通夜や葬儀の際に参列者から香典をいただくことがありますが、この香典は被相続人のものとして相続財産になってしまうのでしょうか。
仮に相続財産となると、遺産分割の対象になり、相続税の計算においては遺産総額に加える必要があります。
1.香典は相続財産となる?
香典は相続の発生に伴って受け取るものです。
ただ、もらうのは相続人です。被相続人が受け取ったわけではありません。
したがって、相続財産とはなりません。
この場合、香典は相続人への「贈与」として扱われます。
したがって、相続税の問題は起きません。
また、香典はその性質や目的、慣習の点から、課税対象とすることにはなじまないため贈与税の対象には基本的にはなりません。
ただし、特定の人物からの香典が常識の範囲を超えるほどの高額になっていれば、その者からの香典に対しては贈与税がかかる可能性もあります。
2.香典はだれがもらえるか
では、相続人への贈与だとして、実際にその香典をもらえる者はだれになるのでしょうか。
基本的に喪主か、相続人全員の共有になるか、が考えられますが、喪主の財産となるのが一般的です。
もっとも、相続人間の協議により、たとえば法定相続分で分けることもできますし、喪主ではなく、葬儀を実際に取りまとめた相続人が多く取得する、といった取り決めもできます。
3.香典は何に使えるか
香典は、基本的に香典返しのためや葬儀費用に充てるために使われることが想定されますし、実際にもそうなのではないでしょうか。
それらに充てた結果、それでも香典が余ったとしても、相続財産ではないため遺産分割の対象にはなりません(もっとも、相続人全員で協議することまでは否定されません)。
なお、香典返しは相続税の計算において遺産総額からの債務控除はできません。
4.まとめ
香典は相続人(喪主)に対する贈与にあたり、相続財産に含める必要はありません。
また、贈与税もかかりません。
しかし、社会通念上認められないほどの高額になれば贈与税がかかる可能性もありますので、要注意です。
香典を巡って相続人間で争いが起こることはあまり考えられませんが、仮に争ってくる相続人がいれば、相続財産ではないことを明確に主張することが必要になります。
そのため、最低限の対策として香典の額、香典返しについては詳細に記録しておくことをオススメします。