遺産分割までに相続財産が処分されたら?

遺産分割協議を行うときに、対象となる財産は、相続時に存在していた財産なのか、それとも遺産分割協議時に存在する財産なのか、といった問題があります。

どの時期を基準とするかによって、対象となる財産が大きく変わってくる場合もあるからです。

1.遺産分割の対象となる財産はいつのものか

被相続人の財産のうち、遺産分割の対象となる財産は、あくまで遺産分割の時に存在している財産です。相続開始の時に存在していた財産ではありません。

2.相続開始「後」、遺産分割までに財産の処分がされた

遺産分割の対象となる財産は、あくまで遺産分割の時に存在している財産ですが、相続開始の後、遺産分割までの間に遺産が処分(※)された場合はどうなるでしょうか。

(※処分とは主に、相続預貯金の払い戻しや相続財産を第三者に売却すること、現実にその物を破壊することなどです)

遺産分割には法律上期限がありませんので、相続開始(被相続人の死亡時)から遺産分割までの間には通常、一定のタイムラグが生じます。

場合によっては数年後ということもあります。

そのタイムラグの間に、たとえば相続人の1人がキャッシュカードを生前、被相続人から預かっていたのをいいことに、勝手に遺産である預金を引き出したとすると、相続開始時に比べ遺産分割時には財産が減少しています。

それでも遺産分割の対象財産は遺産分割時を基準としますので、他の相続人との関係で著しく不公平な事態(遺産の二重取り)が生じるおそれがあります。

このような場合、他の相続人は別途、不法行為による損害賠償請求や不当利得返還請求などの民事訴訟を起こさなければなりませんが、それでは遺産分割の早期成立を図ることはできません。

3.処分された財産が遺産分割時に存在するとみなす

そこで、改正相続法906条の2は、相続人間の公平を図るため、相続開始後に処分された財産について、相続人全員の同意があれば(処分した者が相続人であれば、その者の同意は当然不要)処分された財産も遺産分割時に遺産として存在するとみなす規定がおかれました。

この取り扱いは実務上、以前(改正前)から行われていましたが、この度の改正で法律上規定されました。

つまり、処分された財産についても遺産分割時に存在するものとして扱い、対象に含めることにより、処分によって利益を得た相続人の二重取りを回避するというものです。

なお、遺産が全て処分された場合、本条は適用ありません。

全て処分されるとそもそも遺産分割をすることができないからです。その場合は、民事訴訟によって解決を図ることになります。

4.相続開始「前」の処分は?

被相続人の生前、つまり相続開始前に相続人(になる予定の者)がした処分については本条は適用されません。

他の相続人はその処分が真に被相続人のためにされたかどうかは判断できない場合もあるでしょう。

この場合は不正使用の問題が出てきますので別途、民事訴訟(不法行為による損害賠償請求、不当利得返還請求)によることになります。詳しくは<不正使用の疑いや遺産を隠している場合は?>

5.まとめ

本条は令和1年7月1日から施行されていますが、その施行日より前の相続には適用されません。

しかし、実務上、以前からこの制度と同じような運用はされていたため施行日より前に開始した相続であっても、相続人全員の同意を得れば処分された遺産を遺産分割時に存在するものとみなすことができます。

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