夫婦間で不動産を贈与したときの贈与税は

1.夫婦間の贈与

夫婦の一方が自分の財産を長年連れ添った配偶者に贈与することはよくありますが、たとえ夫婦間での贈与であっても、110万円を超える贈与であれば贈与税がかかります。

たとえば、自分が死亡した後、長年連れ添った配偶者の生活保障のことを考え自宅を贈与する場面は多くあります。

ただ、不動産を贈与するとなると、通常、その評価額は110万円を超えてくるでしょう。

場合によっては数千万円になるかも知れません。

そうなってくると贈与税も相当な金額になるため、気軽に行えるものではありません。

しかし、夫婦間の贈与には特例があり、一定の要件を満たし、税務署に申告することによって大幅に税が軽減(もしくはかからない)されます。

これは「夫婦の間で居住用の不動産を贈与した場合の配偶者控除」といわれるものです。

実務上は、一般的に「おしどり贈与」や「夫婦間贈与」などと呼ばれています。

2.おしどり贈与の条件は

この特例を利用するためには、以下の要件を満たす必要があります。

◆婚姻期間が20年以上

法律上の配偶者である必要があるため、事実婚、内縁の配偶者は利用できません。

◆居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与があった場合

居住用不動産とは建物のみならず、その土地も当然含みます。

また、土地建物を一括して贈与せず、どちらかのみの贈与であっても、特例の対象となります。

◆贈与を受けた翌年の3月15日までに贈与を受けた居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に居住しており、今後も引き続き居住すること

いわゆる「居住要件」です。

したがって、贈与を受けてすぐ売却するとなった場合には適用を受けれません。

3.暦年贈与との併用可

この特例を利用すれば、2000万円まで贈与税がかかりません。

そして、この特例分と暦年贈与110万円の基礎控除とは併用ができます。

したがって、合計で2110万円までの贈与であれば贈与税が一切かかりません。

4.同じ配偶者からは1度しか利用できない

この特例は「同じ」配偶者からの贈与については一生に1度しか利用できないため、贈与するタイミングが重要になってきます。

別の配偶者からの贈与であれば、再度、特例を利用できます。

たとえば、Aが、夫のBから夫婦間贈与により特例を受けた後、Bと離婚しCと再婚したとします。

そして、再度、現在の夫のCからこの特例を利用して贈与を受けたいと考えた場合、別の配偶者からの贈与なので、再度、婚姻期間20年などの要件を満たしていれば利用可能になります。

5.申告に必要な書類

この特例を利用するには税務署に申告をする必要があります。

申告書とともに、以下の書類を添付します。

①財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍謄(抄)本

②財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の附票

③居住用不動産を取得したことを証する登記簿謄本

④居住用不動産の固定資産税評価証明書

6.贈与税のほかに税金はかかる?

夫婦間贈与の特例により、贈与税がかからなくても、ほかに必ずかかってくる税金が2つあります。

①不動産取得税

贈与や売買により不動産を取得すると、不動産取得税がかかります。

それは取得する相手が配偶者であっても同様です。

ただ、不動産取得税には軽減規定があるため、大幅に取得税を軽減(もしくはかからない)できます。

千葉県の場合は、(千葉県ホームページ)にて詳細を確認できます。

②登録免許税

贈与登記の際に必要になる税金です。固定資産税評価証明書に書かれている評価額の2%がかかります。

贈与登記の登録免許税を軽減する特例などはありませんので、必ず2%がかかってきます。

たとえば、不動産評価額が3000万円なら、60万円の登録免許税が必ずかかります。

7.相続の場合は

一方で、相続であれば不動産取得税はかかりませんし、相続登記の登録免許税も0.4%で、贈与登記に比べ5分の1です。

また、配偶者が相続する場合には次のとおり、相続税の特例が用意されています。

◆配偶者には税額の軽減によって、相続税が1億6000万円または法定相続分のどちらか高い金額までかからない

配偶者は最低でも1億6000万円までは相続税がかかりません。

◆配偶者は小規模宅地等の特例を「無条件」に適用を受けることができる

配偶者が居住用宅地を取得する場合、無条件で330㎡までを限度として、その土地の評価額が80%減額されます。

8.贈与しないで相続を待つべき?

以上の点をみると、「生前に贈与する必要はないのではないか」「贈与しないで相続を待つか」と思われるかもしれませんが、贈与は夫婦だけで決めることができます。

しかし、相続は配偶者以外の相続人も関与してきます。場合によっては、被相続人の兄弟姉妹が共同相続人になることもあります。

相続人間の話し合いによっては、居住用不動産を配偶者が相続できる確かな保証もありませんし、合意できなければ調停、審判となり、相当な時間を費やすことになります。

たとえば、遺産分割協議で長男名義にしたところ、予想外に先に長男が死亡してしまい、長男からその居住用不動産を相続した長男の嫁に退去を求められる可能性もあります。

これでは配偶者の生活保障を図ることはできません。

前述のとおり、配偶者に対する相続税の特例や不動産取得税、登録免許税などの面だけをみれば、贈与をしないで相続まで待った方がよいイメージがあります。

贈与ほど、税負担は感じないでしょう。

しかし、配偶者が居住用不動産を確実に相続できるといった保証がない以上、相続財産の圧縮にもつながる夫婦間贈与を選択した方がよいケースもあります。

これは、家族の関係性、相続人の人数や範囲、資産状況など様々な点を考慮して判断することになります。

9.まとめ

この特例をうまく利用すれば、相続財産を圧縮でき、将来の相続税の負担を減らすことができます。

実際に夫婦間贈与をするか、した方がよいのか、その判断に迷った際は専門家に相談することをオススメします。

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