1.妻の姓を名乗ると婿養子?
婿養子(婿入り)といった言葉がありますが、その意味は妻の親と養子縁組をし、かつ、その養親の娘と婚姻することをいいます(養子縁組と婚姻の前後は不問)。
よく勘違いされていますが、単に婚姻により妻側の姓を選択したとしてもそれは婿養子とはいいません。
2.婿養子は相続人となる?
婿養子となると、養親が死亡した場合その婿養子は相続人となります。
この場合、法定相続分は実子と同じです。
したがって、婿養子縁組によって他の実子の法定相続分が減少することになります。
たとえば、相続人が子3名のAが娘の夫と婿養子縁組をすると実子3名、養子1名となり、縁組前の相続人の法定相続分は各3分の1のところ、縁組後は各4分の1となります。
なお、養親が多額の借金を負っていた場合。
婿養子は、遺産を相続することを望まなければ相続放棄といった選択肢も出てきますが、この際に、相続放棄をしないで死後離縁だけをすればよい、と判断するのは間違いです。
なぜなら、死後離縁をしたとしても相続権には一切影響しないからです。
したがって、養親の借金を相続したくなければ相続放棄をする必要があります。
詳しくは<相続権に影響は?死後離縁の勘違い>をご覧ください。
3.婿養子は実家を相続できる?
上述のとおり養親が死亡した場合、婿養子は相続人の一人となりますが、くわえて婿養子は実家の相続についても相続人となります。
婿養子となり、姓が変わったとしても実家の相続権は依然として有しているので、当然、遺産分割の当事者にもなります。
「婿養子にいったから相続人ではない」といって遺産分割の当事者から除外してしまうと、遺産分割そのものが無効となってしまうので要注意です。
4.離婚したら?
婿養子となったあと、離婚となった場合。
離婚により夫婦関係は解消しますが、養親と離縁をしなければ養親子関係は続き、したがって養親が死亡した場合、元夫は養子として元妻の実家の相続人となります。
元妻とはきょうだいの関係となり、元夫は遺産分割の当事者です。
元夫婦が当事者となる遺産分割。
トラブルに発展する可能性もあるので、離婚した場合は、養親との(生前)離縁にも留意しておく必要があります。
なお、死後離縁が養親の相続権に影響がないことは上述のとおりです。
5.まとめ
一般的に婿と呼ばれることがありますが、縁組をしない、単に姓を妻側にしただけでは婿養子とはなりません。
したがって、妻の実家を相続することはありません。
婿養子と婿、意味は同じと勘違いしているケースがあるので要注意です。