自筆証書遺言を作成した後に頭を悩ませるのが、その保管場所ではないでしょうか。
家族に分かるように保管すれば、改ざんや紛失のリスクがありますし、だれにも発見されないようなところでは、「発見されないまま遺産分割がされてしまった」といったことになりかねません。
「改ざんのリスクなどを考えると簡単には見つからない場所がいいけど、かと言って見つからないでは困る」ということが一番難しいのです。
以下では、一般的な保管場所を紹介しますのでご参考にしてください。
1.自宅の中
自筆証書遺言を書いた後、とりあえず自宅の中で保管、を検討するのではないでしょうか。
では、自宅のどこに保管するか。
一般的には以下の場所があります。
・仏壇の中
・机の中
・タンスの奥
・金庫の中
・権利書と一緒に綴じこむ
2.銀行の貸金庫に預ける
家に置いておくのが不安である。
当然、そう考える方もいると思います。
そのような方が次に思いつく保管場所が金融機関の貸金庫の中に入れておくことです。
盗難のリスクがないですし、改ざん、紛失も防ぐことができます。
ただ、死後発見されないといったリスクも少なからずあります。
また、基本的に相続人全員の立ち合い(関与)がなければ貸金庫は開扉できません。
詳しくは<貸金庫の相続>
3.専門家に預ける
弁護士、司法書士など、遺言書作成に関わった専門家に預けておく場合もあります。
ただ、事務所によっては「保管料」が発生する場合があります(なお、当事務所では保管料はいただいておりません。無料で保管いたします)。
遺言の効力発生後は、遺言書を保管している専門家がそのまま遺言執行を行うこともあります。
4.法務局に預ける
遺言書保管制度(2020年7月10日施行)を利用して、法務局にて保管してもらう方法です。
詳しくは<法務局で遺言書を保管してくれる?遺言書保管制度とは>
5.公正証書遺言でも保管場所の検討が必要?
公正証書遺言の場合はどうか。
公正証書遺言の原本については公証役場に保管されますが、「正本」と「謄本」は遺言者に交付されます。
原本が公証役場に保管されるため改ざんリスクや紛失リスクはゼロですが、正本などは手元にあるわけです。
つまり、生前に相続人などに見られてしまい、その内容が分かってしまう可能性があるのです。
そのため、遺言書の内容を生前に知られたくないのであれば、家族の目につきにくい場所に保管しなければなりません。
公正証書遺言だからといって、その保管場所についてまったく考えなくてよいわけではないのです。
公正証書遺言作成をサポートした専門家や遺言執行者に預けておくケースが一般的です。
6.まとめ
遺言書の保管場所をどこにするかは難問です。
実際に遺言書が必要となってくるのは自分の死後のことなので、相続人などの関係者に「見つからない」といったことは避けなければなりません。
保管場所は「ココ」といった正解があるわけではありませんが、周辺環境や周囲の状況などを考慮して、最善、最適な場所を決めるべきです。
あらかじめ信頼できる人に伝えておくことも選択肢に入るでしょう。