相続した土地(負動産)は放棄できるか

1.相続したくない土地とは

相続はすべての財産が相続人に承継されます。ある特定の財産だけ相続したくはないといったことは通用しません。

そこで問題となってくるのが、使われていない土地や難ありの土地を相続した場合です。

「がけ地にある土地」

「建築基準法など、法的な問題で建物再建築が難しい土地」

「地方にある土地(農地など)」

「荒れ果てた土地」

「空き家、古屋が建っている土地」

理由は様々ですが、土地を相続したくない、いらないといった声は多くあります。

このような土地は一般的に敬遠されるため売ることもできず、特に別居、独立している相続人は相続したくないと思うのが自然です。

2.負動産となった場合のデメリットは

このように、不動産が「負動産」となってしまうと次のようなデメリットが起きてきます。

◆固定資産税がかかってくる

不動産はたとえ「負動産」であっても使わずに持っているだけで固定資産税が課せられます。

◆管理責任や義務は負う

所有者の責任や義務は当然負います。

除草しなければ草が伸び放題になり、近隣住民から苦情を受けることもありますし、景観も損ないます。犯罪の温床になるかも知れません。

また、がけが崩れて人にケガをさせた、物が壊れたなど、なにかあった場合に損害賠償を負う可能性もあります。

◆売却や贈与は難しい

そのまま放置することは得策ではありませんし、避けるべきです。

ただ、現実問題として売ることができればよいのですが、難あり土地はそう簡単に買い手がつかないでしょう。

タダで第三者に譲渡する(贈与する)としても、それらの土地を受けることによって税負担や管理責任を今後負うことになるため、やはり簡単にはいきません。

3.土地の所有権の放棄はできるか?

そこで、土地の所有権を放棄できるかどうかの問題が出てきます。

いらない土地を放棄できれば言うことはありません。

まず、相続放棄という制度がありますが、相続放棄はすべての権利、義務を放棄することなので、相続財産の一部のみを放棄することはできません。

いらない土地、不要な土地の所有権だけを放棄するといったことはできません。

また、相続放棄をしても一定の間は管理責任は負う場合があります。詳しくは<相続放棄をしても空き家は管理しなければならない?>

一方で、土地の所有権は放棄できると明示した規定はありません。

民法には、「所有権のない不動産は国に帰属する」といった規定はありますが、それと所有権を放棄できるかどうかは別の問題です。

したがって、現行法上は、土地の所有権を放棄することができないとされています。

「土地の所有権放棄を認めればよいではないか」と思われるかも知れませんが、実際はそれほど簡単な話しではありません。

たとえば、以下のような理由で土地の所有権を放棄することは認められていません。

◆国や自治体に所有権が帰属するとなると、国などに管理の義務、責任、負担が生じる。

◆放棄するような土地は負動産化していることが通常なので、価値がなく、管理コストを考えると、国の利益を害する結果になってしまう。

◆国の利益を害するということは、最終的に国民の利益を害する結果となる(管理のために、国民の税金が使われる)

◆土地の所有権の放棄を認めると、将来的に放棄することを考え、所有者が適正に管理しなくなるおそれがある(モラルハザードを招く)

◆悪質な課税逃れが起きる

4.改正構想

現在、一定の条件を満たした場合のみ、土地の所有権放棄を認めてもよいのではないかと議論されています。

その条件は次のようなものです。

①土地の権利の帰属に争いがない、筆界が特定されている

②土地について第三者の担保権などが設定されていない、所有者以外に土地を占有している者がいない

③現状のまま管理することが将来的にも容易

④土地所有者が管理費用を負担すること

⑤譲渡しようと相当な努力をしたが、やはり譲渡できないこと

改正構想では、以上の条件をすべて満たせば、土地の所有権を放棄することができるとしています。

以上から、土地の所有権放棄は最終手段であることが見て取れます。実際にこの条件をすべて満たすのはかなり難しいのではないかと思われます。

現実問題として不要な土地を国などが引き取ることは難しいと言わざるを得ないでしょう。

5.まとめ

「負動産」を隣地所有者や自治体へ寄付や贈与、売却する方法がありますが、現実的には困難でしょう。

相続放棄をしても「負動産」以外の財産もすべて放棄することになってしまいますし、管理責任がまったくなくなるわけでもありません。

現在議論されている土地所有権の放棄が実際に法律上規定され、放棄の条件を満たして放棄できるかどうかというところです。

太陽光発電(相当広大な土地が必要でしょうが)など土地活用の方法を考え、「負動産」としないよう、むしろ「富動産」にできるよう、有効に使っていくことも視野に入れておいたほうがよいでしょう。

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