遺言書に将来取得する予定の財産まで含めることはできるか

1.将来、取得する財産は遺言書に書けない?

遺言書を書いておく方が増えてきました。

遺言書作成のご相談もよく受けるのですが、たまに、

「将来、取得する予定の財産についても(遺言作成時に所有していない財産についても)遺言の対象とすることができるのか」

というご質問を受けることがありますが、将来、取得予定の財産も遺言の対象財産とすることは可能です。

遺言書作成時に有していない財産を書いておく。

その方が遺言者の最終意思を尊重することにもなりますし、相続対策にも有用です。

2.遺言書の記載はどうなる?

その場合の遺言書の記載例ですが、基本的には以下のように書くとよいでしょう。

将来、取得予定の財産を特定しない遺言書の記載例

将来、取得予定の財産を特定できないのであれば、以下のような包括的な記載方法をしておきます。

「その他遺言者が有する一切の財産(将来取得する財産も含む)」

特定可能な財産(自分の不動産や預貯金など)を書いた後に、この文言を入れておきます。

将来、取得予定の財産を特定した遺言書の記載例

遺言書作成時点で将来、取得する財産がどのような財産なのかを特定できるのであれば、特定しておく方が望ましいです。

なぜなら、遺言執行は当然、遺言者本人以外の者がすることになるため、財産を特定していた方が執行手続きをしやすい、という利点があるからです。

特定できるのであれば遺言執行者のためにも特定しておくことが親切です。

たとえば、将来不動産を取得する予定であれば、以下のようにその不動産を特定しておきます。

「遺言者は、遺言者が下記不動産を将来、取得していたときは同不動産を長男〇〇に相続させる」

<不動産の表示> 略

また、将来、自分の土地上に建物を建てる(建て替える)のであれば、以下の要領で記載します。

「遺言者は、遺言者所有のA土地上にあらたに建物を建築、取得していたときは同建物を遺言者の長男〇〇に相続させる」

将来、相続予定の財産を特定した遺言書の記載例

夫婦が相互に遺言書を書く場合、夫婦であれば将来、相続する財産がある程度予測できるため財産を特定しやすいでしょう。

たとえば、妻が将来、夫(遺言作成時には生存している)から相続する財産をだれかに遺贈する、といった場合は以下のようになります。

「遺言者は、遺言者の夫〇〇が死亡した場合に夫〇〇から相続することになるA土地については、遺言者の孫◇◇に遺贈する」

未分割の財産も加えた遺言書の記載例

遺産分割を終えていない場合、その未分割の財産についても遺言書に加えることができます。

その場合の記載例は以下のようになります。

「遺言者は、遺言者の亡父〇〇の遺産について遺言者が有する相続分(共有持分の場合は持分全部)を、遺言者の長男◇◇に相続させる」

3.特定したのに取得しなかった場合は?

遺言書に特定しておいたものを結局取得しなかった、できなかった場合はどうなるのか。

たとえば、遺言作成時にはA土地を所有していない者が、将来A土地を取得するものと思って、あらかじめ遺言書にもA土地のことを盛り込んでいた。

しかし、遺言者はA土地を取得することなく死亡した、といった場合は、A土地の記載部分については遺言は撤回したとみなされます(それ以外のほかの部分は有効です)。

また、遺言で将来、取得予定の財産を特定したところ、遺言に書いた財産を超えて取得した場合は、超える部分については遺言の対象外となる可能性があるため、書き方には工夫が必要です。

4.まとめ

将来、取得予定の財産を含めた遺言は認められます。

もっとも、その書き方が曖昧、不十分だと、いざ遺言執行の場面になったときに判断に迷うことがありますし、内容の解釈をめぐって相続人の間でトラブルに発展するおそれもあります。

せっかく遺言を書いたのに、

「この書き方では手続きができない」

「遺言内容を実現できない」

「書かれている内容がよく分からない」

といったケースも起こりえますので、特殊な条項を盛り込みたい場合は専門家に相談することをオススメします。

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