1.筆頭者が死亡すると、筆頭者は変わる?
相続手続きのためには戸籍謄本を集める必要がありますが、その際に「筆頭者」という言葉を聞いたことがあるかと思います。
戸籍謄本を見ると分かりますが、枠の一番上に「本籍地」と「氏名」が書かれています。
その一番上、先頭に書かれている人物が、その戸籍の筆頭者にあたります(明確に「筆頭者」とは記載されていません)。
では、この筆頭者について、
「筆頭者が死亡するとどうなる?」
「筆頭者が亡くなったけど、戸籍を請求するときだれの名を書けばよいか?」
といったご質問をよく受けるところですが、筆頭者が亡くなったとしても筆頭者は変更されず、その後も被相続人が筆頭者のままです。
たとえば、父親が筆頭者として記載されている戸籍があり、その父親が亡くなった場合、父親の次に書かれている母親に筆頭者が移るのか、というとそういうことはありません。
母親など別の者に変更されることなく、亡くなった父親がそのまま筆頭者として扱われます。
2.「筆頭者」はあくまで戸籍を特定するためだけのもの
被相続人がなぜ筆頭者のままなのか。
その理由は、筆頭者の記載自体が単に「その戸籍の先頭に記載されている者」としての位置づけに過ぎないからです。
戸籍を請求する際に、交付申請書には本籍地と筆頭者を記載しますが、役所は本籍地と筆頭者で戸籍を特定します。
本籍地についての詳しい説明はこちらをご覧ください。
たとえば、兄弟が婚姻により除籍された場合、お互いが元々いた親の本籍地を婚姻後の自分の本籍地として届出ることがよくあるように、同じ本籍地で複数人がかぶってしまうことはよくあります。
かぶってしまうこと自体、何も問題はありません。
しかし、同じ本籍地に何人もが戸籍を有していると、戸籍の交付請求を受けた場合に一体だれの戸籍を発行すればよいのか、役所は分かりません。
そこで、そのような場合に本籍地に加えて、筆頭者で検索をかけて発行すべき戸籍をヒットさせていくのです。
役所としては戸籍を特定さえできれば、筆頭者がだれであろうが特に不都合はありません。
このように、筆頭者というものは「見出し」「索引」に過ぎません。
そこまでの意味合いでしかないため、筆頭者が亡くなったとしてもわざわざ筆頭者を変更する実益がないのです。
「あえて手間や労力をかえてまで変更することに意味がない、必要性がない」ということです。
筆頭者はあくまで見出しに過ぎないのですから。
3.世帯主が死亡すると、世帯主は変わる?
一方、世帯主の場合は異なります。世帯主とはその世帯の長、代表です。
その世帯主が死亡すると、世帯主は変更します。
もっとも、自動的に変更されるわけではなく、死亡から14日以内に住所地の市区町村へ世帯主変更届が必要になります。
ただ、たとえば夫が世帯主の場合に、以下のケースでは変更届は不要です。
・世帯に妻しかいない
・世帯に妻と幼子しかいない
以上のような次の世帯主がだれになるかが明白な場合は届出は不要で、当然に妻が世帯主となります。
4.世帯主はだれでもよい
では、世帯主を変更する場合、だれを新たな世帯主として届出るか、ですが、法律上は特に決まりはありません。
極端な話、だれでもよいのです。
世帯主は「その世帯の代表者」「その世帯の長」という位置づけですが、年齢や性別、所得などとの関係性はないため、専業主婦の母親がなっても、その子がなっても問題ありません。
そうはいっても、実際のところはその世帯の中で所得が最も高く、家計を支えている者が世帯主になることが一般的です。
戸籍の筆頭者と世帯主についてこちらでも詳しくご説明していますのでよろしければご覧ください。
5.まとめ
筆頭者が死亡しても筆頭者は変更されません。そのまま被相続人が筆頭者として記載され続けます。
筆頭者の記載はあくまで戸籍の特定や、検索のための便宜上のものに過ぎないため、筆頭者が死亡したとしてもわざわざ事務量を増やし、面倒な手間をかけてまで変更する必要性がないからです。
一方、世帯主については世帯主の死亡により変更します。
筆頭者と世帯主、似ていますが制度的にまったくベツモノなのです。
世帯主が死亡した場合は原則、世帯主変更届を必要としますので、期限内に届けるよう忘れないことです。
死後に必要な手続き、届け先についてはこちらで詳しくご説明しています。よろしければご覧ください。