1.もしもの時のために家族信託
認知症対策の1つとして、家族信託を利用する場合があります。
家族信託について詳しくは<将来の認知症に備えるには?後見制度との違いは?家族信託の解説>
「将来、認知症になると自宅を売れない?」
「もしもの時、家族が困らないよう・・・」
「家族の負担を軽減したい・・・」
家族信託を利用することにより、抱えている不安やストレスを解消することができるかもしれません。
自分が元気なうちにできることは何かないか、となると、家族信託を選択するのも1つです(場合によっては任意後見制度併用も選択肢となるでしょう)。
2.不動産を持っていなくても家族信託できる?
その家族信託、不動産を持っていない場合は利用できないのか。
家族信託は登記が絡んでくることがあるため、
「不動産を持っていないと家族信託はできないのではないか」
といったご質問を受けることがありますが、不動産を持っていなくても家族信託を利用できます。
もちろん、お金だけを信託することも問題ないです。
将来の施設費用や生活費、医療費や介護費といったものは高額になるケースがあります。
認知症などでお金を引き出せないとなると(いわゆる資産凍結)、それらの費用は家族が負担することになるでしょう。
そのような事態に備えて、信頼できる人に金銭だけを信託しておくといったことも有用です。
この場合、通常は委託者(信託を頼む人)と受益者(信託により利益を受ける人)は同一人となります(これを自益信託といいます)。
3.信託金額を決める
まず、肝心の信託する金額を決めます。
家族と相談しながらでもいいので、将来何に、どれくらいかかりそうか、どれくらい信託金があれば大丈夫か、といったことを想定しながら決めます。
金額が決まったら、公証役場にて信託契約書を公正証書化します。
信託したお金を管理するための「信託口口座」を開設するにあたって、信託契約書は公正証書であることが銀行の条件となるからです(加えて、信託組成に専門家が関与していることが開設の条件となっている銀行も多いです)。
ただ、信託口口座開設に対応していない銀行も多いので、場合によっては「信託専用口座」で対応することもあります。
信託専用口座とは、受託者個人名義の口座を新たに開設し、そこで信託金を管理します。
管理するなら結局、信託口口座と同じではないか、と思うかもしれませんが、実は中身が異なります。
信託口口座について詳しくは<信託口口座とは?受託者の分別管理義務>
信託専用口座を開設する場合、信託契約書は公正証書である必要はありません(そもそも受託者個人名義で口座開設するため、信託契約書を銀行に提出することは不要)。
しかし、トラブル防止や本人確認・意思確認の観点から、基本的に信託契約書は公正証書で作成します。
4.信託契約で定めた金額を信託口座に振り込む
信託契約を締結した後は、信託金を新たに開設した管理口座に入れることになります。
委託者から受託者の口座に振り込むことになりますが、受託者が委託者の口座から引き出すことはできません。
委託者自らが、信託口座に振り込むことになります(口座履歴に記録しておくためにも振込みの方法によることをオススメします)。
信託契約で決まった金額を振り込むことになりますが、信託によるものなので、この資金移動が贈与と認定されることはありません。
以後、受託者は契約内容にしたがって信託金を管理していき、受益者(通常は信託を頼んだ委託者がなる)のために医療費や介護費などの支払いなどに信託金を使っていくことになります。
5.まとめ
注目の家族信託、お金だけを信託財産とすることもできますので、
「不動産がないから家族信託の利用をあきらめていた・・・」
といった方、それは誤解です。
ご自身の将来を見据え、家族の負担軽減のためにも家族信託の利用を検討してみてもよいかもしれません。
また、認知症対策では似たような制度として「任意後見制度」がありますので、どちらを利用した方がよいのか、自分や家族のニーズに合った方を選択することをオススメします。
任意後見契約について詳しくは<将来の不安に備える任意後見契約とは?手続きの流れやポイント>