相続人ではない者が参加した遺産分割は絶対に無効?

遺産分割協議には相続人全員が参加する必要があります。

1人でも不参加者がいれば遺産分割は絶対的に無効です。

では、逆に相続人ではない者が参加している場合はどうでしょうか。

その場合も絶対的に無効となるのでしょうか。

なお、参加とは、単にその場に同席しているだけではなく、遺産分割協議そのそもに参加し、遺産分割協議書に署名押印までしている者をいいます。

1.相続人ではない者とは?

相続人ではないのに、遺産分割協議に参加しているとはどういうことか。

それは、あたかも相続人のような外観(ふるまい)を有しているということです。

たとえば、

・相続人の配偶者

相続人である夫に代わって主導権を握っている妻が参加している場合などです。

・相続分の譲渡をしていた

相続分を譲渡すると、相続関係からは離脱します。

・相続放棄をしていた

相続放棄により、はじめから相続人ではなくなります。

 

他にも、実は認知されていなかった子、養子縁組無効確認の訴訟で養子縁組が無効と確認された者など、「相続人ではない」にもかかわらず遺産分割協議に参加しているケースです。

2.有効か無効か、の判断は?

前述のような無資格者が参加している遺産分割協議は絶対的に無効か。

実は必ずしもそうとは限りません。

有効・無効の判断は、相続人の資格のない者がその遺産分割にどれだけ関わっているかなど、その協議に与えた影響を考慮して判断します。

また、協議すべてを無効とする必要があるのかどうかも、考慮します。

たとえば、遺産分割協議の結果、相続人ではない者が相続財産の一部である不動産を取得し、預貯金関係は真実の相続人が相続したとします。

預貯金の部分は有効としても問題ないのではないか。不動産の部分だけ無効とすれば済むのではないか。

協議全体としては無効としない考え方です。

別途、その無資格者が取得した遺産(不動産)について本来の相続人だけで遺産分割協議をすれば済みます。

遺産分割協議全体を無効とする必要性はなく、「有効なところは有効なまま残しておこう」ということです。

これは、遺産分割が有効であることを前提として権利を取得した(もしくは相続財産を処分した)相続人の権利を保護する必要性があるからです。

すべて無効としてしまうと、真実の相続人に不測の損害を与えるかもしれません。

相続したと思った預貯金で不動産を購入していたら。

それがあとでひっくり返ったとなると、その影響は計り知れません。

ただし、無資格者が参加したことにより、その遺産分割協議の内容が大きく異なってしまったなどの特別な事情があれば、全部無効とした方がよい場合もあります。

その者がいなければ全く別の結果となっていることが想定されるのであれば、むしろすべてを無効とすることが相続人全員の通常の意思に合致します。

無資格者が参加しているため、再度、はじめから遺産分割協議をしたいと主張する相続人がいるのであれば、一部のみの無効で、とするのではなく、あらためて協議をやり直すべきでしょう。

なお、たとえば、不動産の相続登記においては当然、法務局のチェックがありますので、相続人ではないものが参加している協議書では登記ができないでしょう。

3.相続人ではない者が関与する場合も

前述のような相続人ではない者が遺産分割協議に参加することは無用の混乱を招き、場合によってはすべてが無効となってしまいます。

ただ、一定の資格を有する者は、本来の相続人に代わって遺産分割協議に参加し、法律上、有効に遺産分割協議書に署名押印する場合があります。

詳しくは<遺産分割協議に相続人以外が関与する場合>

4.まとめ

遺産分割において、相続人を確定させることが大前提となり、その相続人が遺産分割を行います。

一部の相続人を除外してされた遺産分割協議は絶対的に無効です。

では、相続人ではない者が参加した場合(典型例は相続人の配偶者かもしれません)はどうか。

相続人ではない者が参加した遺産分割協議、絶対的に無効となるわけではありません。

全体として無効としてしまうと、取引安全、法的安全を害してしまいます。

遺産分割協議の一部、無資格者が取得した部分だけを無効として、あらためてその部分についてだけ遺産分割をすれば済むからです。

もっとも、そうであったとしても遺産分割を維持、有効としておくことにムリがある、妥当とはいえないような事情があれば、すべてが無効となる可能性もあります。

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