相続法、結局どのように改正された?自分への影響は?

この度、相続法が大改正されましたが、その改正によって実際に自分にどのような影響があるのかイメージしにくいのではないでしょうか。

以下に、改正されたもののうち、身近に影響がありそうな部分に絞って、簡単にそのポイントをまとめてみました。

夫が亡くなった後も自宅に住める?配偶者居住権の創設

この配偶者居住権により、夫(妻)が亡くなった後も配偶者である妻(夫)は、ある程度のお金を相続でき、かつ、そのまま自宅に住むことができることになりました。

改正前までは、配偶者が自宅の所有権を相続してしまうと、自宅の評価だけで自己の取り分を満たしてしまい、自宅以外の残りの遺産(預金など)を相続できる分が少なくなってしまうことがありました。

「住むところはあるが、生活費がない」といったことが起きていました。

それでは残された配偶者の保護に欠けてしまいます。

そこで、改正により、所有権とは異なる「居住権」という権利を規定し、配偶者の保護を図っています。詳しくは<配偶者はそのまま住み続けられる?配偶者居住権とは>

立替えなくてもよい?遺産分割前の預貯金の払い戻し

改正前は、遺産分割を終えるまでは被相続人の口座から払い戻しを受けることができませんでした(自己の法定相続分に相当する部分であっても)。

そのため、被相続人の葬儀費用や、扶養を受けていた者の生活費その他必要な費用を相続人が一時的に立替る場面が多くありました。

改正により、遺産分割前の預貯金の払い戻し制度ができました。

この制度により、一定の金額を家庭裁判所の関与なく、迅速に払い戻しを受けることができるようになりました。詳しくは<遺産分割が終わるまで預金を引き出せない?遺産分割前の預貯金の払戻制度>

遺産分割の成立前であっても、たとえば扶養を受けていた相続人が、一定額の払い戻し受けることにより当面の生活費に困るといった事態をある程度は回避できます。

介護の苦労が報われる?特別寄与料

たとえば、夫の妻が、夫の親(義父母)の介護に尽くしたとしても、妻は義父母の相続人ではないため、金銭的な見返りを求めたとしても基本的に遺言や生前贈与によってしかその労に報いることができませんでした。

また、以前から「寄与分」という制度がありますが、これは相続人のみが対象の制度です。

そこで、療養看護などの労務を提供し、被相続人の財産の維持増加に貢献した親族は、特別の寄与料を相続人に請求できることになりました。詳しくは<義父母の面倒をみたが相続権はない?特別寄与料とは?>

この寄与料が具体的にいくらになるかは、まだできたばかりの制度であるため、今後の実務上の運用や事例の蓄積によるところです。

ただ、請求ができることにはなりましたが、納得のいく金額をもらえるかどうかは別の話しになります。

従来からある寄与分のケースですが、過去の判例をみても、そもそも寄与分が認められること自体が難しく、また、認められたとしても遺産の数%、金額でみても、多くても100万円、200万円のレベルです。

したがって、この制度ができたからといって、自分の期待した、希望の金額を受け取れない可能性もあります。

配偶者の保護が厚くなった!持ち戻し免除の意思表示の推定

改正により、一定の条件のもと、被相続人が生前に配偶者に対し居住用の不動産を贈与した場合、その贈与分については遺産の先渡しとならず、後の遺産分割に含める必要がなくなりました。

これを「持ち戻し免除の意思表示の推定」といいます。詳しくは<特別受益とは?なにが特別受益にあたる?>

改正前までは、配偶者に自宅を贈与した場合、その贈与分については遺産の先渡しがされたとして遺産分割の際に、原則、配偶者の相続分が調整されていました。

これを「持ち戻し」といいます。

つまり、その贈与分を考慮して、配偶者の取り分が減ることがあったのです。また、それを巡って相続人間で争続となる場合がありました。

原則は持ち戻しされますが、被相続人が生前にまたは遺言で、この持ち戻しを免除する意思表示をしておけば、遺産の先渡しにはあたらないとしていました(したがって、特別受益を理由に配偶者の取り分が減ることはありません)。

しかし、必ず免除する「意思表示」が必要になりますが、その意思表示がされないことも珍しくありませんでした(むしろ、被相続人がその制度を知っていることはまれでしょう)。

