を与えることがあります。離婚後に養親子関係を望まない、相続させる気がないのであれば離婚の際にあわせて離縁もしておくことです。

なお、離縁の方法としては次のものがあります。

(1)協議離縁

養親と養子の話し合い、合意で離縁することです。養子が15歳以上であれば養子自らが、15歳に満たなければ離縁後に法定代理人となる者(通常は実親)が話し合います。

役所に離縁届を提出すれば離縁の事実が戸籍に記載されます。

(2)調停離縁

協議で合意できない、協議することができない場合は家庭裁判所に調停を申立てます。家庭裁判所で調停委員を交えて話し合います。そこで合意できれば調停調書が作成されます。

その調書謄本を役所に提出すれば離縁の事実が戸籍に記載されます。

(3)裁判離縁

調停が不成立となり、それでも離縁したければ最終的に裁判離縁となり、離縁の可否を裁判官が判断します。

ただし、裁判離縁が認められるには次の法律上の理由、いずれかが必要です。

①相手から悪意で遺棄された

②相手が3年以上生死不明

③その他縁組を継続することができない重大な事由がある

したがって、単に連れ子に相続させたくない、などが理由であれば裁判で離縁が認められる可能性は低いです。

裁判で離縁が認められると、判決書が作成されます。

そこから異議申し立てなく2週間が経過すると判決は確定し、確定証明書(その判決が確定的に決まったことを証明する)の発行を受けることができます。

判決書謄本と確定証明書を役所に提出すれば離縁の事実が戸籍に記載されます。

(4)死後離縁

縁組の当事者である養親・養子の一方が死亡しても縁組関係は自動的に解消されません。そのまま養親子関係は継続しています。

縁組関係を解消したければ家庭裁判所から離縁の許可を得る必要があります。

なお、養親子の生存中に行う離縁と違い、死後離縁をしても相続関係には一切影響ありません。

 

詳しくは<相続権に影響は?死後離縁の勘違い>

 

4.まとめ

離縁をしていないことにより、将来的に相続人の構成が変わってくる場合がありますので、お互いが相続人となることを望まないのであれば、協議離縁を行い、役所に届出ることです。

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