遺留分の請求ができない?遺留分放棄と代襲相続

相談事例

私の父Bが死亡したあとに、祖父Aが死亡しました。

Aの子は父B(長男)と叔父X(次男)です。

この場合、私Cは代襲相続人としてAを相続できるということで、先日、Xと遺産分割について話し合いをしたのですが、Xからその場で「遺産の全部を私Xに相続させるAの自筆の遺言書がある」と告げられました。

それでは私の取り分がゼロとなってしまうため、私の遺留分を侵害していると思うのですが、その場合の手続きはどのようにすればよいでしょうか。

なお、聞いたところによると父Bは、Aの生前に家庭裁判所の許可を得て遺留分の放棄をしていたようです。

1.遺留分侵害額請求権の行使

遺留分を侵害されている相続人は、侵害している相手方に対して遺留分侵害額請求権を行使して、金銭で解決を図ることができます。

 

詳しくは<お金で解決?遺留分減殺請求との違いは?遺留分侵害額請求権>

 

それにはまずは当事者間の話し合いによります。

お互いが納得いく形で合意できればよいですが、任意での話し合いが不調に終われば家庭裁判所の場で調停手続きを行う必要があります。

しかし、調停も不成立となると、もはや話し合いでは解決できないとして、裁判手続きになります(遺留分侵害額が140万円以上であれば地方裁判所で)。

したがって、相談事例のCが取りうる方法として、まずは叔父Xに対して内容証明郵便で遺留分請求の意思表示をすればよいのかというと、実は別の問題があります。

2.被代襲者の遺留分の放棄により

Aの長男であるBはAの生前に、家庭裁判所の許可を得て遺留分を放棄しています(なお、遺留分を放棄しても相続人としての地位自体は失いません)。

その後、Aが死亡した場合、Bの子Cは代襲相続人として、Aを相続します。

ここで、Bが遺留分を放棄しているところが問題となります。

この場合、Cが遺留分を有している相続人となるかどうか、ですが、Cは遺留分のない相続人となります。

なぜなら、遺留分を放棄したBを代襲相続したCは、B以上の権利を取得することはできない、ということになるからです。

Bは生前に遺留分を放棄しているため、仮に亡くならずにAの相続人となったとしても遺留分を行使することができません。

代襲相続したCにおいても、Bが有していた以上の権利(遺留分行使権限のある相続人の地位)を有することはありません。

遺留分のない相続人となるのです。

 

遺留分の放棄について詳しくは<遺留分の放棄とは?相続放棄との違いは?>

3.まとめ

代襲相続人(C)は、被代襲相続人(B)の遺留分を放棄した立場も引き継ぐことになります。

遺留分のない相続人の地位です。

遺留分を放棄するもしないも遺留分権利者の自由ですが、遺留分の放棄は子にも影響を及ぼす場合もあるということです。

特に相談事例のように「実は遺言書がある」といったケースでは想定外の結果となってしまうこともあるため、遺留分を放棄する場合には慎重に検討する必要があります。

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