兄弟姉妹の戸籍謄本は請求できるか?

相続手続きの際には、当たり前のように戸籍謄本が必要になってきますが、戸籍を法務局や裁判所に提出するのであれば、一定の専門家が職務上において職権で取得することができます。

しかし、専門家に頼らずご自分で相続手続きをする場合は、この戸籍謄本を取得する作業に非常に苦労するのではないでしょうか。

1.戸籍謄本を請求、取得できる範囲

まず、本人(自分)の戸籍以外に、委任状や特別な理由なく無条件で戸籍を取得できる範囲は以下になります。

◆配偶者

◆直系専属(親、祖父母)

◆直系卑属(子、孫)

これらの者の戸籍を請求し取得することは、当然の権限として、無条件に認められます。

そのため、ここまでは比較的スムーズに取り進めることができるでしょう。

しかし、これらの者以外の戸籍を取得するのが難題となります。

2.兄弟姉妹の戸籍は取れない?

相続手続きにおいては、相続人がだれであるかを法務局や銀行などの提出先に証明する必要があるため、まずは相続人を調査し、確定させる必要があります。

ここで、兄弟姉妹の戸籍はどうするか。

相続人の中に兄弟姉妹がいれば、当然、その兄弟姉妹の戸籍も必要になってきます。

さらに、その兄弟姉妹が被相続人よりも前に死亡していた場合は、代襲相続が発生しているため、代襲相続人(兄弟姉妹の子)がだれであるか、を証明するためにその兄弟姉妹の出生から死亡までのすべての戸籍が必要になります。

 

詳しくは<だれが法定相続人となるか?その法定相続分は?>

 

しかし、この兄弟姉妹の戸籍の取得が一番、時間と手間を要するのではないでしょうか。

もっとも、兄弟姉妹が未婚などで親の戸籍に載っているのであれば、前述のとおり親の戸籍は無条件で取得できるため、親の戸籍を取れば問題ありません。

親の戸籍を取っていけば、必然的に兄弟姉妹の戸籍の記載情報を容易に取得することができます。

しかし、婚姻などで親の戸籍から除籍されている場合はかなり面倒になってきます。

前述のとおり無条件で戸籍を取得できる範囲に兄弟姉妹のものは入っていません。

兄弟姉妹の戸籍を取得する権限がない、となると・・・。

3.兄弟姉妹の戸籍の請求、取得

上述のとおり、兄弟姉妹の戸籍は当然には請求できません。

たとえ兄弟姉妹であっても、それらの者の戸籍を取得することは、赤の他人が取得するのと同じことになります。

これを「第三者請求」といいますが、相続においてはすべての戸籍が必要になりますので、どうにかしなければなりません。

以下では、兄弟姉妹の戸籍を取得する方法を順にご紹介します。

①兄弟姉妹自身に取ってもらう

まずは兄弟姉妹に依頼して自ら取ってもらうことです。

この方法が一番手っ取り早いです。

ただ、依頼することができない事情があったり、仕事で忙しいなどで兄弟姉妹に取ってもらうことが難しいのであれば、次の②以降の方法によります。

②直系尊属に取ってもらう

上述のとおり、直系尊属である親や祖父母であれば、その子や孫の戸籍は無条件に取得できますので、子である兄弟姉妹の戸籍を取ってもらうことができます。

③委任状をもらう

直系尊属もすでに亡くなっている、となると、次は兄弟姉妹に戸籍取得のための委任状をもらう方法です。

委任状をもらうことができれば、「代理人」として請求できます。

委任状には最低限、以下の事項を記載しておけば問題ありません。

 

◆受任者の住所、氏名

受任者とは委任を受ける人、代理する人です。

◆委任事項

委任する事項を記載します。

戸籍謄本の取得についての委任であれば、以下の内容を書いておけば大丈夫です。

・「筆頭者」と「本籍地」を記載して取得する戸籍を特定する(だれの、どこの本籍地の戸籍を取るか)

・筆頭者と本籍地を特定したうえで、「その戸籍の請求、受領のための一切の件」と記載

◆請求通数

◆使用目的、提出先

申請書にも記載することになりますが、念のため記載しておく方が無難です。

◆委任状作成年月日

◆委任者の住所、氏名、押印

委任者とは代理を頼む方で、戸籍に記載されている兄弟姉妹のことです。

押印は実印である必要はありません。認印でも大丈夫です。

 


 

<委任状記載例>

 


 

④正当な理由がある

紛争化しており、兄弟姉妹に頼むことが一切できない、直系尊属もいない、といったケースもありますが、その場合でも取得できる方法があります。

それは、第三者請求により戸籍を取得することについて「正当な理由」があり、それを役所の担当者に具体的に示すことができれば、第三者であっても取得できます。

相続手続きのために戸籍を取得する必要があるのであれば、まぎれもなく「正当な理由がある」といえます。

戸籍取得に正当な理由があるものとしては、以下が代表的です。

◆不動産の相続登記に必要な場合

◆預貯金解約、名義変更に必要な場合

◆遺産分割協議のため、相続人を確定させる必要がある場合

これらの事情がある旨を役所の担当者に明確に説明し、そのための資料もそろえ、納得してもらうことができれば委任状がなくても兄弟姉妹の戸籍を取得できます。

請求書には以下の内容を具体的に示す必要があります。

・自分が相続人となっている経緯(だれが死亡し、どういう相続関係か)

・なんの手続きを行うのか、なぜその戸籍が必要なのか(第三者請求する理由)

・提出先(○○銀行○○支店、●●法務局●●支局など)

4.まとめ

以上、兄弟姉妹の戸籍謄本の取得方法を解説しました。

これらの方法によれば基本的に兄弟姉妹の戸籍謄本を取得できます。

「取得できない」

「役所が発行してくれない」

といった場合は、何らかの要件を満たしていないか、説明不足、参考資料の不足が考えられるため、その際は専門家に相談することをオススメします。

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