1.相続登記の申請を怠ると過料?
令和6年4月1日から相続登記の申請義務化がスタートしました。
相続で不動産を取得したことを知った日から3年内、もしくは遺産分割により不動産を取得した日から3年内に、正当な理由がないのに相続登記の申請を怠った場合、10万円以下の過料に処せられることになります。
相続人ごとが対象とされるので、相続人が複数人いればそれぞれに過料が処せられます。
この過料とは、行政上の処罰にあたります。
過料になると前科がつくのか?と聞かれることがありますが刑事罰とは異なりあくまで行政罰なので前科はつきません。
似た言葉で科料があります。この科料は刑事罰になります。
どちらも読み方が同じで、お金を支払わなければならない点では共通しますが、行政罰か刑事罰かの違いがあります(過料は「あやまちりょう」、科料は「とがりょう」とも言われます)。
なお、罰金も刑事罰にあたるので科料と同じく前科がつきます。
罰金は金額が1万円以上、科料は金額が1000円以上1万円未満の場合をいいます(したがって、現実的には科料ではなく罰金となることが多い)。
2.登記申請しないことに正当な理由があるときとは?
相続登記を期限内に申請しなかったことにつき、正当な理由があり、それを登記官が認めた場合は申請義務違反とはなりません。
一方、期限を徒過しており、それが正当な理由もないとなると登記官から裁判所に過料の通知がされます。
通知がされると、裁判所の方で申請義務違反者に過料を科すかどうかや、科す場合はその金額を決めます。
では、正当な理由がある場合とはどのようなケースかというと、以下の5つが示されています(以下に該当しない場合でも個別事案ごとに正当性が認められることもあり得ます)。
相続人が極めて多数
相続登記申請にかかる相続について、その相続人が極めて多数にのぼり、戸籍関係書類を集めるのに多くの時間を要する場合、一定期間内に相続登記の申請ができないことについて正当な理由が認められます。
相続人間で争いがある
相続登記申請にかかる相続について、遺言の有効性、遺産の範囲などで相続人間で争いが起こっているため相続する不動産の帰属先が明らかになっていない場合です。
このような場合は不動産を相続すべき相続人が明らかになっていないので相続登記を申請できません。
重病などの事情
相続登記申請の義務を負う者自身が、重病その他これに準ずる事情がある場合には、現実的に申請することができませんので正当な理由に該当します。
DV被害者
相続登記申請の義務を負う者が、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(いわゆるDV防止法)に規定する被害者その他これに準ずる者であり、生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合です。
経済的に困窮
相続登記申請の義務を負う者が経済的に困窮しているため、登記申請に必要な費用を負担できない場合です。
たとえば、生活保護受給者が対象となります。
3.登記官からの催告
期限内に相続登記をしておらず、かつ、相続人申告登記もしていないからといって直ちに過料に処せられるわけではありません。
相続人申告登記について詳しくは<相続登記とは違う?相続人申告登記>をご覧ください。
まず、登記官は、過料に処せられるべき者があることを職務上知ったときは違反した者に相続登記を申請すべき旨を催告します(逆に言えば職務上知ったときにあたらなければ催告はされないということです)。
催告されたとしても、催告書に記載された期限内に登記をすれば問題ありません。
また、上述の正当な理由を登記官が認めるのであれば裁判所へ過料の通知がされることはありません(催告書に正当な理由があることを記載)。
では、その「職務上知ったとき」とはどういう場合か。
登記官が不動産を取得した日がいつかを把握することは困難であるため、以下の2点を端緒として催告することになります。
遺言書から判明したとき
相続人が遺言書を添付して所有権移転登記を申請した場合に、その遺言書に他の不動産の所有権についてもその相続人に相続・遺贈させる旨が記載されている場合です。
他にも不動産があるのにそれについては申請されていない。遺言書から判明するケースです。
このような場合に過料に処せられるべき者があることを職務上知った、となりますので申請の催告を行います。
遺産分割協議書から判明したとき
相続人が遺産分割協議を添付して所有権移転登記申請をした場合に、その遺産分割協議書に他の不動産の所有権についてもその相続人が取得する旨が記載されている場合です。
他にも不動産があるのにそれについては申請されていない。遺産分割協議書から判明するケースです。
遺言書と同じく、このような場合に過料に処せられるべき者があることを職務上知った、となりますので申請の催告を行います。
4.まとめ
相続登記の申請義務化に伴い、実効性担保のため過料規定、一種のペナルティが設けられました。
過料に至るまでの流れとしては、以下のとおりです。
①相続登記の申請期限の徒過
②過料に処せられるべき者を職務上知った登記官からの申請の催告
③(正当な理由がなければ)登記官から裁判所への過料の通知
④(裁判所で過料の裁判を経て)裁判所から過料の決定
過料に処せられないためにも、できる時に相続登記を申請することをおススメしますが、
「やり方がわからない」
「面倒なので丸投げしたい」
「だれが相続すればよいのか教えて欲しい」
といった場合はお気軽にお問い合わせください。