1.成年後見人選任申立てに必要な費用とは?
「成年後見人選任申立てにかかる費用は当然、本人負担ですよね」
成年後見人制度の説明をしている際、このようなご質問を受けることがあります。
本人のためにするのだから本人が全部負担するのだろう、と思われる方が多いのではないでしょうか。
まず、申立てにかかる主な費用としては以下のものがあります。
◆専門家の申立て報酬
申立てを司法書士などの専門家に頼んだ場合の報酬です(当事務所では税込み11万円です)。
◆予納収入印紙
成年後見人選任申立ての場合は、選任申立書に貼る印紙800円と後見登記に必要な印紙2600円の合計3400円です。
◆予納切手
申立てとともに一定額の連絡用切手を予納する必要があります。家庭裁判所により異なりますが、3000円から4000円ほどです。
◆後見登記されていないことの証明書や戸籍謄本、住民票その他証明書発行手数料
本人の後見登記されていないことの証明書や本人、申立人の戸籍謄本などが必要となりますので、それらの発行手数料です。
その他、本人が不動産を持っているのであれば登記事項証明書や評価証明書などが必要となりますので、それらの発行手数料がかかります。
◆医師の診断書作成料
申立ての際に必要な主治医などの診断書の作成料です。医師により異なりますが、一般的に数千円からかかっても1万円ほどです。
◆鑑定費用
鑑定とは、申立て時に提出する医師の診断書とは別に、家庭裁判所がより詳細な診断、精神鑑定が必要と判断した場合にされるものです(したがって、鑑定は必ずされるものではありません)。
鑑定費用は医師により異なりますが、一般的には5万円から10万円です。
2.だれが費用を負担?
では、これらの費用をだれが負担するのか。
「本人のために成年後見人を申立てるのだから、当然、すべてを本人が負担するのでは」と思われるかもしれませんが、上記のうち、
・専門家の申立て報酬
・後見登記されていないことの証明書や戸籍謄本、住民票その他証明書発行手数料
・医師の診断書作成料
については本人負担にはできず、申立人側で負担しなければなりません。
そのほかの予納印紙、切手、鑑定費用は本人負担とすることができます。
3.手続き費用の上申
前述の申立人側で負担しなければならない費用以外のものは、「手続き費用」として本人負担とできますが、かと言って当然に本人負担とはなりません。
別途、手続き費用を本人負担とする上申が必要となります。
方法は簡単です。
成年後見人等開始申立書に、「手続き費用は本人負担を希望する」と書かれた欄があるため、そこにチェックをして申立てればよいだけです(とりあえず申立ての際には申立人がすべての費用を立て替えておき、後日、選任された成年後見人に手続き費用を請求することになります)。
ただ、チェックしておかないと本人負担にできる費用についても申立人負担となってしまうため、それらを本人負担としたいと考えているのであれば、忘れないよう要注意です。
4.まとめ
成年後見人選任申立てには様々な費用が必要となります。
それらの費用は原則、申立人負担ですが、申立ての際に手続き費用は本人負担を希望する上申をしておけば、予納印紙や鑑定費用などは本人負担とすることができます。
いずれにしても、勝手に本人の口座から引き出して手続き費用に充てることは後日、選任された成年後見人から返還を請求される可能性があるため注意が必要です。