相続税が払えないときの3つの対応策

1.相続税が払えないときの3つの対応策

相続税の支払いは原則、金銭で一括納付です。

しかし、相続した財産の中心が不動産や有価証券、といった場合。

金銭があまりないケースも当然ながらあります。相続税対策として、現金預貯金を不動産に変えていることも珍しくはありません。

いざ相続が発生したとしても、遺産にお金がないため、相続税を支払えない、といった状況に陥るかもしれません。

しかし、それでも相続税を期日までに払わなければ延滞税、加算税がかかってきます。

相続税を金銭で一括納付できないときの対応策としては、主に次の3つの方法があります。

①延納・物納制度を利用する

「延納制度」とは、相続税を分割払いできる制度です。(国税庁ホームページ)

金銭で一括納付が原則ですが、一定の要件を満たすことによって分割払いが認められています。

延納期間中、利子税が発生しますが、相続財産が不動産など、金銭以外のものが多く占めていて、その財産を手放したくない場合に有効な方法です。

むしろ、遺産に金銭を多く残しておくことは税務対策上ではあまり効果的とはいえませんので、通常は、不動産など、金銭以外の財産の方が多いのではないでしょうか。

そのため、利子税が課せられるとはいえこの延納制度を利用すれば、分割での支払いが認められます。

 

「物納制度」とは、本来であれば金銭で相続税の納税をするところ、金銭以外の財産で納税する制度です。(国税庁ホームページ)

物納制度をいきなり利用することはできず、一括納付や延納による分割払いも困難な場合に利用でき、最終手段、としての位置づけです。

しかし、現在、物納制度はほとんど利用されていません。

実務上は物納により金銭以外の財産で納税するのではなく、後述の相続財産を第三者に売却してその代金から納付することになります。

②相続放棄、限定承認する

相続放棄をすることによって、相続税の納付義務も免れます(ただし、生命保険金などの「みなし相続財産」を受け取った場合は、相続税の問題が出てきます)。

相続放棄することにより、相続する財産もないためです。

しかし、他に多額の借金があるなどの事情がなければ、相続税が払えないことのみを理由とする相続放棄はオススメしません。

限定承認という方法もありますが、相続人が複数いる場合、全員が限定承認しなければならない、相続人のなかから財産管理人を選任する、など手続き自体が非常に煩雑です(実務上、あまり利用されていません)。

もっとも、限定承認を選択する場面においては、そもそも相続税がかかるケースはあまりないのではないかと思います。

限定承認について詳しくは<限定承認とは?そのメリットデメリット>

③相続財産を売却する

不動産や有価証券などを売却して、その売却代金を納税資金に充てる方法です。

実務上は、この方法が一般的に取られているのではないでしょうか。

ただし、売却をするにしても買い手が見つからなければはじまりません。

売却にあたっては前提として相続登記をしている必要もあります。

手間や時間がかかるため、相続税の申告・納付期限である10か月内に終えることができるかどうか、を意識する必要があります。

また、仲介手数料や測量代、登記料など諸経費もかかり、売却益が出れば譲渡所得税が課税される場合もあります。

2.まとめ

相続税対策として、たとえば現金・預貯金を賃貸アパートなどに変えていることは往々にしてあります。

そのため、「相続財産の中に金銭があまりなく、相続税を一括で払えない」といったケースは珍しいことではありません。

遺産だけではまかないきれず、自己の財産から払うハメになってしまい、場合によっては財産を差押えられることもあります。

生前から、生命保険などを活用して、納税資金への備えが求められるのではないでしょうか。

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