遺言書が読めないときは

相談事例

母が先月亡くなりました。

母は自筆証書遺言を作成しており、この度、家庭裁判所の検認手続きにあたり遺言書を開封したところ、本文が乱筆で読み取ることが困難です。

この場合、遺言書は無効になってしまうのでしょうか?

1.筆跡鑑定、科学鑑定

自筆証書遺言の場合、当然、人間が書くものですので、その人物の文字の癖など書き方に特徴があらわれますし、高齢や病気により書字行動が不自由となりうまく書けなくなる場合もあります。

また、基本的に自筆証書遺言は自宅で保管されていますので、保管の環境や保管されていた年月、紙の材質やインクの程度、筆圧などの影響で劣化し物理的に判読できなくなるケースが少なからずあります。

乱筆で文字自体が判読できない場合は専門家に筆跡鑑定を依頼する方法があります。

遺言者が生前に書いていた手紙など何かしらの文書、いわゆる筆跡資料と判読できない文字とを照らしあわせて判読していく方法です。

筆跡資料は遺言書が書かれた日付にできるだけ近い日付のものがよいです。人の文字は年齢によって変化するからです。

全く読めないほどの乱筆でない限り、専門家よって判読可能となるでしょう。

経年劣化による摩耗などで物理的に判読できない場合は科学的な鑑定で判読できる可能性があります。

2.全く判読できなければ無効

鑑定によっても全く判読できなければ、その部分については無効となる可能性があります。

遺言者の最終意思を確認することができないからです。

あくまで判読不能の部分のみが無効となり遺言書全体として無効とはなりません。

なお、相続人全員の合意を条件に、書かれている内容を推察して有効としてしまう方法(場合によっては遺言書の内容と同一の遺産分割協議を行う)もあり得ますが、紛争の元になる可能性があります。

やはり、まずは鑑定人や法律家など第三者に関与してもらうべきでしょう。

3.故意に破棄、改ざん、判読不能にしたら

遺言者本人が故意に破棄したり読めなくした場合はその部分について撤回したとみなされますので、問題になることはありません。

 

詳しくは<遺言は取り消せる?撤回方法は?>

 

4.まとめ

遺言書が判読困難な場合は、相続人や受遺者で勝手に判断せず、間違った認識、理解を防ぐためにも専門家に鑑定してもらうべきです。

ただ、鑑定にあたり、受遺者に指定されていない相続人、不利になる相続人が、鑑定人の人選や鑑定結果を巡って争ってくる可能性があります。

そのような紛争可能性があるのなら、裁判所に遺言内容の確認訴訟を行い、裁判所の鑑定依頼に基づいて選任された鑑定人によって裁判手続き上で鑑定してもらうことが最善です。

関連記事