1.見守り契約
任意後見契約は、本人の判断能力が低下、衰えたときに任意後見受任者(任意後見人になる人)が家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立てをし、任意後見監督人が選任されたときに発効します。
本人の状況にもよりますが契約から発効まである程度、期間があきます。
本人がずっと元気であれば発効まで10年以上先、といったこともあるかもしれません。
そのため、本人の判断能力が衰えているかどうか本人の状況を定期的に把握する必要性があります
しかし、親族の場合と異なり、第三者である専門家が任意後見受任者となっている場合、判断能力の低下、衰えに気づかない可能性があります。
任意後見監督人選任の申立てをすべきかどうか判断できない、ということでは本人保護につながりません。
そこで、「見守り契約」があります。
見守り契約とは、専門家である任意後見受任者が、本人と見守り契約を結ぶことによって、本人のもとに定期的に訪問したり電話連絡を行うことで、文字どおり見守る、ということです。
定期的に接触することで本人の判断能力、健康状態を把握することができ、衰えているかどうかを適切に見極めることができます。
見守り方法は直接訪問や電話連絡が一般的ですが、その頻度、回数は本人の状況に応じて決めていきます。
この見守り契約ですが、任意後見のなかでも「将来型」の契約形態で、専門家を任意後見受任者とする場合に任意後見契約とセットでされることが多いです。
任意後見の契約形態について詳しくは<任意後見契約の3つの契約形態(移行型、即効型、将来型)>
2.契約は公正証書で?
この見守り契約、任意後見契約とセットでされることが多いので見守り契約書もあわせて公正証書で作成することもありますが、公正証書でなくても問題ありません。
お互いが契約内容に合意してそれを書面化しておけば何も公正証書である必要性はありません。
実務上は任意後見契約と同時にすることが多いので、見守り契約も公正証書で行うことが一般的です。
3.見守り契約だけをすることは?
見守り契約はなにも任意後見契約とセットでしなければならない、というわけではありません。
「まわりに頼れる親族がいない」
このようなときに見守り契約だけでもしておけば、もしもの時の備えにもなるため安心です。
4.見守り契約ではできないこと
見守り契約は文字どおり見守ることが契約の主な内容となります。
したがって、以下のように対応できないこともあります。
身の回りのお世話はしない
最も誤解されやすいところですが、見守り契約では身の回りのお世話をすることはできません。
「モノを買ってきてほしい」
「マッサージをしてほしい」
といったことは(契約の上では)できません。
本人の健康状況を把握するための契約なので、当然と言えば当然ですが、その辺りをハッキリしておかなければトラブルに発展する可能性もあります。
契約内容を明確にして、誤解を生まないよう納得のうえで契約を締結することです。
本人を代理できない
見守り契約によって本人の代理人となるわけではありません。
たとえば、口座からお金を引き出してきてほしい、施設と入所契約をしてほしい、といった場合でも見守り契約では対処できません。
それらを望むのであれば、元気なうちは本人からの委任状(場合によっては財産管理等委任契約を結ぶ)が必要になりますし、認知症などになったあとは法定後見を利用するしかありません。
財産管理等委任契約について詳しくは<認知症になる前に!財産管理等委任契約とは?>をご覧ください。
亡くなったあとの手続きはできない
見守り契約の終了事由として通常、「本人の死亡」が定められているので、本人が死亡した時点で見守契約はそこで終わります。
したがって、基本的に見守り契約だけでは死後の事務をしてもらうことはできません。
あくまで見守ることを目的とした契約だからです。
自分が亡くなったあとの手続きまで任せたいのであれば、元気なうちに別途、死後事務委任契約を結んでおく必要があります。
死後事務委任契約について詳しくは<死後の事務を任せたい場合は?死後事務委任契約>
5.まとめ
見守り契約は本人(特に一人暮らしをされている方)に任意後見をスタートさせてもよいかどうか、を見極めるためにも非常に効果的な契約です。
専門家が任意後見受任者となる場合で、将来型の契約形態を取る場合にセットでされることが多いですが、任意後見契約とのセットだけではなく、
・見守り契約だけ
・見守り契約+死後事務委任契約
・見守り契約+任意後見契約+死後事務委任契約
といったようにいくつかのパターンもありますので、状況に応じて何が最適か検討し、判断していけばよいでしょう。