1.信託財産の選択は自由
家族信託は、自分の財産を信頼できる人に託して管理、運用などをしてもらい、自分のためにはもちろん、家族のためにも使うことができる制度です。
そのため、まずは信託する財産がなければ始まりません。
この信託する財産のことを「信託財産」といいますが、
・全財産を信託しなければならないのか
それとも
・どの財産を信託するかを自由に選択できるのか
ですが、どの財産を信託して管理などを任せるかは、信託契約で自由に定めることができます。
金銭のみ、または不動産のみを信託したり、当然どちらも信託することもできます。
たとえば、不動産だけを信託しておき、現金・預貯金は手もとに置いておいて自分で自由に使うこともできますし、1000万円のうち、300万円だけを信託財産とすることもできます。
信託していない財産については、遺言書を書いておいて特定の人に相続させることもできます。
個々の事情に沿った、柔軟な設計、取り決めができるのです。
その点、成年後見制度とは異なります。
成年後見制度は、成年後見人が被後見人のすべての財産を一括で管理していくことになります。
2.第三者の関与が必要になる場合も
なお、信託するにあたり、第三者の関与を必要とするケースがあります。
たとえば、借地権(※)を信託する場合です。
(※建物所有を目的とした地上権または賃借権のこと)
借地権も財産権なので、信託財産として託すことができますが、信託行為は借地権の譲渡にあたります。
そして、この借地権が「賃借権」の場合には地主の承諾が必要になります(借地権が地上権の場合には地主の承諾なく自由に処分可能です)。
場合によっては承諾料・名義書換料を支払う必要があります。
3.株式を信託する場合は注意
対応している証券会社は少ないですが、株式を信託することも可能です。
株式を信託する場合に注意する点があり、それは「株主優待」の問題です。
株主優待とは、株式を一定期間、一定株数保有している株主に対し、その企業が自社製品、自社サービスなどを優待券、という形で提供することです。
では、株式を信託すると、どうなるか。
委託者の証券口座から受託者の信託口証券口座に移管されます。
当然、株主名簿も書き換えられる。
その結果、委託者の株式保有期間がリセットされ、優待が受けられなくなる可能性があります。
株式名義人が変更しているため、保有期間も最初からスタートする、ということです。
4.まとめ
家族信託は、委託者(信託を頼む人)と受託者(信託を頼まれる人)の契約なので基本的には自由に設計できます。
「なにを信託財産とすべきか」
「なにを維持、管理、運用して欲しいのか」
は信託の目的に沿って、財産の規模や資産承継なども考慮して当事者の自由な判断のもとで決めればよいのです。