お金を信託する場合、いくらにすればよい?

1.お金も信託すべき?

自分が認知症となった場合を考え、自宅、アパートを信頼できる子供などに信託し、もしもの時に備える。まさに認知症対策として近年、家族信託を利用する方が増えている印象です。

そして、家族信託を利用する方は、不動産を信託財産とすることが一般的です。

その際に「お金も信託した方がよいのでしょうか」といったご質問を受けることがありますが、答えは、必ずお金も信託すべきです。

 

もちろん、お金だけを信託する場合もあります。詳しくは<家族信託、金銭だけは可能?>をご覧ください。

2.お金を信託する理由

不動産だけを信託すべき財産と当事者が考えていたとしても、一定程度のお金も必ず信託すべきです。

以下は、アパートなどの収益物件を信託した場合と自宅を信託した場合に、いっしょにお金も信託した方がよい理由です。

収益物件を信託した場合

アパートやマンションなどの収益物件を信託した場合。

信託によって受託者は貸主の立場となり、それに伴って敷金返還債務を承継します。

借主が差し出している敷金です。

貸主である受託者は、賃貸契約が終了すれば、余った敷金を借主に返還しなければならないので、借主の差し出している敷金相当額を信託金銭とする必要があります(借主の人数やその物件の家賃にもよりますが、敷金のトータルは結構な金額となります)。

また、不動産管理会社にアパートの管理を頼んでいる場合、管理会社の費用・報酬も必要となり、そのお金も当然、信託財産から支出します。

そのため、お金もあわせて信託する必要があるのです。

自宅を信託した場合

では、収益を生まない自宅を信託した場合はどうか。

敷金もなく、不動産管理会社の費用もかからないので金銭を信託する必要がないのではないか。

そう思うかもしれませんが、そのようなことはありません。

自宅であっても、固定資産税がかかります。

また、修繕、リフォームが必要となることがあるかもしれません。管理していくにもお金がかかるのです。

それらのお金を受託者のポケットマネーから出すのではなく、信託財産から支出することになります。

したがって、「自宅だからお金を信託しない、しなくてもよい」といった選択肢は(普通は)ありません。

また、お金はなにも不動産関連だけに必要となるわけではありません。

受益者の医療費や生活費だったり、施設に入っていれば施設費もかかります。

それら、もろもろの費用としてある程度のお金を信託しておけば、もしもの時に機動的に行動、柔軟な対応ができますので、自宅だからお金を信託しなくてもよいだろう、といったことありません。

3.信託金銭の額はいくらが妥当?

では、一体いくら信託すればよいのかですが、信託契約の趣旨、目的、信託している財産、受益者の生活状況、受益者数など、様々な要因のもとで判断されるので、一概にコレといった額は言えません。

目安として、自宅の場合であれば、たとえば10年分の固定資産税に相当する金額(10年も先の税額を特定することはできませんので、だいたいの額でよいと思います)や、修繕やリフォームの予定があるのであれば、業者の出した見積金額より少し多めの金額を信託金銭とすることをオススメします。

4.余裕をもっておかないと

上述のとおり、信託するお金の額は余裕を持った額にすべきです。

足りなくなったらその都度、追加すればよいのではないか、と思うところですがそう簡単なものではありません。

たしかに、信託財産は必要に応じて追加することができます。追加信託できる旨を契約条項に定めておけば可能です。

しかし、信託契約からしばらくして委託者が認知症となってしまった場合は大変です。

その時に委託者が追加信託をする意思表示ができない、判断能力を欠いている、といった状態であれば、お金を追加で信託したくても不可能です。

受託者が勝手に委託者の口座から引き出して、信託口座に移すことはできませんし、受託者が勝手に自由に移せるとの契約内容だとしても、それは問題ありでしょう。

いずれにしても、機動的に動けるため信託を利用したのに、信託金銭が足りなくなってしまい、適切な信託事務ができなくなってしまう可能性があるのです。

そのような不測の事態とならないためにも、やはり、余裕をもった金額を設定し、信託することが重要でしょう。

5.まとめ

不動産を信託財産とするのであれば、そのものを信託すればよいですが、金銭に関しては「いくら信託すればよいのか分からない」と悩まれる方がいます。

そもそも、お金を信託した方がよいのかといった疑問も。

上述のとおり、お金は信託すべきです。

その金額についてはケースバイケースで判断する必要がありますが、将来的に追加信託できない事態も想定し、余裕をもった金額を信託すべきでしょう。

 

なお、信託したお金を管理する口座について、詳しくは<信託口口座とは?受託者の分別管理義務>をご覧ください。

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