遺産の評価はいつを基準とする?

相談事例

この度、父の相続人全員で遺産分割協議を行うのですが、相続開始から相当期間経過しており、遺産の評価、価値が相続開始時と遺産分割を行う現在とで、だいぶ変わってきています。

そこで、遺産分割を行うにあたり、この遺産の評価はいつの時点を基準とすればよいですか。

1.遺産の価値は変動する

相続が開始し、相続人が相続財産を調査することになります。

調査し、具体的な遺産が確定したら、実際にそれらを遺産分割することになります。

ただ、普通は遺産の価額は上下するものであり、不動産や株式などは価値、価額の変動が必ず生じます。

特に株式であれば、株価は日々刻々と変動するものです。

相続が開始して直ちに遺産分割を行うことはあまりなく、当然タイムラグが生じます。

そこで、いざ遺産分割をすることとなった場合、遺産について、いつの時点の価値、価額を基準として遺産分割をすればよいのでしょうか。

2.基準時を定める必要がある?

そもそも遺産の価値、評価の基準時を定めることが必要なのかどうかですが、たとえば、代償分割などは、前提として遺産の価値をいつの時点とするかを確定しておかなければ、代償金の算定自体ができません。

また、相続開始から長期間経過して遺産分割が行われることもよくあります。

実際に遺産分割を行うまでに景気が悪くなり、上場株式が暴落してしまい、相続開始時には価値が100であったのに、遺産分割時には60となっていることもあります。

3.遺産の評価の基準時は

遺産の評価の基準時を定める必要性があるのは前述のとおりですが、その遺産の価値、価額をいつの時点にするかの考え方としては基本的に以下の3つがあります。

①遺産分割時の価値を基準とする

②相続開始時の価値を基準とする

③相続人間の合意により、任意に基準時を決める

そして、実際に遺産の評価の基準時点をいつにするかの決定に際し、2段階に分けて考える必要があります。

第1段階・具体的相続分の確定の時に

第1段階の基準としては、特別受益や寄与分により、修正した法定相続分を確定させる場合です。

この場合には、遺産の評価は相続開始時を基準とします。

相続開始時点で遺産を評価し、特別受益を受けていれば(寄与分があれば)、その者の具体的な相続分を修正していきます。

第2段階・遺産分割の時に

第2段階の基準としては、実際に遺産分割を行う場合です。

その際には遺産分割時を基準とします。

相続人の合意があればいつでもよい

ただ、いずれも相続人の合意の上であれば、自由に任意の時点を設定できます。

この遺産の価値の基準時の問題は、相続人間で不公平が起きないためのものなので、あえて相続人全員が合意しているのであれば、基準時点を自由に決めることまでは否定されません。

したがって、相続開始時の評価をもとにして遺産分割を行うことも可能です。

4.遺産分割の対象財産はいつの時点を基準とする?

前述のとおり、遺産分割を行う際の遺産の価値の基準時点は遺産分割時ですが、遺産分割の対象となる財産の範囲がいつの時点となるのかも重要です。

つまり、相続開始時から遺産分割までの間に財産が処分されたりしていれば、基準時をどこに取るかによって、対象の財産が変わってきます。

この場合、遺産分割の対象となる相続財産は、遺産分割時を基準とします。詳しくは<遺産分割までに相続財産が処分されたら?>

5.まとめ

遺産分割において、遺産の価値の基準時点を見てきました。

基準時点を特定する場面は2段階あり、その上で、相続人全員の合意があればその基準時点は任意に決めることができます。

この遺産の価値の基準時の問題ですが、協議で遺産分割を行うのであれば、それほど問題になることはありません。特に遺産を売却して、売却代金を分ける換価分割では問題になることは少ないでしょう。

売却代金を法定相続分(もしくは相続人間で任意に合意した割合)で分ければよいだけだからです(もっとも、最低売却価格を決めるのであれば、重要になる場合もあります)。

一方、特定の相続人が遺産を取得する代わりに、他の相続人に代償として金銭などを支払う代償分割では、基礎となる遺産の価値を確定させなければ代償金を決めることができません。

現物分割においても、相続人が取得する財産それぞれの価値を公平、平等にするためには、その評価をいつの時点にするかで重要になってくる場合もあります。現物分割について詳しくは<現物分割のメリット、デメリット>

また、遺産分割調停になった場合に、遺産分割を上手くまとめるためには、最初に基準時点を決めることが重要になってきます。

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