節税のため孫を養子とする場合の注意点

節税対策として孫を養子とすることは一般的に広く行われていますが、安易に節税だけを考えて養子縁組すると、以下のように、考え違いや場合によっては想定外の事態に陥ることがあるため、注意を要します。

1.税務上の人数制限

孫を養子とすることによって、その孫は第1順位の相続人となります。

その結果、相続税の基礎控除(3000万円+法定相続人×600万円)の法定相続人数が増えるため、控除額が増加し、節税につながります。

同様に生命保険金や死亡退職金の非課税額(500万円×法定相続人)も増えます。

ただし、あからさまに、節税対策のみを目的とする養子縁組の場合は税務署に否認される可能性があります(税務調査時に担当官から養子の目的を質問されます)。

養子の人数を増やしていけば増やした分だけ法定相続人の数が増えるため、最終的に相続税をゼロにできるのではないかと思っても、それは認められません。

まず、民法上では養子の人数自体に制限はありません。5人でも10人でも当事者の合意のもと、自由に縁組することができます。

一方、税法上は基礎控除額の法定相続人にカウントできる養子の人数に制限があります。

◆実子がいる場合は、1人まで

◆実子がいない場合は、2人まで

を基礎控除の法定相続人の数にカウントできます。

生命保険金や死亡退職金の非課税の法定相続人の数も同様の制限があります。

つまり、それ以上養子の人数を増やしても、相続税を減らすことはできません。これは、過度な相続税逃れの防止のためです。

ただし、次の者は制限なく法定相続人の数にカウントできます。

◆連れ子を養子とする場合

◆特別養子縁組によって養子となった場合

これらの者は、実子と同視できます。

実子と同じ扱いを受けることになるため、税法上においてもカウント制限はされず、すべて法定相続人の数に含まれます。

養子縁組に関する最高裁判決

なお、平成29年1月、養子縁組に関する最高裁判決が出ました。

この判決はなにかというと、相続税対策のための養子縁組の有効性が問われた事案です。

判決は「節税目的の養子縁組であってもただちに無効ではない」と判示しました。

しかし、この判決は節税対策のための養子縁組を認めたわけではなく、節税目的の養子縁組であっても、民法上は有効としただけです。

あくまで民法上は問題ないとしただけで、決して節税目的の養子縁組を認めたわけではありませんのでご注意ください。

2.相続順位が変わったことにより、基礎控除額が減る

節税につながるはずの養子が、逆に相続税を増やしてしまうケースもあります。

ここでは孫養子の話しではなく、普通の養子(他人を養子にする)のケースを考えてみます。

たとえば、被相続人には実子がおらず、相続人が兄弟姉妹や甥、姪であり、複数人いたとします。

そのような中、被相続人は相続税の基礎控除のことを考えて相続人を増やそうと考え、知り合いの子供と養子縁組をしました。

しかし、養子縁組をすることによって、ここで相続順位が第3順位の兄弟姉妹から第1順位の子に変わってしまいます。

その結果、兄弟姉妹らは相続することができず、相続人数は養子1人だけとなり、結果的に基礎控除額も減ってしまい、相続税額が増えてしまうということも起こります。

相続順位のことを考えず目先の相続人数にとらわれた結果、税金を多く支払うハメになることもあります。

また、養子縁組により兄弟姉妹らの相続権がなくなります。

それらの者の理解を得ずに無断で養子縁組をしてしまうと関係性が悪化するかもしれません。

後々のトラブルの元になる可能性もありますので、「税金のことだけを考えて養子縁組したために、将来想定外のことが起こる場合もある」ことを念頭に置いて、慎重に判断することです。

3.2割加算される

相続税には2割加算という制度があります。各相続人の税額に2割の税額を加算するものです。

①配偶者

②1親等内の血族

③第1順位の代襲相続人

これらの者が相続人の場合は2割加算されませんが、兄弟姉妹や、甥、姪が相続人の場合は2割加算されます。

ここで勘違いし易いのが、1代飛ばしで孫が養子になった場合にもその孫は2割加算の対象となります。

一方で③のように、代襲相続した孫については2割加算されません。混同しやすいので注意しましょう。

4.実子の相続分や遺留分が減る

孫と養子縁組をするということは、当然、相続人が増えるということなので、他の相続人の持分に影響します。

配偶者の相続分には影響ありませんが、子の間では相続分を均等割りするため、養子縁組によって、養子が相続人となると、実子の法定相続分が減少します。

たとえば、実子が2人いたとすると、その相続分は各2分の1ですが、孫を養子縁組したことによって養子が1人増えると、実子の相続分は各3分の1になってしまいます。

養子の相続分は実子と同じです。

また、法定相続分が減少すると、遺留分も減少します。

実子の遺留分は各4分の1ですが、養子縁組によって、各6分の1になってしまいます。

養子縁組するかどうかは当然、当事者の意思のみで行うことができ、他人の干渉、影響を受けるようなことではありません。

しかし、他の相続人、特に実子たちの理解なく進めてしまうと、争続となってしまう可能性があります。

将来のことを考え、少なくとも実子が納得するかたちで、ある程度の了承を得ておくことが重要でしょう。

5.将来の遺産分割

未成年の孫を養子にした後、その養子がまだ未成年の間に養親が死亡して相続が開始した場合、その未成年の養子には親権者がいない状態となってしまいます。

実親との親子関係自体は普通養子縁組によっても存続しますが(つまり、相続人にあたるなど)、親権は失うことになります。

そして、養親が死亡しても実親が失った親権は当然に回復するわけではありません。

では、親権者はだれなのかというと、「未成年者に対して親権を行う者がないとき」にあたり、未成年後見が開始します。

したがって、家庭裁判所に未成年後見人の選任申立てが必要になります。

選任された未成年後見人が未成年者の法定代理人として、他の相続人と遺産分割協議を進めることになります。

未成年後見人は、最低限、未成年者の相続分を確保する必要があるため(事案や事情によってはそうとは限らないケースもありますが)、他の実子にとって想定外の結果となってしまう場合もあります。

6.まとめ

以上のように、税金のことだけを考えて孫を養子縁組してしまうと、実は相続税が多くかかってしまうケースや、場合によっては争続になってしまうこともあります。

さらに、一般的には相続人が増えるとその分、遺産分割が合意に至る可能性が低くなっていきます。

人数が多ければ多いほど話し合いはまとまらないものです。

未成年後見の問題もあります。

したがって、安易に、税金のことだけを考えて孫を養子とすると想定外の、思わぬ事態を招くこともありますので、先々のことを考えて慎重に検討することが重要になってきます。

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