戸籍を取得して相続人を読み解くには様々な知識、特に相続法の知識が必要になります。
当然、その前提として戸籍を収集していくことになりますが、実際に取っていくにあたり出てくる疑問やポイントなどを知ることも重要です。
以下では、それらをまとめてみました。
1.戸籍はどこで取る?
戸籍は、本籍地を管轄する役所が取り扱います。
ただし、転籍、分籍や除籍により、別の本籍地に戸籍がある場合は、取得したい戸籍の本籍地を管轄する役所に請求する必要があります。
人間の一生において、転籍、除籍がされていることは意外に多いです。
一か所の役所で一度に取り揃えることができるわけではありません。むしろ、そのようなケースはまれです。
取得する際は、申請書(備え付け)、手数料、身分証明書が必要になります。
2.戸籍が取れない場合は?
戸籍謄本を取り進める過程で、戸籍謄本を取得できないケースがあります。
それは、戸籍簿自体がなくなってしまった場合です。
戸籍簿がなくなる理由としては、主には以下の事情によります。
◆台風や関東大震災などの自然災害
◆大空襲など戦災
◆火災
◆保存期間満了で廃棄された
戸籍は基本的に別の場所でも資料を保管していますが、その保管先でも災害などでなくなってしまうこともあります。
その場合、戸籍を再現できなくなります。
再現できない場合は、「焼失証明書」や「滅失証明書」といった形で戸籍の代わりに、すでにその戸籍はないため発行することができないことを証明してくれます。
また、除籍簿、改製原戸籍簿は保管期間が定められています。
詳しくは<廃棄処分される?除籍謄本や住民票の除票の保管期間>
保管期間満了により廃棄されている場合は「廃棄証明書」を発行してくれます(自治体によっては、廃棄されずにそのまま保存されていることもあり、場合によっては発行してくれることもあります)。
また、樺太の戸籍のように、特殊な事情により取得できない場合があります。
取れなくても手続きはできる
前述の事情で、戸籍謄本が取れないケースはよくあります。
その場合、たとえば相続登記のために戸籍が必要なときは、戸籍が一部不足の状態になっていますが、その際は焼失証明書などで対応してくれます。
「戸籍がすべて取れないから手続きができない」といったことにはならないため、ご安心ください。
3.戸籍と住民票の違いは?
戸籍とは、婚姻や離婚、認知など身分事項の変動そのものを記録するためのものです。
一方、住民票とは、住民の居住場所を記録するためのものです。
戸籍は本籍地の役所で、住民票は住所地の役所で取得します。
また、本籍地と住所地について詳しくは<本籍地と住所地について>をご覧ください。
4.本籍地が分からない場合は?
自身の戸籍を取得しようとしても、本籍地が分からないときがあります。
その場合は、まず、住民票を取ってみることです。
住民票には本籍地が記載されますので、そこで確認できます。
注意点としては、住民票取得の申請書に、「本籍地の記載が必要」のチェックボックスがあるため、忘れずにチェックを入れることです。
チェックを入れなければ、本籍地の記載が省略されて出てきてしまいます。
また、同じく戸籍の筆頭者が分からない場合は、住民票を取る際に筆頭者入りでチェックボックスにチェックを入れれば、筆頭者の記載がされた住民票が発行されます。
5.転籍とは?
転籍とは、戸籍の本籍地を別の場所に移すことです。
本籍地は(基本的には)日本国内であればどこでも構いません。
移す際にその理由はいらないため、どこの本籍地でも自由に選択できます。
したがって、まったく関係のない土地を本籍地とすることができます。
通常は住所地を本籍地としたり、婚姻などによりあらたに戸籍を編製する際にはいままでの本籍地を定めることが多いです。
本籍地が親の本籍地とかぶっても問題ありません。
ただ、住所地から離れた場所を本籍地とすると、戸籍を取得する際に面倒で不便となる場合もあるため、あまりオススメできません。
6.除籍とは?
除籍とは、その戸籍に記載されてる人が婚姻や死亡によりその戸籍内から除かれることです。
死亡の場合は死亡年月日が記載されます。
婚姻の場合はいつ、だれと婚姻したか、婚姻後の本籍地はどこかが記載されます。
7.誰の戸籍でも無条件に取得できる?
戸籍を取得できる者は戸籍法という法律で規定されています。
そして、一定の者以外からの請求(第三者請求)は、取得が制限され、場合によっては家族、肉親であっても無条件に取得できないこともあります。
8.戸籍謄本と戸籍抄本の違いは?
「謄本」とは、そこ戸籍に記載されている内容の全部を写したものです。
一方で、「抄本」とは、記載事項の一部を抜き出したものになります。
たとえば、戸籍事項のうち、長男の身分事項のみを知りたければ、抄本として請求します。
なお、コンピューター化されている戸籍は、謄本のことを全部事項証明書といい、抄本のことを一部(個人)事項証明書といいます。
実務上はいまだに謄本、抄本と呼ばれています。
9.除籍謄本とは?
除籍謄本とは、ほかの市区町村に転籍したときや、その戸籍に記載されている者の全員が死亡や婚姻によって除かれ、だれもいなくなった結果、除籍簿に移された戸籍のことです。
そして、その戸籍謄本のことを「除籍謄本」といい、1人でもその戸籍に残っていれば、除籍謄本にはなりません。
なお、コンピューター化前の除籍謄本などをみてみると、名前の上からバツ(×)の印がされています。
これは、その者が死亡などの理由でその戸籍から除かれたということを表しています。
10.改製原戸籍謄本とは?
改製原戸籍謄本とは、法令の改正により、戸籍そのものを書き換えることになった場合に、そのもとになった戸籍のことをいいます。
一般的に原(はら)戸籍や、原(げん)戸籍と呼ばれます。
前述の除籍謄本とともに、被相続人の出生から死亡までの戸籍を集める際に、必ず出くわし、取得する必要があります。
11.戸籍の附票とは?
前述のとおり、戸籍と住民票はまったく別ものになります。
ただ、それでは戸籍に記載されている人の住所と戸籍とを関連づけることはできません。
そのために、「戸籍の附票」があります。
この戸籍の附票には、住所の変遷が記録されます。
戸籍の附票も、戸籍と同じように本籍地で取得できます。
12.戸籍の手数料は?
発行手数料としては、1通あたり以下のとおりです。
戸籍謄(抄)本・・・450円
除籍謄本・・・750円
改製原戸籍謄本・・・750円
13.無料になる場合がある?
国民年金や厚生年金の受給のために戸籍を年金事務所に提出する場合は、交付手数料が無料になります。
その際、提出理由や提出先の年金事務所を申請書に記載する必要があります。
交付された戸籍には「年金用」と書かれた赤いスタンプが押されます。
14.郵送にかかる日数は?
転籍などにより、本籍地が遠方となってしまうこともよくあります。
その場合は戸籍を郵送で取得できます。
発送してから手元に届くまでは送付先にもよりますが1週間から10日はかかりますので、余裕を持った対応が必要になってきます。
急いでいる事情があれば、速達(もしくはレターパックなど)での発送も必要になるでしょう。
15.戸籍謄本の有効期限は?
相続手続きで戸籍謄本を提出する場合、その有効期限を設けているているところがあります。提出先により、具体的な期限は異なるので、事前に確認しておくことをオススメします。
詳しくは<戸籍謄本には有効期限はある?>