認知症になる前に!財産管理等委任契約とは?

1.財産管理等委任契約とは?

自らの財産を適切に管理することができなくなる場合があります。

それは何も認知症に限りません。

たとえば、年齢からくる足腰の衰え。ケガによる行動制限。

体の自由がきかなくなってきます。

預貯金の出入金をしたいけど、気軽に銀行に行けない。

そのため、第三者に代わりに手続きをしてもらう、といった場面が出てきます。

しかし、その場合は普通、委任状や印鑑証明書などが必要となってきます。手続きのたびに本人確認も必要となるでしょう。

1度きり、ということであれば特に問題はないかもしれませんが、これが何度もとなるとその都度、委任状を書いて、印鑑証明書を揃えて、本人確認をして、となってくると面倒で大変です。

こういった場合は、財産管理等委任契約を結ぶことをオススメします。

財産管理等委任契約とは、判断能力がしっかりしているときに、親族や専門家などの第三者にサポートしてほしいことを決めておき、頼んだ人に自分の代わりに行ってもらう、という契約です。

判断能力がしっかりしているときから代理してもらう点で、すでに判断能力がしっかりしていない状態で代理してもらう任意後見や法定後見の場合とは異なります。

2.何を頼める?

では、その委任内容や代理してほしいことはなにか、というところですが、契約なので中身は当事者が自由に決めて構いませんが、一般的には財産管理が主なものになります。

財産管理とは、上述の銀行取引のほかに、債務や税金、保険の支払い、売買や賃貸などの契約行為も含まれます(場合によっては処分行為も)。

財産管理以外では、施設の入退所契約や病院の入退院手続き、介護サービス手続きなどの、いわゆる身上監護の代理も可能です(財産管理「等」委任契約は身上監護も含むことができるため、「等」がついています)。

まだ判断能力がしっかりしているから、代理してもらう範囲はなるべく狭くしておくのもいいですし、逆に、今のうちから広範な代理権を与えて様々なことをお願いしたい、といったように柔軟に設計することができます。

3.任意後見契約とワンセットで

この財産管理等委任契約は任意後見契約とセットでされることが多いです(単体でされることももちろんあります)。

任意後見契約の3つの契約パターンの中でも、いわゆる「移行型」といわれるものです。

 

移行型について詳しくは<任意後見契約の3つの契約形態(移行型、即効型、将来型)>

 

では、なぜセットでされることが多いか。

任意後見監督人が選任されることによって任意後見契約の効力が発生するので、実際に認知症になってから任意後見人が就任するまでに1か月以上かかることがあります。

その間の財産管理はだれもできない、空白期間が生じてしまう。

不都合なことが起きるかもしれません。

そこで、この財産管理等委任契約もいっしょに結んでおけば切れ目なく財産管理をすることが可能となり、本人の保護をより一層、図ることができます。

また、将来、任意後見人となってくれる人が後見人として相応しいかどうか、いまいちわからない。

しかし、自分が認知症になってしまうと相応しいかどうかの判断さえできなくなる、といった場合。

同様に、任意後見契約と財産管理等委任契約をセットで結んでおくことによって、後見事務の予行練習とすることもできます。

自分の目が届くうちなので、自分の後見人として適切な人物がどうか、自分の代理人として相応しいか、を慎重に判断することができます。

場合によっては見守り契約も同時に結ぶことがあり、3点セットといわれています。

 

見守り契約について詳しくは<見守り契約とは?>

4.契約書は公正証書で作成すべき

財産管理等委任契約は法律上は口頭でも成立しますが、必ず書面で、しかも公正証書で作成するべきです。

その理由として、以下のものが挙げられます。

当事者の意思の明確化

書面化、なかでも公正証書で作成して当事者の意思を明確化しておけば、あとで知らない、言っていない、といったトラブルを防止できます。

また、契約内容に曖昧な部分があれば、公証人が指摘してくれることも期待できます。

公証人が関与することによる証拠力の強化

契約にあたって公証人は厳格な本人確認、意思確認を行い、何も問題がなければ契約書を公正証書として起こします。

私文書と比べ、証拠力が増します。

親族などからの「本人は判断能力がないはず、その契約は無効である」といった契約の有効性に対するクレームを防止、回避できます。

手続き上の問題

実際の手続き、たとえば銀行取引を代理する場合、当然、銀行に契約書を見せるわけですが、銀行によっては公正証書でなければ対応してくれないことがあります。

私文書で契約書を作ったはいいが、手続きができませんでした、ではまったく意味がないため、はじめから公正証書で作成しておくのです。

5.財産管理等委任契約のデメリット

財産管理等委任契約にもデメリットがあります。

手間と費用がかかる

契約書は公正証書で作成することが望ましいですが、その場合は公証役場の費用がかかります(その費用は1万数千円程度なので、それほどハードルは高くありませんが)。

また、契約は公証役場にて行うため、公証役場まで出向く必要があります。

監督・監視機関がない

成年後見は家庭裁判所の、任意後見人は任意後見監督人のもとで職務の監督、監視を受けますが、この財産管理等委任契約においては家庭裁判所のような監督機関がないため、本人が受任者をチェックすることになります。

元気なうちはいいですが、判断能力が衰えてきた状態であれば、適切な監督が困難になる可能性が高いです。

対応策としては、契約であらかじめ第三者(専門家)を監督者として選んでおくことが考えられます。

相手によってはスムーズにいかないことも

公正証書で財産管理等委任契約書を作成していれば基本的には問題ありませんが、中には、この契約自体をあまり理解していないなどで、契約書を示してもスムーズに対応してくれないところもあるので、事前に取引相手に確認することが求められます。

取消権はない

あくまで私人間上の契約であるため、法律上、なにか特別な権限が付与されるわけではありません。

たとえば、取消権。

財産管理等委任契約の代理人には取消権はありません。

本人が悪徳商法にだまされて高額商品を買わされたとしても、代理人は本人のためにその行為を取消すことはできません(成年後見人には取消権が認められています)。

6.まとめ

まだ頭はしっかりしているけど、身体的にしんどくなってきた。

その様な方は、財産管理等委任契約が適しています。

身近なことでは銀行取引。場合によっては契約なども。

その内容は自由に、柔軟に決めることができます。

(任意後見契約とセットで)財産管理等委任契約を結んでおけば、将来の不安の芽を今のうちから摘んでおくことができるでしょう。

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