葬儀方法については遺言書に書ける?負担付遺贈の活用法

相談事例

終活の一環で今のうちから遺言書を残そうかと考えています。

財産をだれに取得させるのか、とあわせて葬儀の方法なども書いておきたいと考えているのですが、問題はありませんか。

1.葬儀方法の定めは意味があるか?

遺言に書いたものがすべて法的に有効か、というと実はそうではなく民法に規定された一定事項に限り法的効果を持ちます。

これを「法定遺言事項」といいますが、葬儀の方法などは法定遺言事項ではないので、遺言書に書いたからといってそれはあくまで遺言者の希望にとどまり、法的な効果はありません。

 

法定遺言事項について詳しくは<遺言書には何が書ける?作成方法やメリット、デメリット>をご覧ください。

 

したがって、仮に遺言書に書かれた葬儀の方法とは異なる方法で葬儀がされたとしても、さらには葬儀をしなくても、法的に何かしらの効果が発生したり責任や義務を負うものではありません。

2.負担付き遺贈

葬儀方法は法定遺言事項とはされていないのであきらめるしかないのか、というところですが、1つ方法があります。

負担付き遺贈とすれば遺言者の希望を叶えることができるかもしれません。

民法では遺言を負担付きとすることが認められています。

たとえば、遺言書に、

・私が亡くなるまで私のことを介護するのであれば、私の所有するすべての不動産をあげる

・遺産のすべてをあげるが、孫の〇〇が成人するまで毎月金〇万円を支払うこと

といったように、無条件で財産をあげるのではなく、受遺者に何かしらの負担を負わせることを書いておくことができます。

これを「負担付き遺贈」といい、希望する葬儀の方法を実現させたいのであれば以下のような内容の負担付き遺贈を残しておくとよいかもしれません。

・私の長男に財産すべてをあげるが、その負担として私の葬儀を以下のようにして執り行わなければならない。

葬儀の場所

葬儀の内容

宗教、戒名

納骨方法、場所、、、

葬儀の方法を負担とする遺贈により、法定遺言事項ではない葬儀の方法が事実上、法的に意味を持つことになります。

3.負担を履行しない場合は

負担付き遺言を書いたとしても、その負担が守られなければ意味はないのではないか。

当然、負担がちゃんと履行されなければ遺言者の最終意思は叶いません。

そこで、民法は受遺者が負担を履行しない場合、

相続人は相当の期間を定めて履行の催告でき、その期間内でも負担が履行されない場合は、家庭裁判所に負担付き遺贈の取消しを請求ができる

と定めており、取消しの審判がされるとその負担付き遺贈はなかったことになります。

遺贈がなかったことになると、受遺者が受けるはずであった財産は相続人が相続することになります。

受遺者としても財産が欲しいのであれば負担を履行するしかありません。財産だけもらって負担は履行しない、といったうまい話はありません。

4.負担を履行したくないとき

「財産もいらないし、負担も負いたくない」

「負担が重すぎる」

といったことであれば、受遺者は遺贈の放棄をすれば問題ありません。

ただ、遺言者の想いとしては当然、遺贈を放棄されたくはないでしょうから、受遺者が対応できるレベルの負担にしておくことが重要です。

なお、受遺者が負担付き遺贈を放棄した場合、受益者(たとえば、負担が妻の介護を見る、という内容だとその負担付き遺贈の受益者は妻)が受遺者になることができます。

5.注意点として

遺言で葬儀方法を負担としている場合は、遺言書が発見される前に別の方法で葬儀が行われてしまう可能性もあるので、遺言書の存在はある程度周知しておく必要があるでしょう。

自身が亡くなった場合は速やかに遺言執行者に連絡してほしい旨をあらかじめ家族に伝えておくことも1つです。

6.まとめ

負担付き遺贈をうまく活用すれば、法定遺言事項ではないものであっても、法的効果を持たせることが可能となり、より遺言者の希望を叶えることが期待できます。

ただ、負担付き遺贈はあまり一般的ではないので、詳細は専門家に相談することをオススメします。

関連記事