死後の事務を任せたい場合は?死後事務委任契約

1.死後事務委任契約とは

人が亡くなると、様々な手続きが必要になってきます。

名義変更などの相続手続きが代表例ですが、何もそれだけではありません。

たとえば、役所に対する死亡届からはじまり、年金手続きや医療費、葬儀費用などの支払い、公共料金や携帯電話など各種契約の停止・解約、知人や親族への死亡連絡など多くの事務作業が必要になってきます。

それらの手続きは基本的に、身近な家族、親族が執り行うことになります。

しかし、「自分が死んだ後のことはどうしよう」と不安になることがあるかもしれません。

たとえば、

◆家族が高齢で任せられない

◆家族に負担をかけたくない

◆そもそも身寄りがいない

このような場合、生前に「死後事務委任契約」を結んでおくことで、将来の不安、心配事を軽減することができます。

死後事務委任契約は、生前に、自らの死後に発生する各事務手続きを行ってくれる人と委任契約を結び、相続発生後は、その委任契約にしたがって、各種手続きを執り行うことを内容とする契約です。

死後の事務手続きを行ってくれる人を生前に、自らの意思であらかじめ選んでおくのです。

2.死後の事務とは

死後に必要となる事務の例としては、以下のものがあります。

 

◆役所への各種届出に関する事務

◆葬儀、火葬、埋葬に関する事務

◆公共サービス(電気ガス水道など)への届出、解約に関する事務

◆その他親族や勤務先、所属団体など関係先への連絡、通知に関する事務

 

これらはほんの一例に過ぎません。

実際に行わなければならないことは、まだまだありますし、それらの届け出先、手続き先も様々です。

 

詳しくは<死後に必要となる手続きの届け出先一覧>

 

これらの事務手続きは、一般的には家族が執り行いますが、身寄りのない方や、いても家族に任せられない方は、死後事務委任契約を生前に結んでおくことにより、委任された者が自分の死後、滞りなく各種事務手続きを行ってくれます。

契約内容は生前であれば変更することはできますが、死後は当然ながら変更できませんので、変更の必要がないように、何の事務を行うのかについては可能な限り広く、詳細に盛り込んでおくことです。

契約内容を決めるにあたっては依頼者へのヒアリングが重要となり、確認すべき事項が多くあるので打ち合わせを重ねる必要があります。

 

詳しくは<葬儀は?ペットは?死後事務委任契約で確認すべきこと>

 

3.委任する相手は

実際に死後の事務をしてくれる人、委任する相手はだれでも構いません。信頼を置ける人に委任したり、司法書士などの専門家に委任することもできます。

基本的にはだれでも構いませんが、ただ、わざわざ死後事務委任契約を結ぶということは、専門家を念頭に置いていることが普通でしょう。

加えて、死後事務は基本的に事務量が多く、煩雑であるため、専門家に委任する方がスムーズに、迅速に終わるのではないでしょうか。

確実に事務を行ってもらうためにも、専門家に委任する方が安心でしょう。

4.委任契約は公正証書で

委任契約自体は口頭でも成立します。

しかし、それでは、実際に死後に手続きをしようにも、「本当にあなたは故人から委任されたのか?」といったことになってしまいます。

口頭での契約では委任契約内容を何も証明できないため、事務を行うことが事実上困難になります。

したがって、正式に契約書を作成しておくことは必須です。

さらに、委任契約書は公正証書で作成しておくことをオススメします。

公正証書は公証人の関与のもと作成されるため安心感がありますし、委任事務の範囲や委任者の報酬、委任契約が解除されるケースなどを明確に定めておくことにより当事者はもちろんのこと、相続人とのトラブル防止にもなります。

公証役場の手数料は1万円数千円ほどなので、費用面では手軽に作成することができます。

5.遺言執行との違いは

死後事務と似たようなものとして、「遺言執行」があります。

遺言執行を行う者を遺言執行者といいますが、この遺言執行者は遺言で指定されるか、または家庭裁判所で選任されます。

 

詳しくは<遺言を実現させる遺言執行者とは?そのメリットや権限>

 

そして、遺言執行は、遺言に書かれている内容を実現するために、財産の承継手続きなどを行うことで、あくまで法定の遺言事項、遺言内容について権限を行使し、義務を負います。

遺言書には、通常は「誰々に何々をあげる」など、財産についてが書かれることが一般的です。

そのため、たとえば葬儀の執り行いや、火葬埋葬などの手続き、知人、友人、職場など関係先への連絡などもろもろの事務作業については、法定遺言事項ではなく、また、一般的に遺言に書かれるような事項でもないため、遺言執行者の業務の射程外になります。

遺言執行者が死後事務までを当然に行うわけではありません。

そのため、遺言のなかで遺言執行者を指定している場合であっても、別途、死後事務委任契約を結んでおく実益があり、効果的でもあるのです。

当然、遺言とセットで死後事務委任契約を結んでおくことも可能です。

その際、遺言を公正証書で作成し、あわせて委任契約書も公正証書で作成しておけばよいのです。

名義変更などの相続手続きは遺言執行者に任せ、その他死後の事務手続きは、死後事務委任契約の受任者(委任を受けた人)に任せることができます。

また、遺言執行者を死後事務委任契約の受任者にもしておけば、その人に一切の手続きを任せることもできます。

その場合は、より専門性が伴い、難易度も増すので司法書士などの専門家に依頼することをオススメします。

6.まとめ

だれも身寄りがいないなどで、自分の死後に発生する様々な事務を任せられる人がいない場合は、生前に死後事務委任契約を結んでおくことをオススメします。

生前に結んでおくことで、将来の不安、心配事を軽減できるのではないでしょうか。

どのような事務ができるか、契約に盛り込むにあたって必要なものが漏れないよう、不十分な事務とならないよう契約内容は完璧に仕上げましょう。

ただ、何が必要で、何が不要なのか。

契約内容については検討すべき点が多いため、まずは専門家に相談することをオススメします。

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