それでは長年連れ添った配偶者の保護に欠けるということで、改正により、婚姻20年以上などの要件を満たせば、被相続人が特段、持ち戻し免除の意思表示をしていなくても、免除したと推定され、贈与分を遺産分割に含める必要がなくなりました。

これは、税法上においては婚姻20年以上の配偶者への贈与について、夫婦間贈与の特例(おしどり贈与)がありますが、配偶者への特例(優遇規定)を民法上にも設けて、税法とのバランスを図ったものです。

紛失や改ざんの心配がなくなる?遺言書保管制度

自筆証書遺言は、自宅で保管するか、貸金庫などで保管することが多いですが、紛失や改ざんのおそれがあり、また、相続人に発見されないリスクもありました。

そこで、そのようなリスクを予防、回避するために、法務局で自筆証書遺言を保管してくれる制度ができました。詳しくは<法務局で遺言書を保管してくれる?遺言書保管制度とは>

注意点としては、法務局に保管されたからといって、その遺言書が有効であることを認定されたわけではありません。

その後、遺言書の解釈や有効性について相続人間でトラブル、紛争が起きる可能性もあります。

自筆証書遺言が簡単になった?財産目録の方式緩和

改正前は、自筆証書遺言は遺言者が全文を自書する必要がありました。

改正により、財産目録を添付した場合に限り、その財産目録については自書である必要がなくなり、ワープロ、パソコンで作成されたものも認められることになりました。

今までは財産目録、たとえば不動産の表示や預貯金の表示などは、全文を自書しなければならなかったため、誤記や脱字が起きやすい部分でした。

そこで、改正により、財産目録を添付する場合であれば、遺言者本人の自書である必要がなくなりました。

したがって、パソコンで作成された目録や、代筆により作成されたものも有効です。

また、不動産登記簿をそのまま添付する方法や、預貯金口座の写しを添付する方法も認められます。詳しくは<財産目録はパソコンで作成してもよい?自筆証書遺言の要式緩和>

お金で解決できる?遺留分侵害額請求

兄弟姉妹を除く相続人には最低限の相続分である「遺留分」が認められます。

改正前は、その遺留分を侵害された場合、侵害された相続人は、侵害した者に対して遺留分減殺請求を行い、対象財産の持分を取得して権利の回復を図っていました。

しかし、たとえば減殺請求の対象財産が不動産の場合に問題がありました。

減殺請求をした結果、持分を取得することになると、減殺請求権者と相手方の共有となっていました。

一般的に、不動産は共有状態は望ましくありません。

しかも、当事者は対立関係にあるといっても過言ではない関係です。それはトラブルの元でしかありませんでした。

そのような事態を避けるために、この度の改正により、遺留分侵害額に相当する金銭を請求できることになりました。

分けることが難しい不動産も持分ではなく、お金で解決できるため、将来の紛争予防にもつながります。詳しくは<お金で解決?遺留分減殺請求との違いは?遺留分侵害額請求権>

相続登記していないと?法定相続分を超える権利を相続した場合

不動産について、遺産分割や遺言などによって自分の法定相続分を超える権利を相続した相続人が、その超える権利を第三者に対抗するためにはその旨の登記を経ていることが必要になりました。

たとえば、長男Aに不動産を相続させる遺言があるのに、次男Bが遺言内容に基づいた相続登記がされていないことをチャンスと思い、自分の法定相続分を第三者に売却し、持分移転登記をしたとします。

遺言ですべてを相続したAとしては、当然、その第三者に「この不動産の権利はすべて自分のものだから返せ」といえると思い、返還請求をしたとします。

しかし、買主より先に遺言に基づいた相続登記をしていなかったために、Aは買主に権利を主張、対抗できないのです。

Aは遺言内容に沿った相続登記を迅速にしておくべきでした。詳しくは<早い者勝ち?遺言で不動産を相続したのに相続登記をしていないと・・・>

まとめ

身近な分野に絞ってこの度の相続法大改正を解説しました。

配偶者居住権の制度を筆頭に、はじまったばかりの制度であるため、これから様々な事例が集まっていき指針や実務上の具体的な取り扱いができあがっていくのではないでしょうか。

上手く利用することができれば、紛争予防が期待でき、手続きのスムーズ化も進むことでしょう。

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