信託財産から贈与していくことは可能か?

信託契約を設定する際や、契約締結をした後に、「信託財産(信託金銭)から贈与をしていくことはできますか」とのお問い合わせをいただくことがありますので、以下で解説いたします。

1.信託財産から贈与をすることはできる?

親が委託者兼受益者、その子が受託者とする家族信託において、たとえば受託者の子(委託者兼受益者からみると孫)に信託財産から一定額を贈与することはできるのか、といった問題があります。

結論から言って、やめておいたほうが無難でしょう。

なぜなら、信託は受益者のために、信託財産を管理、運用、場合によっては処分していく制度です。

また、受託者は忠実義務や善管注意義務など、様々な義務・責任を負っています。

そのため、受益者以外の者に信託財産を目減りさせるような行為(この場合は贈与)は信託の趣旨、目的に反し、くわえて受託者の負っている義務違反となる可能性があるからです。

また、場合によっては信託契約が受託者のための信託(受託者である子が自らの利益のために信託を設定した)、と認定されて信託契約自体が無効となってしまうおそれもあります。

2.受益者が同意している場合は?

家族信託は受益者のための制度ですが、では、その受益者自身が贈与を認めている場合はどうでしょうか。

孫にお金を渡したい、信託財産から贈与してもいい、と。

受益者が認めているから問題ないのではないか、と思うところですが、信託の目的との兼ね合いもあるところですし、無用の争いを生む可能性もあるのでやめておいたほうがよいでしょう。

どうしても、ということであれば、孫も受益者に入れて信託設計をすることも検討すべきです(ただし、この場合、信託した財産をベースにして贈与税の判断がされるので要注意です)。

3.信託財産から贈与したいのであれば

相続税対策で、信託財産から贈与をしたい(していきたい)、といったこともあるかもしれません。

この場合、面倒ではありますが、いったん受益者に対して、贈与する(したい)金額を渡して、受益者から孫に直接贈与を実行してもらう方法を取ることです。

ただ、受益者である親が認知症となってしまった場合は、もはや贈与行為自体ができなくなりますので、長期間の贈与計画(相続税対策)は望めないかもしれません。

また、贈与税がかからないよう110万円の暦年贈与としていたのに一括贈与と認定され、贈与税が課せられてしまう可能性もあるので、税理士など専門家の意見を仰ぐ必要があります。

4.まとめ

受託者は、信託財産を贈与のために使うことができるか。

信託契約でその旨を記載しておけば問題ないのではないか。

このような信託契約の設計自体は可能ではありますが(たとえ受益者が同意していても)、信託の趣旨、目的との関係もありますので当然に認められるものではなく、むしろ控えるべきでしょう。

家族信託はあくまで受益者のための制度であることを忘れないよう、信託事務にあたっていく必要があります。

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