相続人の調査方法、手順、ポイント

遺産分割をはじめ、相続手続きにおいては相続人全員の関与が必要となります。

そのため、まずは相続人を確定させる必要があるので、被相続人の戸籍謄本を取得することからはじまります。

1.どの戸籍が必要か

相続が開始後、まずは被相続人の出生から死亡するまでの戸籍謄本を集めることになります。

 

詳しくは<被相続人の出生から死亡までの戸籍ってどういうこと?>

 

隙間なく一連としてつなげることによって時間的空白を埋め、被相続人の出生や婚姻などの身分関係を確認し、すべての相続人を調査、確認していきます(基本的に出生からのものが必要ですが、手続きや提出先によっては12歳くらいからで問題ない場合もあります)。

なお、戸籍謄本、戸籍抄本の違いをよく聞かれますが違いは以下のとおりです。

「戸籍謄本」・・・戸籍に記載されているすべての者の身分事項が記載されているもの

「戸籍抄本」・・・戸籍謄本の一部の人を抜粋したもので、戸籍に記載されているある特定の人の身分事項を記載したもの

2.取得方法、手順

手順としてはまず、死亡時の本籍地の役所・役場で死亡の記載ある戸(除)籍謄本を取得し、そこからさかのぼって出生までの戸籍を取っていきます。

取得した戸籍には、従前の本籍地の記載がありますので、さらにその自治体に請求します。

これを出生に至るまで繰り返していくのです。

転籍、除籍を何度となくしている被相続人だと、本籍地がそれこそ日本全国どこにでも及ぶ可能性があります。

役所の窓口までその都度取りに行くことは現実的ではないので、次のものを同封して郵送で取得することができます(ただし、役所によっては追加で書類が必要になる場合があります)。

◆申請書(請求書)

住所氏名のほか、取得理由や、請求者と被相続人との関係性を記載します。

申請書(請求書)は、各自治体のホームページにてダウンロードできます。

◆戸籍謄本のコピー

請求者と被相続人との関係性を証明します。

◆切手を貼った返信用封筒(不足分は受取人払いで)

◆請求者の身分証明書のコピー

◆現金の代わりとして定額小為替(ていがくこがわせ、郵便局で購入できます)

定額小為替に不足が生じると追加で送る手間がかかりますので、はじめから多めに入れておくのが無難です。

なお、定額小為替の購入に際し、別途、1枚100円の手数料がかかります。

たとえば、450円の定額小為替を購入しようとした場合、550円が必要になります。

 

詳しくは<戸籍を郵送請求する場合の定額小為替ってなに?購入方法は?>

 

3.存在しない本籍地

本籍地を追っていると、今現在は存在しない地名、本籍地も出てきます。

その理由は「市町村合併」です。

合併によって、以前の地名が消滅したり、新たに変わったりといったことは全国的に行われています。

したがって、今現在の地名と当時の地名が異なることはよくありますので、その本籍地に書かれている地名が今どこの自治体なのかを調べる必要があります。

4.取得不可能な戸籍

さかのぼって取得する過程で、なかには戸籍の保管期間満了により廃棄処分されているものや災害・戦災などにより焼失・滅失したものもあります。

またレアケースですが、樺太の戸籍などは取得方法が通常とは異なります。

樺太は現在、日本の主権が及ばない場所なので、樺太に日本の役場はありません。

もっとも、戸籍を一切取得できないわけではなく、実は樺太の戸籍の内、特定の6つの村の戸籍については外務省で保管、管理しており、担当窓口に請求し取得することができます。(外務省ホームページ)

ただ、その6つの村以外の戸籍は保管されていないため取得することはできません。

請求しても、「保管されていない旨の通知」がなされるのみです。

5.戸籍の読み込み

戸籍の取得後は、その戸籍の読み込み作業に移ります。

ただ、昔の戸籍は当然コンピューター化されていませんので、担当者の手書きで書かれていたわけですが、難解な字や達筆すぎて読めない字で書かれているものが多くあり、慣れていなければ専門家でも判読、識別が困難な場合もあります。

どうしても判読できない場合はその戸籍を発行した役所に問い合わせると教えてくれる場合もあります。

取得した戸籍を読み込み、相続人を漏れなく調査していきます。

子がいなければ父母が、父母(もしくは祖父母)がすでに亡くなっている場合は兄弟姉妹が、その兄弟姉妹が被相続人より先に死亡している場合はその子(つまり甥姪)が、相続人となります。

相続権が第2順位、第3順位といくにしたがい、必要な戸籍がさらに増えていきます。

 

詳しくは<相続手続きの戸籍、どこまで必要?いくらかかる?>

 

配偶者は常に相続人です。

1人でも相続人が漏れていると全ての手続きを取ることができません。

6.順位が下るごとに必要な戸籍が増え、手間もかかる

すでに親(祖父母含む)が亡くなっていると、第3順位である兄弟姉妹相続になります。

そこまでいくと親の出生から死亡までの戸籍も必要になります。

さらに、兄弟姉妹が先に死亡していれば、その子(甥、姪)が相続人になるため、その兄弟姉妹の出生から死亡までの戸籍も必要になります。

ここまでいくと取得すべき戸籍は相当な数になり、片手では持てないほどになります。

また、本籍地が遠方であれば、基本的に戸籍は郵送で取得することになるでしょう。

①戸籍を請求②その郵送物が届くのを待つ③戸籍を調査する④また該当の本籍地の役所に郵送する、といったことを繰り返していくため、一定の時間をついやします。

加えて相続人全員の現在の戸籍も必要になりますので、慣れていなければそれらをすべて漏れなく取得するために相当な労力、根気、時間を要します。

また、海外に在住している相続人がいると、「そもそも戸籍が取得できるのか」「取得できる場合はどうすればよいのか」など、さらに手間が増える可能性もあります。

 

詳しくは<海外在住の相続人の戸籍は取れる?>

 

7.だれの戸籍でも無条件に取れる?

戸籍を請求し、取得できるのはその戸籍に記載されている者(自身や配偶者)か、直系親族(親、子など)に限られます。

したがって、兄弟姉妹や甥姪の戸籍を取得するには別途それらの者の委任状(もしくは正当な理由)が必要になります。

 

詳しくは<兄弟姉妹の戸籍謄本は請求できるか?>

 

なお、弁護士や司法書士は職務上必要な範囲内において、職権で戸籍や住民票を取得することができるため、委任状は不要です。

8.まとめ

相続人を確定されるには、まずは戸籍謄本を取得する必要があります。

以上のように必要なすべての戸籍を取りながら、戸籍を読み込みます。相続人を確定させてからが相続手続きの始まりといえます。

労力、時間を使い、調査も非常に根気のいる地味な作業ですが、法定相続人が確定しなければ、法定相続分も算出できません。

相続手続きにおいて一番大事な部分、要でもありますので、間違いは許されません。

◆どこまで戸籍を取ればよいか

◆この戸籍上、相続人はだれか

◆戸籍に見慣れない記載がある

など分からないところがあれば専門家に相談することをオススメします。

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