換価分割の場合の遺産分割協議書の書き方で注意すべきポイント

換価分割の方法による遺産分割の場合は、遺産分割協議書の書き方には注意を要します。

それは、代表相続人が便宜上、単独で相続する場合です。

不動産の売却代金を分配する際に、その分配金が代表相続人から他の相続人への贈与と認定されないような書き方にすることです。詳しくは<共有?単有?換価分割では相続登記の名義はだれにしておくべきか>

ただ、代表相続人が単独で相続登記した場合には、贈与の点以外にも遺産分割協議書に書いておいた方がよい条項、事項があります。

以下では、遺産分割協議書を書く際の3つのポイントです。

1.ポイント①諸経費の範囲(何を諸経費とするか)

不動産の売却に際しては、様々な専門家、業者が関与しますので、それだけ費用がかかってきます。

不動産業者に支払う仲介手数料や、更地渡しであれば建物解体費用、司法書士への登記費用などがかかってきます。詳しくは<換価分割を行う場合はだれに相談、依頼すればよいか?

換価分割は、売却代金からそれらかかった費用を諸経費として差し引きます。そして、諸経費控除後の金額を実際に相続人で合意内容にしたがって分配していきます。

ここで、前述のような基本的な費用は当然、諸経費とすることに問題はないですが、費用の種類によっては経費に加えるかどうか相続人間で扱いに相違が出ることもあります

あらかじめ判断に困るもの、トラブルの元になるような費用については、換価する前に事前に必ず取り決めておくことです。

たとえば、よく見られるのが、前述の費用を並べていき、最後に「その他売却に要した一切の費用」とひとくくりにするのも一つの方法です。

しかし、この書き方では具体的に何が売却に要する費用なのか相続人間で認識の違いが出てくることも考えられます。

「その費用は売却に要した、売却に関連した費用である」との主張をすると、他方ではそれを否定する主張がされるかもしれません。

したがって、面倒でも考えられる費用の一切を明確に、具体的に列挙しておくことがトラブル防止の観点からは有用です。

2.ポイント②固定費などの負担、支払い

便宜上、代表相続人が単独で相続登記した場合、その者に(1月1日現在の不動産の所有者に)固定資産税の請求がきます。

また、売却までに時間がかかってしまう場合は、管理、維持費がその分余計にかかります。

空き家状態であれば、建物の清掃や、除草を業者に依頼した場合の費用など、不動産を維持管理するための費用がかかってきます。人間が住んでいなければ、不動産は劣化していくものなので、定期的に管理していかなければなりません。

また、諸経費の支払先によっては支払うタイミングが異なるものがあります。

たとえば、更地渡しであれば事前に建物を取り壊すことになるため、その建物解体費用がかかりますし、残置物処理費用や測量費用などは基本的に売却前に終えていることになりますので、売却前のタイミングでの支払いとなる場合もあります(もっとも、交渉次第では売却代金受領時に精算するといったこともあります)。

遺産分割協議から実際に売却するまでにかかってくるそれらの固定費、維持コストの負担者、支払いについて、たとえば以下のようにいくつかパターンがありますが、事前に取り決めておくことが有用です。

◆共同相続人が負担しあう

かかった経費を各相続人がその都度相続分の割合で負担しあう方法です。

ただ、煩雑な面があります。

◆代表相続人がいったん立て替えておく

代表相続人が支払いの度に立替えておき、後で精算する方法です。

この場合、代表相続人についてはその分、分配割合を増やしたり、かかってくるであろう管理費を想定し、その金額をあらかじめ預貯金などから先に相続してもらったりする方法があります。

◆相続した預貯金など他の遺産から支出するのか

遺産が不動産の他に預貯金もあるのであれば、不動産売却前に遺産整理をしておき、諸経費支払いのため、その金額をプールしておく方法もあります。

3.ポイント③売却金額や売却期限

代表相続人の単独名義とした場合(建前上は)その相続人が自由な意思、自分の判断でその不動産を売却できます。売却金額なども代表相続人が自由に決めることができてしまいます。

しかし、代表相続人が決めた金額に納得のいかない相続人が出てくることもあります。

相続人間で事前に売却自体については合意できたが、売却金額についてちゃんと合意ができていなければ、実際に売れた金額に対し、他の相続人が納得いかず、クレームが出てくるおそれがあります。

そのようなことにならないよう、遺産分割協議の際には「最低売却価格」を相続人全員で合意しておくことが重要になってきます。

また、あらかじめ最低売却金額を決めておけば、その金額までは購入希望者の値引き要求にも柔軟に応じることができるため、代表相続人としても交渉しやすくなります。

最低売却金額に加え、売却までの期限を区切っておき、その期限までに売却できなかった場合は、あらためて相続人間で売却金額など売却の条件にについて話し合うことも有用です。

不動産は売り出し価格どおりに売れないことも珍しくありません。その価格が強気であると尚更です。

特に、売却を急いでいなければ、強気の価格設定になりやすいのではないでしょうか。

ただ、売れなければ意味がないため、場合によっては一度リセットし、再度、現在の市況や取引相場に合わせた内容の分割を行うことも検討すべきでしょう。

4.まとめ

以上のとおり、代表相続人単独で相続登記した場合には、共同で相続登記した場合に比べ、トラブル防止の観点から、事前に決めておくべきことが多くあります。

換価分割の際には、売却代金の分配が贈与にあたらないような書き方以外にも、気を付ける点、注意すべき点があるため、遺産分割協議書の書き方には十分気を付けることです。

ただ、前述の3つのポイントは基本的な部分にあたり、あくまで一例にすぎません。

他にも相続人間の事情や環境に応じて様々な取り決め事項が出てくる場合もあります。

後で争続とならないよう、相続人全員で合意し、遺産分割協議書に漏れのないよう付け加えていく必要があるでしょう。

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