相続発生、共有名義の不動産は売却できる?

相談事例

親から相続により取得した私と兄の共有名義の土地建物があるのですが、そこに住んでいた兄が先月、亡くなりました。

私自身、別に持ち家があり、また、仕事や家庭の事情からこの土地建物に住むことはありません。

管理費や税負担のこともあるので、近々、この土地建物を売却したいと思っています。

そこで、知り合いの不動産屋に話を聞いてもらったところ、兄の持分について相続しておかないと売却は難しいと言われました。

兄の相続人は長女だけですが、兄が離婚してから20年以上、会っていなかったと聞いています。

やはり、売却にあたって、その相続人の協力が必要になるのでしょうか。

1.共有関係となるケース

複数人で不動産名義を共有しているケースは珍しくありません。

共有となるケースは以下のものがあります。

夫婦でお金を出し合って不動産を購入

夫婦でお金を出し合って(夫婦連帯債務やペアローンなど)不動産を購入した場合は、出資比率(場合によっては収入比率)から持分を計算して共有名義で登記します。

なお、出資(収入)比率に反した持分で登記してしまうと、贈与と認定され贈与税が課税されるおそれがあるため、要注意です。

相続の発生

相談事例のように、相続発生に伴い不動産名義が共有となることもあります。

遺産分割協議をしないで、とりあえず法定相続分で相続登記した場合や遺産分割協議の結果、複数人で共有することになった場合、共有関係とする遺言書が書かれていた場合などです。

これらは、相続に起因する形で共有関係が作られます。

2.共有関係はのちのち後悔するかも・・・

共有関係となる事情、ケースは様々ですが、少なくとも、相続の場面において特別な事情がない限り共有関係はあまりオススメしません。

遺言書に、相続人仲良く共有とすることが書かれている場合は仕方がありませんが(そのようなケースはまれです)、特別な事情もないのに、

「よくわからないからとりあえず共有で」

「遺産分割が面倒だから法定相続分で」

といったことはやめておくことです。

なぜなら、売却処分など、いざとなったときに影響が出てくるからです。

それは、まさに相談事例のように共有者が亡くなったら。

そして、その相続人の協力を得ることが難しいようなケース。

相続人が協力してくれるのであれば、持分の相続登記を経て、共有者全員の協力のもと所有権全体を売却することができ、これが一般的です。

しかし、たとえば、

・子がいなく、遺言書も残していないため、相続権が兄弟姉妹までいってしまい、合意形成ができない

・子はいるが、相続人が長期間交流のない前妻との子である、など相続人の協力を得ることが期待できない

・相続人の数が多く、中には認知症を患っている相続人がいる

こうなってくると売却したいときに売却できない、もっというと、売却自体ができない、といったことも起こりえます。

3.取っておくべき対策は?

相談事例のようなことが起こらないよう、共有者が亡くなる前から以下のような対策を講じておくべきでしょう。

生前に遺言書を残しておく

共有者としては、自分の相続人の協力が得られないであろうことが分かっているのであれば、将来の売却などのことを考え、他の共有者のためにも遺言を書いておくことをオススメします。

他の共有者に持分を遺贈する遺言を残しておけば、遺言者死亡により、その持分は他の共有者に移転し、売却をはじめとした処分行為を単独で自由にできます。

なお、注意点としては、遺留分です。

兄弟姉妹以外の相続人は、最低限の取り分である遺留分があるので、相続人に子や配偶者がいる場合は、遺留分に配慮した遺言書になっていなければ遺留分を請求される可能性があります。

なお、相続法改正により、遺留分についてはそのモノ自体を取り戻したり、返したり、といったことではなく、原則、お金で解決することになりました。

詳しくは<お金で解決?遺留分減殺請求との違いは?遺留分侵害額請求権>をご覧ください。

 

そのため、売却したあとも、遺留分の時効が消滅するまでは、請求されたときのためにある程度(遺留分侵害額に相当する額)のお金は残しておく、といった対策を考える必要があります。

他の共有者に持分を譲渡する

自分の持分を他の共有者に譲渡しておき、単独所有となった他の共有者と使用貸借関係のもと、引き続き家に居住する方法があります。

要は、持分を譲渡するにしても、従前どおり(無償で)住むことができる、ということです。

持分の譲渡方法としては基本的に、

・売買

・贈与

・持分放棄

が考えられます。

売買、贈与はイメージがつきやすいでしょう。いずれも当事者の契約によります。

持分放棄とは、契約によらず放棄者の単独行為、つまり一方的な意思表示で持分を放棄し、他の共有者にその持分が帰属することです。

他の共有者が複数人いれば、共有持分割合にしたがって、持分が帰属します。

ただし、売買の場合は(譲渡益が出ていれば)譲渡所得税の問題、贈与の場合は贈与税の問題があります。

持分放棄の場合も、税法上は贈与とみなされるため、贈与税の問題があります。

不動産取得税や登録免許税などの流通税も考慮しなければなりません。

4.まとめ

相談事例のようなケースは決して珍しいことではなく、相続の際に法定相続分で登記した結果、あとあと問題になるケースもあります。

通常、共有持分だけを買い取る人はいないため、事実上、売却ができなくなってしまいます。

そのため、生前からリスクを想定しておき、

・遺言を書いておく

・共有持分を他の共有者に移転しておく

など、何らかの対策を講じておくことが必要になります。

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